先の参院選で当選したNHK党のガーシーが、8月3日の臨時国会の招集にあたって提出した海外渡航届に対して、参院議院運営委員会理事会は「納得がいく理由がない」として、全会一致で許可しないことを決定したという報道がありました。

この「許可しない」というのは渡航を許可しないという意味だと思いますが、許可するも何もガーシーは選挙前から渡航していて日本にいないのです。しかも、渡航届の帰国日は「未定」になっていたそうです。まったく冗談みたいな話です。

ところが、議院運営委員会理事会の決定に対して、ガーシーは、インスタグラムに下記のような怒りの投稿を行ったのでした。

Instagram
ガーシーチャンネル(東谷義和)
https://www.instagram.com/p/Cgx0SHVPvkA

gaasyy_chアホらし
お前らに参議院議員にしてもらった訳でもないのに偉そーにすな
オレの議員としての存続を決めれるのは、票を入れてくれた支持者だけや
居眠りこいてるジジイやゴルフや飲み過ぎで議会欠席してるジジイ、パパ活不倫してる奴らに言われる筋合いはない
オレの存在が疎ましーのはわかるけどな、
人のことばっかり気にしてると足元すくわれんぞ
『明日は我が身』この言葉、よー噛み締めてオレに攻撃してこい

突けば吹き飛ぶよーなジジイ相手にケンカしたないねん
海外にいてもできることはよーけある。
海外やないとできひんこともよーけある。

日本にいても何もせん、人の粗さがしてる老害ども
ええ加減に身ひいて、次の時代の若者にバトン渡せや

もーお前らが作った時代は完成してん
次の新しい時代をまた築くのに、お前らはただただ邪魔な存在なんや

そのあたりよー理解して、最後の議員生活満喫せーや

リモートでも当選することを立証した、それが次の選挙にどー繋がるか?
お前らにもわかるような未来が訪れるわ

SNSをろくにつかえん奴は当選せーへん時代がもーそこまできとるわ

それはオレを議員辞めさせようが続けさせようが変わらん未来や

ジタバタせんとオレの攻撃を待っとけ、な?
政界に嵐を吹き込んだるから。

当選された皆様
初登院おめでとうございます!
いつかオレが初登院したあかつきには、クラッカー鳴らす用意しとってくださいw

古い時代を踏み台に、新しい時代に足跡つける
オレの好きなミュージシャンの言葉

それを実践したるから、支持してくれたみんな
期待して、歓喜に震え、待っとけよ!!

ほなの!


何だかチンピラの口上みたいですが、コメント欄には、「ほんとそのとおりですね。 許可なんてする必要あります? くだらない議員ばかりのために納税させられてる身にもなれ」「リアルに議会政治のあり方が変わりますよ」「じいちゃんたちは時代の変化についてこれないから、新しい風を怖がってるんだね」というようなコメントが寄せられていました。

冗談みたいな話なのに、みんな本気で怒っているのでした。しかも、老害を打破して新しい政治の夜明けがはじまるみたいなことを言いはじめているのでした。

言うまでもなく、ガーシーのYouTubeは私怨からはじまったのです。いわゆる”BTS詐欺”をネットに暴露され窮地に追い込まれたガーシーに対して、今まで女性をアテンドしたりと親しくつきあってきた芸能人たちがみんなソッポを向いたことに怒り、「死なばもろとも」と彼らのスキャンダルをYouTubeで暴露しはじめたことが発端だったのです。

ところが、「死なばもろとも」どころか国会議員になったため、上の投稿のように、私怨が付け焼刃の”公共性”を纏うようになったのでした。裏カジノで「つまんだ」借金を返済するため、文字通り窮鼠猫を噛むではじめたことが、いつの間にか新しい政治の夜明けの話になったのです。多くの人たちが、呆気に取られたのは当然でしょう。

議院運営委員会の不許可は、除名への布石だという見方もありますが、仮に除名されて国会議員の地位を剥奪されると、取り沙汰されているような詐欺や名誉棄損、業務妨害などの容疑で、警察が表立って動き出す可能性はあるかもしれません。でも、私は、除名までは行かないように思います。というか、そこまで行くべきではないと思います。

公民権の停止を受けてない限り、どんな人間であれ、選挙に立候補する権利はあります。議会制民主主義の建前に従えば、それは最大限尊重されるべきです。どんな人間であっても、どんな考えを持っていてもです。

ガーシーは、法律に則り、287714票を得て参議院議員になったのです。選挙で選ばれた国会議員を簡単に除名などできないでしょう。ガーシーと言えどもそれくらい国会議員の身分は重いのです。

ただ、一部で言われているように、機を見るに敏なところがあるみたいなので、みずから辞職する可能性がないとは言えないでしょう。

でも、声を大にして言いたいのは、問題の所在はガーシーの帰国や除名や逮捕にあるのではないということです。公人になったので「個人的な問題」という言い方は適切ではないと思いますが、ガーシーの帰国や除名や逮捕は二義的な問題にすぎないのです。それより、ガーシーに「清き一票」を投じた有権者を問題にすべきでしょう。それがこの問題を考える上での基本中の基本だと思います。身も蓋もない話と思われるかもしれませんが、その身も蓋もない話が大事なのです。でないと、これからも第二第三のガーシーが(NHK党から?)出て来るでしょう。

呆気に取られるような日本の民主主義の劣化を体現しているのは、国民に「愛国」を説きながら、その裏で、サタンの日本人は「アダムの国」の韓国に奉仕しなければならないと主張する韓国のカルト宗教と密通していたような、胸にブルーリボンのバッチを付けた政治家だけではないのです。ガーシーに「清き一票」を投じた有権者も同じです。

ガーシーを支持するのは、「うだつのあがらない人生を送っている」ガーシーと同世代の中年男性が多いという説がありますが、世の中に対する不満がこのようなかたちで発露されるのはあり得ないことではないように思います。

集合知どころか、むしろ逆に「水は常に低い方に流れる」ネットの習性によって、反知性主義が臆面もなく跋扈するようになる「ネットの時代」を懸念する声は前々からありましたが、今回、それがきわめて具体的に、これでもかと言わんばかりに、私たちの前に突き付けられたとも言えるのです。

それは、NHKの問題も同じです。政治家と旧統一教会の関係にNHKが及び腰であるとして、リベラルな人間たちが、「#もうNHKに金払いたくない」などというハッシュタグを付けて反発しているそうですが、私は「またか」と冷めた目で見ることしかできませんでした。NHKに関しては、受信料の問題だけでなく、政治との関係においても以前から問題視されていました。今にはじまったことではないのです。

そもそもNHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員は、国会の同意が必要ではあるものの、放送法の規定によって内閣総理大臣が任命することになっています。ときの政権に忖度するなと言う方が無理でしょう。そんなNHKの体質を問題視して、昔は受信料支払い拒否の市民運動もあったくらいです。

NHKの問題をNHK党の専売特許にさせたのは誰なのかと言いたいのです。今になって「#もうNHKに金払いたくない」などと言うのは、「『負ける』という生暖かいお馴染みの場所でまどろむ」左派リベラルお得意のカマトトなご都合主義だとしか思えません。それに彼らは「払いたくない」と言っているだけで、払わないと言っているわけではないのです。これじゃNHK党にバカにされるのがオチでしょう。

弱みがあるのか、(計算高い)彼なりの計算があるのか、田村淳なども国会議員になったガーシーにすり寄っているみたいですが、そういったことも含めて、ガーシーを持ち上げる民意にこそ問題の本質があるのだということを忘れてはならないのです。

要は、この目の前に突き付けられた「ネットの時代」の”夜郎自大な現実”を、私たちがどう考えるかでしょう。斜に構えて冷笑するだけでいいのか。あるいは、無責任にざまあみろと囃し立てるだけでいいのかということです。これからこういった”野郎自大な現実”が、容赦なく私たちのまわりを覆うようになるのは間違いないのです。
2022.08.05 Fri l ネット l top ▲