8月18日、ソウルで、日本の旧統一教会に対する報道に抗議する世界平和統一家庭連合主催の集会とデモが行われました。
詳細は有田芳生氏のTwitterに詳しいのですが、それによれば、主催者発表で4000人(警察発表3500人)が集まったそうです。その大半が合同結婚式で韓国に渡った日本人妻だとか。尚、現在、在韓の日本人女性信者は6676人だそうです。
韓国の農村では、入信すれば日本人の若い娘と結婚できるという触れ込みで信者の勧誘が行われていたそうですが、彼女たちはそうやって嫁不足に悩んでいた韓国の農村部の男性信者と「結婚させられた」日本人女性たちなのです。そして今度は、日本メディアに対する抗議のために、まるで弾よけの人質のように動員されているのでした。
旧統一協会は、戦後に生まれた教団で、まして政治色の濃い”政教一致”の教団なので、そこには東アジアの冷戦構造だけでなく、日帝による植民地支配の”記憶”が投影されているのは当然でしょう。韓国では当たり前のことですが、「反共」と「反日」が併存しています。それがカルト的思考と結びついて、非常に歪なかたちで露出しているのが旧統一教会(世界平和統一家庭連合)なのです。
デモに先だって開かれた抗議集会では、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が壇上に登場し、以下のような演説を行ったそうです。
私は、言うまでもなく”嫌韓”ではありませんが、しかし、韓鶴子総裁の「日本が最後の陣痛を経験している」とか「悶着は過ぎ希望に満ちた新日本が誕生するだろう」とか「日本は天が与えた真の自由を得るだろう」といった言葉を聞くと、いらんお節介だと言いたくなります。
日本で報道が始まった頃、韓鶴子総裁が幹部からの報告を受けて、微笑みながら心配には及ばないみたいなことを言ったという話がありましたが、私は、あの激しやすい(そして冷めやすい)韓国人がキャンディーズの微笑み返しみたいな感じで終わるわけがないと思っていましたが、案の定、結構激しい言葉を使っているようです。
こういった言葉の端々にも、日本は「エバ国家」で「アダムの国」の韓国に奉仕しなければならないという彼らの”上から目線”が垣間見えるように思います(まあどっちもどっちですが)。そして、その延長上に、日王(天皇)を自分の前で膝まづかせるんだという、故文鮮明(ムンソンミョン)教祖の発言があるのでしょう。しかし、この国のダブルスタンダードの「愛国」者たちは、それを見て見ぬふりしてきたのです。
日本の「保守」政治家たちは、私たち国民に「自分の国に誇りを持て」と説教を垂れながら、こんな韓国の夜郎自大でお節介な宗教に媚びへつらってきたのです。それどころか、みずからの政治思想さえも、お節介な宗教がしつらえたテンプレートをそのままトレースしていたのです。
何度もくり返しますが、「保守」や「愛国」や「反日」や「売国」や「反共」といった言葉はことごとく失効したのです。というか、そんなものは最初からなかったのです。虚妄だったのです。それが、戦後を覆ってきた”「愛国」という病理”の内実です。それは、対米従属を前提としたこの国の「愛国」が、最初から抱える(抱えざるを得ない)病理だったと言っていいでしょう。
A級戦犯として巣鴨プリズンに拘留されながら、ほかの戦犯と違って不起訴処分で釈放され、公職追放も免れることができた岸信介は、公職に復帰するとすぐに(まるで約束していたかのように)、のちの朴正煕政権下ではKCIAに庇護されることになる旧統一教会の日本進出に手を貸し、以後、朴正煕政権と歩調を合わせるかのように、教団を擁護し親密な関係をつづけたのでした。それは、日本の公安当局から密かに監視されるほどの親密度だったと言われています。
そこに既に、戦後の日本を覆った”「愛国」という病理”の萌芽があったと言うべきでしょう。その後の国際勝共連合の設立等の経緯を考えれば、岸の盟友であった「右翼の巨頭」による「文鮮明の犬」発言も、別に不思議ではないような気がします。
私は右派ではないので「歴史戦」の意味がよくわかりませんが、「歴史戦」というのなら、「保守」や「愛国」や「反日」や「売国」や「反共(容共)」などという空疎な言葉を子どものチャンバラごっこのようにふりまわすのではなく、戦後史の原点に立ち返り「国を売ったのはホントは誰か?」ということをもう一度考えるべきでしょう。
18日の一和の朝鮮人参のお土産付の抗議集会と僅か500メートルのデモは、日本の報道に対する焦り、危機感の表われと考えることもできますが、しかし、一方で、旧統一教会は、韓国やアメリカではとっくに従来のイメージから脱皮することに成功しているのでした。
テレビのニュースを見ても、ソウルの市民たちが違和感なく彼らのデモを受入れているのが印象的でしたが、旧統一教会は韓国では多くの企業を経営しており、新興の企業集団として市民権を得ているのでした。現地のジャーナリストが言っていましたが、韓国ではカルト宗教というより「宗教企業」や「小財閥」のようなイメージなのだそうです。
平昌オリンピックでアルペンスキーの大回転・回転競技の会場となった龍平リゾートや高麗人参でおなじみの一和やプロサッカーチーム・クラブ城南FCなどは有名ですが、その他、小学校から大学まで10近くの学校も経営していますし、病院や銀行から建設会社、旅行会社、不動産会社、石材会社、自動車学校まで傘下におさめています。日本では結婚式場を経営しています。しかも、それらは信者限定ではなく、一般にも開放された「普通の」会社なのです。病院なんて大きな総合病院を複数所有しているそうです。でも、その原資の大半は、日本から送金されたお金です。霊感商法や献金などで日本人から巻き上げたお金なのです。
そんな教団に胸にブルーリボンのバッチを付けた政治家たちが、取り込まれ、教化され、「秘書」などを通して教団が用意したテンプレートをなぞりながら、「愛国」の名のもとに憲法改正を主張し、「日本の伝統的な家庭を守る」という理由でジェンダーフリーやLGBTや同性婚や夫婦別性に反対してきたのです。そして、いわゆる”右派論壇”は、そんな政治家たちを「日本の誇り」と持ち上げたのです。
それにしても、韓国本国では霊感商法や強引な献金があまり行われてなかったということもあるのでしょうが、旧統一協会のフロント企業があんなにすんなり社会に受け入れられていることに対しては、日本人の感覚からするとやはり違和感を覚えざるを得ません。
韓国は「勝ったか負けたか」「損か得か」が日本以上に幅をきかせる社会なので、事業が成功すれば、”素性”が問われることなく認知されるところがあるのかもと思ったりします(半分は皮肉ですが)。ケンカでもビジネスでも手段は二の次に、とにかく勝つことが大事なのです。「勝てば官軍」なのです。日本もあまり偉そうなことは言えませんが、悪貨でもお金はお金という考えがあるのではないか。まして、日本からふんだくったお金ならなおさらでしょう。
また、旧統一教会に対しても、日本と違って「セックスリレー」=「血代交換」の方に目が向けられ、淫祠邪教だとして批判が集まったという過去があります。資金集めはもっぱら日本で行われていましたので、お金の出どころにはもともと関心が薄かったという事情もあるのかもしれません。
今の世界平和統一家庭連合にとって、資金源としての日本にどれほどの利用価値があるのか、私にはわかりませんが、こういったカルト宗教に無節操に魂を売ったダブルスタンダードの「愛国」者たちは、私のような人間から見ても、万死に値すると言わざるを得ません。濃淡なんて関係なく、彼ら「保守」政治家たちは全員退場させるべきでしょう。
教団とズブズブの関係にあるおニャン子クラブ大好きな政調会長が、早速、防衛費の増額について偉そうに話していましたが、「こんなやつが国の防衛を口にする資格があるのか」と思ったのは私だけではないはずです。
詳細は有田芳生氏のTwitterに詳しいのですが、それによれば、主催者発表で4000人(警察発表3500人)が集まったそうです。その大半が合同結婚式で韓国に渡った日本人妻だとか。尚、現在、在韓の日本人女性信者は6676人だそうです。
韓国の農村では、入信すれば日本人の若い娘と結婚できるという触れ込みで信者の勧誘が行われていたそうですが、彼女たちはそうやって嫁不足に悩んでいた韓国の農村部の男性信者と「結婚させられた」日本人女性たちなのです。そして今度は、日本メディアに対する抗議のために、まるで弾よけの人質のように動員されているのでした。
旧統一協会は、戦後に生まれた教団で、まして政治色の濃い”政教一致”の教団なので、そこには東アジアの冷戦構造だけでなく、日帝による植民地支配の”記憶”が投影されているのは当然でしょう。韓国では当たり前のことですが、「反共」と「反日」が併存しています。それがカルト的思考と結びついて、非常に歪なかたちで露出しているのが旧統一教会(世界平和統一家庭連合)なのです。
デモに先だって開かれた抗議集会では、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁が壇上に登場し、以下のような演説を行ったそうです。
▼韓鶴子総裁の演説。日本部分(抄訳)。
— 有田芳生 (@aritayoshifu) August 18, 2022
〈日本が最後の陣痛を経験している。指導者たちは恐れるな、強く大胆に出て行け、悶着は過ぎ希望に満ちた新日本が誕生するだろう。大胆に出て行け。 勝利せよ。日本は天が与えた真の自由を得るだろう。「偽りの歴史」「偽りの勢力」は皆さんを通じて退く。〉 pic.twitter.com/4hld1E3FyK
私は、言うまでもなく”嫌韓”ではありませんが、しかし、韓鶴子総裁の「日本が最後の陣痛を経験している」とか「悶着は過ぎ希望に満ちた新日本が誕生するだろう」とか「日本は天が与えた真の自由を得るだろう」といった言葉を聞くと、いらんお節介だと言いたくなります。
日本で報道が始まった頃、韓鶴子総裁が幹部からの報告を受けて、微笑みながら心配には及ばないみたいなことを言ったという話がありましたが、私は、あの激しやすい(そして冷めやすい)韓国人がキャンディーズの微笑み返しみたいな感じで終わるわけがないと思っていましたが、案の定、結構激しい言葉を使っているようです。
こういった言葉の端々にも、日本は「エバ国家」で「アダムの国」の韓国に奉仕しなければならないという彼らの”上から目線”が垣間見えるように思います(まあどっちもどっちですが)。そして、その延長上に、日王(天皇)を自分の前で膝まづかせるんだという、故文鮮明(ムンソンミョン)教祖の発言があるのでしょう。しかし、この国のダブルスタンダードの「愛国」者たちは、それを見て見ぬふりしてきたのです。
日本の「保守」政治家たちは、私たち国民に「自分の国に誇りを持て」と説教を垂れながら、こんな韓国の夜郎自大でお節介な宗教に媚びへつらってきたのです。それどころか、みずからの政治思想さえも、お節介な宗教がしつらえたテンプレートをそのままトレースしていたのです。
何度もくり返しますが、「保守」や「愛国」や「反日」や「売国」や「反共」といった言葉はことごとく失効したのです。というか、そんなものは最初からなかったのです。虚妄だったのです。それが、戦後を覆ってきた”「愛国」という病理”の内実です。それは、対米従属を前提としたこの国の「愛国」が、最初から抱える(抱えざるを得ない)病理だったと言っていいでしょう。
A級戦犯として巣鴨プリズンに拘留されながら、ほかの戦犯と違って不起訴処分で釈放され、公職追放も免れることができた岸信介は、公職に復帰するとすぐに(まるで約束していたかのように)、のちの朴正煕政権下ではKCIAに庇護されることになる旧統一教会の日本進出に手を貸し、以後、朴正煕政権と歩調を合わせるかのように、教団を擁護し親密な関係をつづけたのでした。それは、日本の公安当局から密かに監視されるほどの親密度だったと言われています。
そこに既に、戦後の日本を覆った”「愛国」という病理”の萌芽があったと言うべきでしょう。その後の国際勝共連合の設立等の経緯を考えれば、岸の盟友であった「右翼の巨頭」による「文鮮明の犬」発言も、別に不思議ではないような気がします。
私は右派ではないので「歴史戦」の意味がよくわかりませんが、「歴史戦」というのなら、「保守」や「愛国」や「反日」や「売国」や「反共(容共)」などという空疎な言葉を子どものチャンバラごっこのようにふりまわすのではなく、戦後史の原点に立ち返り「国を売ったのはホントは誰か?」ということをもう一度考えるべきでしょう。
18日の一和の朝鮮人参のお土産付の抗議集会と僅か500メートルのデモは、日本の報道に対する焦り、危機感の表われと考えることもできますが、しかし、一方で、旧統一教会は、韓国やアメリカではとっくに従来のイメージから脱皮することに成功しているのでした。
テレビのニュースを見ても、ソウルの市民たちが違和感なく彼らのデモを受入れているのが印象的でしたが、旧統一教会は韓国では多くの企業を経営しており、新興の企業集団として市民権を得ているのでした。現地のジャーナリストが言っていましたが、韓国ではカルト宗教というより「宗教企業」や「小財閥」のようなイメージなのだそうです。
平昌オリンピックでアルペンスキーの大回転・回転競技の会場となった龍平リゾートや高麗人参でおなじみの一和やプロサッカーチーム・クラブ城南FCなどは有名ですが、その他、小学校から大学まで10近くの学校も経営していますし、病院や銀行から建設会社、旅行会社、不動産会社、石材会社、自動車学校まで傘下におさめています。日本では結婚式場を経営しています。しかも、それらは信者限定ではなく、一般にも開放された「普通の」会社なのです。病院なんて大きな総合病院を複数所有しているそうです。でも、その原資の大半は、日本から送金されたお金です。霊感商法や献金などで日本人から巻き上げたお金なのです。
そんな教団に胸にブルーリボンのバッチを付けた政治家たちが、取り込まれ、教化され、「秘書」などを通して教団が用意したテンプレートをなぞりながら、「愛国」の名のもとに憲法改正を主張し、「日本の伝統的な家庭を守る」という理由でジェンダーフリーやLGBTや同性婚や夫婦別性に反対してきたのです。そして、いわゆる”右派論壇”は、そんな政治家たちを「日本の誇り」と持ち上げたのです。
それにしても、韓国本国では霊感商法や強引な献金があまり行われてなかったということもあるのでしょうが、旧統一協会のフロント企業があんなにすんなり社会に受け入れられていることに対しては、日本人の感覚からするとやはり違和感を覚えざるを得ません。
韓国は「勝ったか負けたか」「損か得か」が日本以上に幅をきかせる社会なので、事業が成功すれば、”素性”が問われることなく認知されるところがあるのかもと思ったりします(半分は皮肉ですが)。ケンカでもビジネスでも手段は二の次に、とにかく勝つことが大事なのです。「勝てば官軍」なのです。日本もあまり偉そうなことは言えませんが、悪貨でもお金はお金という考えがあるのではないか。まして、日本からふんだくったお金ならなおさらでしょう。
また、旧統一教会に対しても、日本と違って「セックスリレー」=「血代交換」の方に目が向けられ、淫祠邪教だとして批判が集まったという過去があります。資金集めはもっぱら日本で行われていましたので、お金の出どころにはもともと関心が薄かったという事情もあるのかもしれません。
今の世界平和統一家庭連合にとって、資金源としての日本にどれほどの利用価値があるのか、私にはわかりませんが、こういったカルト宗教に無節操に魂を売ったダブルスタンダードの「愛国」者たちは、私のような人間から見ても、万死に値すると言わざるを得ません。濃淡なんて関係なく、彼ら「保守」政治家たちは全員退場させるべきでしょう。
教団とズブズブの関係にあるおニャン子クラブ大好きな政調会長が、早速、防衛費の増額について偉そうに話していましたが、「こんなやつが国の防衛を口にする資格があるのか」と思ったのは私だけではないはずです。