岸田首相リモート1

岸田リモート2


私は、この写真を見て、裸の王様?と思いました。誰も変だと思わないのでしょうか。上の写真をよく見ると、モニターの下のテーブルの上にはスマホやボイスレコーダーが並べられています。デジタルネイティブとおぼしき若い記者たちの中で、「こんなのバカバカしい」と言って帰った者はいないのか。だとしたら、彼らは思考停止したただのドレイでしょう。2枚目の「リモート試食」の写真も同じです。これでは、世界の笑い物になっても仕方ないでしょう。

このようにいざとなれば、竹槍でB29を撃ち落とすというような発想にいつでも戻ってしまうニッポン。でも、誰もおかしいと言わない。それがこの国に連綿と続く「国のあり様」なのです。それで、「ニッポン凄い!」とか言って自演乙しているのです。

フィンランドのマリン首相が、友人たちとの私的パーティで「踊ったりして騒ぐ動画がSNS上に流出」し、野党が違法薬物を使っているのではないかと批判したというニュースがありました。それに対してマリン首相は、自腹で薬物検査を受けて潔白を証明したそうです。私は件の踊っている動画を観ましたが、「カッコいいなあ」と思いました。岸田首相のマンガチックなリモート会見や政界と旧統一教会とのズブズブの関係を考えると、日本にマリン首相のような「カッコいい」総理大臣が生まれるのはそれこそ夢のまた夢のように思います。マリン首相に比べれば、「次世代のホープ」と言われる河野太郎や小泉進太郎も、ただのアナクロなおっさんのようにしか見えません。

岸田総理は24日に、新型コロナウイルスで全ての感染者を届け出る「全数把握」を見直して、届け出は重症化リスクのある高齢者や基礎疾患のある人に限定するという新たな方針を発表しました。もっとも、これは届け出の義務を廃止するというだけで、「全数把握」を続けるかどうかは自治体の判断に任せるという、自治体に丸投げした恰好です。

「全数把握」を見直す論議は、医療現場から出てきたもので、診察を終えたあと、感染者情報共有システム「HER-SYS(ハーシス)」に基本情報や検査・診断情報など10項目以上を入力しなけばならないので、感染が拡大すればするほど負担が大きくなるという話なのです。それに対して、「早く帰りたい」保健所の職員や毎日住民に感染状況を発表しなければらない手間を強いられる各自治体の首長たちが同調して、見直しの声が大きくなっていったのでした。最近は特に「公務員負担」とか「医療機関や保健所、行政の負担」という言葉をよく耳にするようになりましたが、それが「全数把握」見直しの本音のように思えません。

メディアもそんな声しか伝えず、あたかも「全数把握」は現状に適してないかのような印象操作を行っていましたが、ホントにそうなのか、疑問も多くあります。

ただ単に「忙しいからやってられない」という話だったら、システムを改善するなり人員を増やすなりすればいいだけの話です。それがどうして本体の「感染症法」の問題にまで言及されているのか。しかも、「感染症法」を改正して新たに設けられた「新型インフルエンザ等感染症」の適用まで外して、季節性インフルエンザ並みの「5類」に緩めろという話になっているのです。

現在、感染者数も死者数も過去最多を更新しています。文字通り、新型コロナウイルスの正念場を迎えていると言っても過言ではない状況下にあるのです。そんな中で、このような方針が出ること自体、異常と言うしかありません。どうして今なのか? 疑問は尽きません。

「全数把握」の見直しを主張する医者の論拠に、実際は無症状や軽症で医者にかからない患者も多いので、「全数把握」自体がもはや意味を持たなくなったというものがありますが、でも、「全数把握」の目的はそんなことだけではないのです。保健所が患者個々の詳細な感染状況を把握してフォローし、濃厚接触者を特定して感染拡大を防ぐという目的もあるはずです。

それに、落ちこぼれがあるにしても、現在、全体の感染状況を知るには「全数把握」しかないのです。それが唯一の指標なのです。それをなくせば、リアルタイムに全体の感染状況を知る指標がなくなってしまうのです。

そんな私でもわかるようなことをどうして専門家の医者たちが無視して、「こんなのやめちまえ」とちゃぶ台をひっくり返すようなことを言うのか。しかも、感染が急拡大している最中に、です。

私は、新型コロナウイルスが猛威をふるいはじめた2020年の5月に、このブログで、徳洲会の徳田虎雄氏の話を引き合いに出して、次のような記事を書きました。

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専門家会議の方針は、徳洲会の徳田虎雄氏が指摘したような医者特有のご都合主義の所産に過ぎません。徳田氏が9歳のとき、3歳の弟が激しい下痢と嘔吐を繰り返し脱水症状を起こしたため、母親に言われて、真夜中に島の医者のもとへ走り往診を頼んだけど、医者は腰を上げてくれなかったそうです。そして、翌日、弟は息を引き取ったのです。徳田氏は、「弟の死がなかったら、僕は医者にならなかった」と自著(『ゼロからの出発 実現できない夢はない』)で書いていました。

自分の病院を持ってからは、「生命(いのち)だけは平等だ」という理念を掲げ、1年365日24時間の受入れを実践し、患者からの心付けを断り、差額ベット代も取らないという、徹底した患者本位の医療を貫いたのでした。そのため、既得権益を守ろうとする日本医師会と激しく対立することになったのですが、そのときも日本医師会は、今と同じように、徳洲会のようなやり方をすると日本の医療が崩壊すると言っていたのです。「医療崩壊」というのは、いつの時代も彼らの常套句=脅し文句なのです。


今回の「全数把握」の見直しも、同じ論理が使われているように思えてなりません。

私もまったく知らない職場ではないので、医療現場が大変なのはよくわかります。その一方で、決して賢いとは言えない人々が、行動制限がなくなったからと言って、呆けたように旅行やイベントに繰り出している現実があるのもわかります。同じ国とは思えないようなこの対称的な光景は、たしかにおかしいと思います。でも、それはあくまで「全数把握」とは関係ない感情的な問題にすぎません。

「全数把握」を見直すメリット、デメリットを考えても、議論がおかしな方向で行われたことがよくわかるのでした。

「全数把握」が見直されれば、言うまでもなく、医療機関の事務負担が軽減されます。この場合の医療機関というのは、「発熱外来」の指定を受けた日本医師会に所属する個人のクリニックのようなところでしょう。また、彼らが「全数把握」の見直しと併せて主張する、今の2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に変更になれば、「発熱外来」の指定自体がなくなり、どこでも受診できるようになるので、彼らの負担が減るのはたしかでしょう。

しかし、その代わり、個々の感染者の把握も、濃厚接触者の特定もできなくなるので、感染者が市中に放置され、感染がより拡大することになります。

政府の方針は、火が燃えているのに、「逃げ足が遅い高齢者などには手を貸しますよ。あとは自分たちで逃げて下さいね」と言っているようなものです。でも、大事なことは燃えている火に水をかけることでしょう。でも、そっちは燃えるに任せているのです。中には火を点けてまわっている人間さえいるのに、それも無視するだけです。いくら火の勢いが増しても水をかけることもしないで、逃げ足が速いか遅いかの話になっているのです。

感染法上の分類を変えろと主張する医者たちにしても、国に対して、もっと感染防止策を取れという主張は何故かしないのです。社会経済活動の再開をお題目のように唱える政府の方針には唯々諾々と従うだけです。そして、自分たちが忙しいのは、「発熱外来」のせいだ、「HER-SYS」のせいだ、「療養証明」や「陰性証明」のせいだ、あんなのはなくせ、と主張するだけです。

株式会社ライボのJob総研が行った「2022年コロナ感染に関する意識調査」によれば、感染して症状があっても、会社に申告した人は68.1%にすぎず、残りの31.9%は申告しなかったと答えています。しかも、この調査を取り上げたテレビ朝日の「モーニングショー」によれば、申告しなかった人の中で70%の人は、症状があっても出社していると答えているそうです。これでは感染が収まるはずもありませんが、「全数把握」を見直せば、この傾向は一層強まるでしょう。でも、そうなれば、重症化リスクのある人たちは益々感染して重症化するリスクに晒されることになるのです。

ライボ
Job総研
『2022年 コロナ感染に関する意識調査』

羽鳥モーニングショー
「コロナ感染に関する意識調査」

「全数把握」を見直せば、基礎疾患にある人と65歳以上の高齢者以外は、感染しても基本的に自己申告になります。よほどの症状がなければ、病院にも行かないでしょう。そうやって自分で自分の感染を管理しなければならなくなるのです。

でも、人間は賢明な人ばかりではないでしょう。というか、むしろ賢明な人は圧倒的に少数でしょう。現実は、行動制限がなくなったからという理由だけで、コロナは終わったかのように街に繰り出すような人たちが大半なのです。

それに、基礎疾患があると言っても、医療機関で把握されているのは現在治療を受けている人だけです。健康診断を受けてない人もいるでしょうし、健康診断を受けて精密検査や治療を指摘されても、無視している人も多いでしょう。自分が基礎疾患があるかどうかもわかってない人も多いはずです。行動制限をなくすとか「全数把握」を見直すとか言うと、新型コロナウイルスはもう峠を越した、風邪と同じになった、怖いものではなくなったように勝手に解釈する人も多くなるでしょう。

でも、65歳以下であっても、無症状や軽症で済むとは限らないのです。もしかしたら自覚していないだけで、基礎疾患を持っているかもしれないのです。メタボや高血圧であっても重症化する可能性はあると言われています。

また、オミクロンの場合、重症者の割に死者数が多いのが特徴で、それは、軽症や中等症の患者の中で症状が急変して死に至る患者が多いからだという指摘もあります。「全数把握」が見直されると、そういった軽症や中等症の患者は保健所のフォローがなくなるのです。

それに、何より今後も新たな変異株による感染爆発があるかもしれません。「全数把握」を見直すと、検体数が少なくなるので新たに発生した変異株を見逃す懸念があるという指摘もあります。何度もくり返しますが、新型コロナウイルスは終わったわけでも、終わりつつあるわけでもないのです。今現在も、過去最高の感染者数や死亡者数を更新しているのです。

今回の「全数把握」見直しについては、意外にもと言ったら失礼ですが、小池百合子東京都知事が他の付和雷同するだけの軽薄な首長たちとは違った高い見識を示していました。

FNNプライムオンライン
コロナ感染者“全数把握”の見直しに疑問 小池知事「切り口が違う」 デジタル化の問題も指摘

新型コロナウイルス新規感染者の全数把握の見直しについて、東京都の小池知事は24日午後2時すぎ、「切り口が違う」と疑問を呈した。

政府が新型コロナ患者の全数把握の見直しを表明したことについて、小池知事は「患者さんがどういう状況でどうなったのかは、知り得た方がいい」と述べた。

その上で、感染者情報を管理するシステム「HERーSYS」と、電子カルテが連動していないなど「デジタル化の問題」を指摘。

また、都は医療機関が「HERーSYS」の届け出と健康観察を行った場合、患者1人につき3万1200円の補助を出していることから「事務の手続きを医師以外に託し、医師はその健康観察に集中するとか」と、代替案にも言及した。


そもそも「HERーSYS」の入力にしても、上の岸田首相のリモートまがいと同じで、ただデジタル風を装っているだけで、実態は中途半端でアナログです。小池都知事が言うように、電子カルテと「HERーSYS」をリンクすれば、ずいぶん手間がはぶけるでしょう。

それに、東京都が患者一人あたり3万1200円の補助を出しているという話も初めて知りましたが、要は、医者がそれをケチって自分で入力しておきながら負担が大きいと不満を言っているだけのような気がしないでもありません。私の知っている医者は、キーボードの入力が苦手なので、電カルもタッチキーボードを使って手書きで入力しています。あれでは時間がかかってイライラするだろうなと思いました。

何だかここにも、徳田虎雄氏が言っていたような、医者(日本医師会)の身勝手さが表われているような気がしてなりません。誰も口に出して言いませんが(でも心の中では思っていますが)、医者というのは世間知らずで子どもみたいな人間が多いのも事実です。徳田虎雄氏が言うように、病院も医者のわがままにふりまわされたらお終いなのです。況や国の感染対策においてをや、でしょう。日本医師会が獅子身中の虫であるという認識が欠けているのではないか。

それにしても、何故、今なのか。同時に発表された水際対策の緩和も同じですが、どうも内閣支持率の急落を受けて、場当たり的に俗情に阿った感じがしないでもありません。これだったら支持率が挽回できるのではないかと、リモートまがいの隔離部屋で一生懸命考えたのかもしれません。こういった歴史的なパンデミックに際しても、小賢しい政治的な都合が優先されるこの国の政治の無責任さとお粗末さを考えないわけにはいかないのでした。
2022.08.25 Thu l 社会・メディア l top ▲