津田大介氏が主催するYouTubeの「ポリタスTV」で、『君は早稲田で死んだ』(文藝春秋)の著者の樋田毅氏とジャーナリストの青木理氏をゲストに迎えた下記の番組を観ました。

ポリタスTV
『彼は早稲田で死んだ』と統一教会 ゲスト:樋田毅・青木理
https://www.youtube.com/watch?v=MDxYXmc1Z4o

樋田毅氏は、朝日新聞の記者時代、阪神支局に勤務していたそうです。1987年に赤報隊事件が起きたときは大阪社会部に配属されていたのですが、事件の翌日、阪神支局に派遣され、不審者情報などを聞き込むチームに入り、また、のちに大阪社会部で編成された専従取材班のキャップも務めたそうです。

樋田氏は、その体験をもとに2018年に岩波書店から『記者襲撃   赤報隊事件30年目の真実』という本を出しています。今回、旧統一教会の問題が再び取り沙汰されるようになったので、私も『記者襲撃』を読みたいと思ったのですが、考えることはみんな同じみたいで、どこも在庫切れでした。

『彼は早稲田で死んだ』は、私も下の「関連記事」に感想文を書いていますが、1972年に、早稲田大学で中核派のスパイと間違われた「川口大三郎君」が、当時、早稲田を暴力的に支配していた革マル派にリンチされ殺害された事件を扱った本です。

「川口君」は、文学部2年のとき、中核派系の集会に参加したことから、中核派のオルグの対象になりました。しかし、中核派に入る意志がなかったので、友人を介して同派と話し合い、中核派と距離を置いたのでした。にもかかわらず、その矢先、構内を歩いていた「川口君」は革マル派の活動家に拉致され、一文(第一文学部)の自治会室に監禁されて、リンチの末殺害されるのでした。

『彼は早稲田で死んだ』は、その事件を発端に誕生した新しい一文の自治会の委員長として、非暴力を貫いて革マル派と対峙し、みずからも革マル派に襲撃され大けがを負うという過酷な体験を通して、当時大学を覆っていた異常な空気を描いています。ところが、番組の中で、『彼は早稲田で死んだ』と赤報隊事件を扱った『記者襲撃』はつながっており、「川口事件」にも旧統一教会が絡んでいたという裏話が飛び出したのでした。

私もこのブログで書きましたが、有田芳生氏が、先日、94年頃だったかにオウムの次は旧統一教会だとして、公安警察を中心に強制捜査に着手する準備をしていたけど、結局、「政治の力」でとん挫したとテレビで発言して話題になりました。樋田毅氏も、同じ話を朝日の社内で聞いて小躍りしたそうです。でも、待てど暮らせど捜査は始まらなかったと。また、当時、共同通信で公安担当の記者だった青木理氏も、やはり、同じ情報を入手していたと言ってました。

もし強制捜査に入っていたら、日本の政治の風景もずいぶん変わったものになっていたでしょう。

公安の強制捜査を阻止した「政治の力」とは何なのか。誰なのか。自民党は旧統一教会との関係を絶対に切れないと言われるのは何故なのか。そこにあるのは、”戦後史の闇”と言ってもいいものです。選挙の手伝いをして貰ったとか、イベントに祝電を打ったとか、新聞や雑誌のインタビューを受けたとかいうのは枝葉の問題にすぎません。

樋田氏によれば、最初に旧統一教会が絡んできたのは、事件から1年後だそうです。『彼は早稲田で死んだ』でもチラッと触れられていますが、早稲田の原理研(原理研究会)の活動家(つまり信者)たちが、早稲田を暴力のない大学にするためと称して、「川口記念セミナーハウス」を造ることを提唱し運動を始めたのでした。そして、「川口君」のお母さんもその主旨に賛同して、お見舞金として大学から貰った600万円を寄付しました。また、当時の村井資長総長夫妻も、「革マル寄り」と言われた周辺の教授たちの薦めもあって、同氏が別荘用地として伊豆に持っていた土地を無償提供しました。残りの建設費は全国から寄付を集めて計画が実行されました。ところが、いざ完成してみたらセミナーハウスは宗教施設として登記されていたそうです。何のことはない、セミナーハウスがいつの間にか旧統一教会の宗教施設に化けていたのです。如何にも旧統一教会らしいやり方ですが、当然ながら訴訟沙汰になったそうです(のちに和解した)。

もうひとつは、樋田氏が、昨年の11月8日の「川口君」の命日に、『彼は早稲田で死んだ』が出版されたのでその報告も兼ねて伊豆のお墓にお参りに行ったときのことです。ちょうど50回忌にあたるため、本堂では、亡くなったお母さんに代わり実のお姉さん夫婦が施主で法要が営まれていたそうです。それで、お姉さんに挨拶したあと、お墓で待っていると、5~6人の男女と一緒にお姉さんがやって来ました。ところが、一緒にやって来た人間たちから挨拶された樋田氏は、びっくりします。何と彼らは早稲田の原理研のメンバーだったのです。もちろん、「川口君」のお母さんやお姉さんは信者ではありません。

旧統一教会は、50年近くずっと「川口君」の遺族と接触をつづけていたのです。実は、ジャーナリスト志願だった「川口君」は、1年のときに、早稲田学生新聞に一時席を置き早慶戦の記事などを書いています。しかし、そのあと、修練会に参加させられた「川口君」は、早稲田学生新聞が旧統一教会(原理研)の関連団体であったことを知り、びっくりしてすぐにやめています。でも、彼らは、早稲田学生新聞にいたことを根拠に、「川口君」が信者だったと主張しているのでした。そして、「川口」君は、早稲田の原罪(つまり共産主義の汚染)の身代わりになって死んだのだとして、同じように人類の罪を背負って磔刑になったイエス・キリストの化身のように祭り上げていたのでした。

ある古参信者は、樋田氏の取材に対して、教団は赤報隊事件に関与してないと断言できるけど、ただ末端の信者で個人的に暴走した人間がいたかどうかまではわからない(その可能性を否定することはできない)と語ったそうです。一方で当時、教団が、自衛隊員をターゲットに勧誘活動を行ったり、教団内部で「特殊部隊」を組織して訓練していたことがあきらかになっています。

私は、その古参信者の発言はもしかしたら樋田氏に対する”警告”の意味も含んでいたんじゃないかと思いました。前の記事で書いたように、そうやって暴力をチラつかせる脅しの手口は旧統一教会が得意とするもので、ヤクザのそれとよく似ているのです。組織はやらないけど、もしかしたら一部の跳ね上がりが勝手にやるかもしれないというような言い方は、相手に恐怖を与える彼らの常套手段です。実際に旧統一教会を取材していたジャーナリストたちは、個人的に様々な脅しや嫌がらせを受けていたと証言しています。

ちなみに、樋田氏に赤報隊の話をした古参信者は、日韓トンネル研究会の会長を務め、2009年から2017年までは日韓トンネルを推進する国際ハイウェイ財団の理事長(その前は事務局長)を務めていたそうです。と、この話は、先日、週刊文春が伝えた、岸田首相の熊本の後援会の会長である崇城大学の中山峰男学長が、旧統一教会の関連団体の「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長を務めていた話と重なるのでした。

中山学長は、「日韓トンネル推進熊本県民会議」が設立された2011年から報道後辞任するまで議長を務めていたのですが、記者会見では、旧統一教会の関連団体だとは知らなかった、「ショックだった」と言ってました。でも、地元の人間には、それが旧統一教会のプロジェクト(と言っても、実際は1口5万円の金集めの口実)だというのは周知の事実で、2016年には韓鶴子総裁が直々に現地を訪れているのです。その際、現地で出迎えたのかどうか知りませんが、中山学長のおとぼけは教育者としてあるまじき、というか恥ずべき詭弁と言わねばならないでしょう。

樋田氏によれば、国際ハイウェイ財団の理事長を務めた古参信者はもと民青(日本民主青年同盟)の同盟員で、共産党員だった有田芳生氏のお父さんの選挙運動も手伝ったことがあるそうです。信者の中には、元革マル派だったという理論派の信者もいたということでした。

旧統一教会と言うと、カルトにとりつかれた真面目だけど浅学無能で愚鈍な信者たちのようなイメージを抱きがちですが、でも、一方で、「頭のいい人間が多い」「文鮮明の教義を彼らなりに解釈してより深化させている」「いくらか醒めたような信者の方がオルガナイザーとして優れているし怖い」という声があります。偏差値の高い大学で熱心にリクルートしているので当然と言えば当然ですが、そんな彼らにとって、ろくに漢字も読めない自民党の議員を篭絡するのは、それこそ赤子の手を捻るくらい簡単なことでしょう。

青木理氏が言うように、右派学生運動を主導した旧生長の家の学生信者たち(生学連)が中心になって作った日本会議ともども、原理研のOBたちも、フロント団体を通じて自民党清和会と親密な関係を築き、憲政史上最長の安倍政権を陰で支えていたのです。そうやって政権の中に深く入り込み、日本の政治に関与してきたのです。そこにあるのは、新左翼との死闘を生きぬいてきた彼らの”持続する志”です。

日本会議(生学連)にしても、旧統一教会(原理研)にしても、60年代後半の”叛乱の季節”の残党とも言うべき彼らが、50年経った今なお、政権与党の周辺に蝟集し国の政治に関与していたというのは、考えてみれば凄い話です。中心メンバーは既に70代半ばなのです。あと10年もすれば彼らの多くは、彼らが言う「霊界」の住人になるでしょうが、それにしても、まるでゾンビのような彼らの”持続する志”には驚嘆するしかありません。

彼らの「神の国をつくる」という”祭政一致”の思想は、たとえば、高市某や杉田某や城内某のような安倍元首相に近い政治家たちに、とりわけ多大な影響を与えてきました。でも、旧統一教会の問題が噴出したことで、そんな政治家たちが信奉する、日本を戦前のようなまるでタリバンが支配するような国に戻すといったウルトラ「保守」思想が、何のことはない韓国のカルト思想をトレースした「エバ国家」の”自虐思想”にすぎなかったことがあきらかになったのでした。「愛国」と「売国」があべこべ(おやじギャグ?)だったのです。

どうして韓国のカルト宗教が日本の憲法改正を主張するのか。それを不思議に思わない方がおかしいのです。私が、「保守」や「愛国」や「反日」や「売国」や「反共」といった言葉は失効したとしつこく言うのも、それゆえです。究極の目的のためには、ヌエのようにどんな姿にも、どんな主張にも変えることができるというカルト特有の戦略を理解しないと、見えるものも見えなくなるでしょう。

憲法改正して日本を「誇りの持てる国」にすることや、ジェンダーフリーやLGBTや夫婦別性に反対して「日本の伝統的な家庭を守る」ことを彼らは主張していますが、その先には、「エバ国家」の日本を「アダムの国」の韓国に永遠に奉仕する国にするという目的があります。本来の目的は、そうやって日本を「浄化」することなのです。そもそもLGBTにしても、それが旧統一教会の復帰摂理(復帰原理)=血代交換の教理と真っ向から対立する性的指向なので反対しているだけであって、「日本の伝統的な家庭を守る」ためというのは単に日本の「保守」を懐柔するための方便にすぎないのです。そんなこともわからないのかと思います。

「エバ国家」と「アダムの国」の主張にしても、荒唐無稽な話のように思われるかもしれませんが、でも、霊感商法や身ぐるみはがされるような献金などを見れば、理解できない話ではないはずです。もとより、カルトは荒唐無稽なものでしょう。具体的な金額は不明ですが、今まであきらかになった金額から推定しても、兆に喃々なんなんとするような莫大なお金がむしり取られ、韓国に送金されたのは間違いないでしょう。

私たち国民に、日の丸に頭を下げろ、君が代を歌え、愛国心を持てと説教して、君が代斉唱の際に椅子から立たなかった教師を懲戒免職にしたような(胸にブルーリボンのバッチを付けた)「愛国」的政治家やその追随者たちが、その陰では、彼ら流の言い方をすれば「反日カルト」に「国を売っていた」のです。「エバ国家」を「アダムの国」に奉仕させる活動にお墨付きを与え、便宜をはかってきたのです。その中心人物が「日本の誇り」だなどと言われ、来月、まるでどこかの国の独裁者と同じように「国をあげて」送られるのです。

ここにきて、「24時間テレビ」に旧統一教会のフロント団体がボランティアとして協力していたことを教団がリークしてざわついていますが、それも先の「異常な過熱報道に対する注意喚起」という抗議文に沿った彼らの反撃であるのはあきらかです。

フジは論外としても、NHKともども旧統一教会の報道に及び腰と言われてきたテレビ朝日が、教団の施設に「初潜入取材」などと言って、施設内で撮影した嫌がらせの被害を訴える信者のインタビューを流していましたが、それは教団の意に沿ったテレビ局だから許可が出ただけです。一方で、教団の意に沿わないメディアに対しては、日テレのように、これから”過去の癒着”がリークされゆさぶりをかけて来るでしょう。そういったメディアに対する選別&”脅し”にも、拍車がかかるのは間違いありません。でも、ここで怯んでいたら元も子もないのです。

何度もくり返しますが、自民党が旧統一教会と手を切るなどできるわけがないのです。自由民主党という政党が解体されない限り、関係を絶つことはできないでしょう。


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