世界は、資本蓄積に必要な資源の変遷とともに、100年ごとに覇権が変わっていくという壮大な理論があります。
まず19世紀の最初の100年は石炭のイギリス(大英帝国)、次の100年は石油のアメリカでした。そして、現代はレアメタルの中国に覇権が移りつつある、と言うのです。新型コロナウイルスによるパンデミックがそれを(覇権の移譲)をいっそう加速させる役割を果たした、と。しかも、国家間はしばらく「対立」が続くものの、覇権の移譲は、本質的には「対立」ではなく資本の「コンセンサス」だと言います。
対米従属が骨の髄まで沁み込んだ日本人にとっては、背筋に冷たいものが走るような話かもしれません。
その中国ですが、日本などと同じように、1995年代後半から2009年生まれのZ世代が消費の中心になりつつあり、既にZ世代は約2億8千万人おり、全人口の約18.1%を占めるまでになっているそうです。
先日もTBSのNews23でやっていましたが、この世代の特徴は、前の世代のような「海外ブランドを仰ぎ見るような感覚」(人民網日本語版)がないことだそうです。むしろ、「国潮」(国産品)を着ることがトレンドにさえなっている、と言うのです。
そう言うと、日本人は、中国政府の政策で愛国主義が台頭して、それが消費動向にも反映されているからだろう、というような見方をする人間が多いのですが、必ずしもそうではなく、外国製品に引けを取らないほど中国製品のクオリティが上がっている、という理由が大きいのです。若者たちは、「国内ブランドのデザインには生まれ変わったような感じがあり、モデルの更新ペースも速い」(同)という印象を持っているそうです。
私も前にハイアールの話をしましたが、もう中華製の安かろう悪かろうの時代は終わったのです。ましてハイテク製品の分野では中国はトップを走っています。だから、西側の国はあんなにファーウェイを怖れたのでしょう。
昨日もテレビ東京で、中国に出店していた飲食や小売などの企業が撤退するケースが多くなっており、やはり中国進出は「政治のリスクが大きすぎる」というようなニュースをやっていましたが、それは「政治のリスク」ではなく、「国潮」の台頭が要因と考えるべきでしょう。
来月11日から入国規制が全面解除になりますが、中国人観光客がホントに以前のように戻ってくるのか、楽観視はできないように思います。まして、かつてのような”爆買い”は期待できないのではないか。もちろん、円安が追い風であることはたしかですが、中国もどんどん豊かになっており、上で見たように消費のトレンドが大きく変わっているのです。
今年は日中国交正常化50周年だそうですが、アメリカの尻馬に乗って対中強硬策を取っても(それこそ「政治のリスク」を負っても)、泣きを見るのはどう考えても日本の方です。武士は食わねど高楊枝では国はやっていけないのです。
下の表のように、コロナ前の2019年の外国人観光客の地域別のシェアを見ると、アジアからの観光客が圧倒的に多く、全体の82.7%です。中でも東アジアが70.1%を占めています。テレビ東京「Youは何しに日本へ?」でインタビューするのは、何故か欧米豪の観光客ばかりですが、彼らは13.0%にすぎません。
国別のシェアを見ても、中国本土からの観光客が959.4万人で、東アジアの中で42.9%を占めています。香港を含めると53.1%になります。
2019年訪日外国人旅行者地域国別シェア

※国土交通省観光局資料より抜粋
次の消費額(つまり、経済効果)を見ると、中国人観光客の存在感がいっそう際立ちます。外国人観光客が日本で消費したお金の総額は4兆8千135億円ですが、国別では、1位が中国1兆7千704億円、2位が台湾9千654億円、3位が韓国4千247億円です。中国人観光客は、買物だけでも9千365億円も消費しているのです。
2019年訪日外国人旅行消費額

※国土交通省観光局資料より
そんな中で、中国経済が発展して消費のトレンドが変わっていることは、日本の観光にとっても不安材料です。日本製品に対する魅力が薄れていくだけでなく、日本の食べ物や観光地に対しても同様に魅力を失っていく懸念があります。ましてや、”アジア通貨危機”に見舞われたら観光立国どころではなくなるでしょう。
一方で、円安で益々日本が「安い国」になったことにより、不動産や企業が中国資本に買い漁られている、という現実があります。数年前に、千代田区などの都心の一等地の高級マンションが中国人に買われており、特に角部屋などの「いい部屋」を買っているのは中国人ばかり、という話をしましたが、その傾向は益々強くなっているのです。現在、マンション価格がバブル期を凌ぐほど高騰しているのも、日本人ではなく中国人が作った市況なのです。
安い国ニッポン。その恩恵に浴しているのは、中国をはじめとする外国資本で、肝心な日本人は給与は上がらない上に逆に物価高で苦しんでいるあり様です。そのために、手元の物を質入れするみたいに、日本の資産を外国資本に売り渡しているのです。”アジア通貨危機”も、中国にとっては絶好のチャンスと映るでしょう。
とは言え、(何度も言うように)日本はもはや観光しかすがるものがないのです。何とも心許ない話ですが、とにかく、みんなで揉み手してペコペコ頭を下げるしかないのです。神社で米つきばったみたいに三拝している日本人を見て、白人の若いカップルが手を叩いて笑っていましたが、いくら笑われても頭をペコペコ下げるしかないのです。
安倍元首相は、「愛国」を隠れ蓑に、旧統一教会に「国を売った」だけでなく、アベノミクスによって日本を八方塞がりの「安い国」にしてしまったのです。これでは「国賊」と言われても仕方ないでしょう。なのに、どうして「安倍さん、ありがとう」なのか。しかも、よりによって旧統一教会と一緒に、そう合唱しているのですから何をか言わんやでしょう。
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Yahoo!ニュースのコメントで日本の貧国を考えた
まず19世紀の最初の100年は石炭のイギリス(大英帝国)、次の100年は石油のアメリカでした。そして、現代はレアメタルの中国に覇権が移りつつある、と言うのです。新型コロナウイルスによるパンデミックがそれを(覇権の移譲)をいっそう加速させる役割を果たした、と。しかも、国家間はしばらく「対立」が続くものの、覇権の移譲は、本質的には「対立」ではなく資本の「コンセンサス」だと言います。
対米従属が骨の髄まで沁み込んだ日本人にとっては、背筋に冷たいものが走るような話かもしれません。
その中国ですが、日本などと同じように、1995年代後半から2009年生まれのZ世代が消費の中心になりつつあり、既にZ世代は約2億8千万人おり、全人口の約18.1%を占めるまでになっているそうです。
先日もTBSのNews23でやっていましたが、この世代の特徴は、前の世代のような「海外ブランドを仰ぎ見るような感覚」(人民網日本語版)がないことだそうです。むしろ、「国潮」(国産品)を着ることがトレンドにさえなっている、と言うのです。
そう言うと、日本人は、中国政府の政策で愛国主義が台頭して、それが消費動向にも反映されているからだろう、というような見方をする人間が多いのですが、必ずしもそうではなく、外国製品に引けを取らないほど中国製品のクオリティが上がっている、という理由が大きいのです。若者たちは、「国内ブランドのデザインには生まれ変わったような感じがあり、モデルの更新ペースも速い」(同)という印象を持っているそうです。
私も前にハイアールの話をしましたが、もう中華製の安かろう悪かろうの時代は終わったのです。ましてハイテク製品の分野では中国はトップを走っています。だから、西側の国はあんなにファーウェイを怖れたのでしょう。
昨日もテレビ東京で、中国に出店していた飲食や小売などの企業が撤退するケースが多くなっており、やはり中国進出は「政治のリスクが大きすぎる」というようなニュースをやっていましたが、それは「政治のリスク」ではなく、「国潮」の台頭が要因と考えるべきでしょう。
来月11日から入国規制が全面解除になりますが、中国人観光客がホントに以前のように戻ってくるのか、楽観視はできないように思います。まして、かつてのような”爆買い”は期待できないのではないか。もちろん、円安が追い風であることはたしかですが、中国もどんどん豊かになっており、上で見たように消費のトレンドが大きく変わっているのです。
今年は日中国交正常化50周年だそうですが、アメリカの尻馬に乗って対中強硬策を取っても(それこそ「政治のリスク」を負っても)、泣きを見るのはどう考えても日本の方です。武士は食わねど高楊枝では国はやっていけないのです。
下の表のように、コロナ前の2019年の外国人観光客の地域別のシェアを見ると、アジアからの観光客が圧倒的に多く、全体の82.7%です。中でも東アジアが70.1%を占めています。テレビ東京「Youは何しに日本へ?」でインタビューするのは、何故か欧米豪の観光客ばかりですが、彼らは13.0%にすぎません。
国別のシェアを見ても、中国本土からの観光客が959.4万人で、東アジアの中で42.9%を占めています。香港を含めると53.1%になります。
2019年訪日外国人旅行者地域国別シェア

※国土交通省観光局資料より抜粋
次の消費額(つまり、経済効果)を見ると、中国人観光客の存在感がいっそう際立ちます。外国人観光客が日本で消費したお金の総額は4兆8千135億円ですが、国別では、1位が中国1兆7千704億円、2位が台湾9千654億円、3位が韓国4千247億円です。中国人観光客は、買物だけでも9千365億円も消費しているのです。
2019年訪日外国人旅行消費額

※国土交通省観光局資料より
そんな中で、中国経済が発展して消費のトレンドが変わっていることは、日本の観光にとっても不安材料です。日本製品に対する魅力が薄れていくだけでなく、日本の食べ物や観光地に対しても同様に魅力を失っていく懸念があります。ましてや、”アジア通貨危機”に見舞われたら観光立国どころではなくなるでしょう。
一方で、円安で益々日本が「安い国」になったことにより、不動産や企業が中国資本に買い漁られている、という現実があります。数年前に、千代田区などの都心の一等地の高級マンションが中国人に買われており、特に角部屋などの「いい部屋」を買っているのは中国人ばかり、という話をしましたが、その傾向は益々強くなっているのです。現在、マンション価格がバブル期を凌ぐほど高騰しているのも、日本人ではなく中国人が作った市況なのです。
安い国ニッポン。その恩恵に浴しているのは、中国をはじめとする外国資本で、肝心な日本人は給与は上がらない上に逆に物価高で苦しんでいるあり様です。そのために、手元の物を質入れするみたいに、日本の資産を外国資本に売り渡しているのです。”アジア通貨危機”も、中国にとっては絶好のチャンスと映るでしょう。
とは言え、(何度も言うように)日本はもはや観光しかすがるものがないのです。何とも心許ない話ですが、とにかく、みんなで揉み手してペコペコ頭を下げるしかないのです。神社で米つきばったみたいに三拝している日本人を見て、白人の若いカップルが手を叩いて笑っていましたが、いくら笑われても頭をペコペコ下げるしかないのです。
安倍元首相は、「愛国」を隠れ蓑に、旧統一教会に「国を売った」だけでなく、アベノミクスによって日本を八方塞がりの「安い国」にしてしまったのです。これでは「国賊」と言われても仕方ないでしょう。なのに、どうして「安倍さん、ありがとう」なのか。しかも、よりによって旧統一教会と一緒に、そう合唱しているのですから何をか言わんやでしょう。
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