テレビ局の中で旧統一教会の問題に消極的なのは、NHKとフジテレビとテレビ朝日と言われていました。フジテレビは論外ですが、NHKとテレビ朝日が消極的なのは、今なお故安倍晋三元首相に忖度しているからです。死してもなお、旧安倍派は自民党内では最大派閥であり、メディアに対する故安倍元首相の“威光”は、安倍応援団を通して未だに衰えてないのです。旧統一教会と政治家との関係の本家本元は安倍元首相ですが、それに触れることは、安倍元首相を冒涜することになるのです。

テレビ朝日の「モーニングショー」に有田芳生氏が出演したのは8月18日で、私もちょうど観ていましたが、その席で有田氏はオウム真理教の一連の事件のあと、警視庁が旧統一教会に対して強制捜査に入る準備をしていたけど、「政治の力」によってそれが潰されたという(例の)話をしたのでした。

ところがその日を境に、旧統一教会の問題に対する「モーニングショー」のスタンスが、あきらかに変化します。もちろん、有田氏は二度と呼ばれることはありませんでした。

リテラは、この件に関して、「上層部からの一方的な報道中止指示があった」からだ、と書いていました。

  まず、『モーニングショー』への圧力は、18日、有田芳生氏が発した「政治の力」発言がきっかけだった。この発言は、前述のように、Twitter上でも「政治の力」がトレンドワード入りするなど大きな話題になったが、すると、その日のうちに、統一教会の取材に動く現場スタッフに、プロデューサーから「上から指示があった、しばらく統一教会問題はやらない」とストップがかかったのだという。

   「トーンを落とす、とかそういうレベルではなく、一切やるな、ということだったようです。実際、『モーニングショー』の現場は、翌日も有田芳生氏に出演してもらうつもりでスケジュールをおさえ、特別取材班がいくつもネタを仕込んでいた。ところが、それをすべてナシにしろといわれ、統一教会とは何の関係もない話題に差し替え。有田氏にも『別の企画をやることになったので』と、急遽キャンセル連絡を入れさせられたらしい」(テレビ朝日関係者)

リテラ
テレビ朝日で統一教会報道がタブーに!  『モーニングショー』放送差し替え、ネット動画を削除!   圧力を囁かれる政治家の名前


出演がキャンセルされたことは、有田氏も認めています。

前も書きましたが、『ZAITEN』(10月号)の特集「大株主『朝日新聞』の制御不能  老衰する『テレビ朝日』の恍惚」によれば、テレビ朝日及び持ち株会社のテレビ朝日ホールディング双方の代表取締役会長を務める78歳の早河洋氏は、「誰が社長になっても同じ」と社内で言われるほどの「唯一無二の最高権力者」で、篠塚浩社長は「早河さんのAD」とヤユされているのだそうです。

2009年にテレビ朝日初の生え抜き社長になった早河氏は、5年後に会長兼CEOの地位を手に入れてからは、代々の社長に権力を移譲することなく、テレビ朝日の「絶対的な君主」としての地位を固めて行ったのでした。

早河氏が会長になってから、篠塚氏で社長は4人目ですが、その中で朝日新聞から「天下った」のは最初の吉田慎一氏だけで、あとはテレ朝のプロパーが内部昇格しているそうです。朝日新聞はテレビ朝日の30%強の株を握っていますが、早河氏は完全に朝日新聞のコントロールから脱するのに成功したと言えるでしょう。

もっとも朝日新聞も、テレ朝にかまっている余裕はないのです。会社はじまって以来の大リストラが行われている真っ最中だからです。朝日は、全国紙で最多の4100人を超える社員を抱えていますが、9月から11月にかけて45歳以上の社員を対象に「200人以上」の希望退職者を募っているのです。昨年の1月に110名が早期退職しており、今回の200名と合わせると300名の社員がリストラされることになります。

早河会長の秘書だった女性が人事局長に大抜擢されてから、”不適材不適所”のトンチンカンな人事が横行しているという話がありますが、それが関係しているのかどうか、テレ朝では社員の不祥事も続出しているそうです。

今年の2月には、セールスプロモーション局ソリューション推進部長の職にある人間が、あろうことか詐欺容疑で大阪府警に逮捕され、同時に「スーパーJチャンネル」のデスクも同じ容疑で逮捕されるという不祥事がありました。彼らは、大阪市中央区のホームページ制作会社の関係者4人と共謀して、「IT導入補助金」を不正受給した容疑がかけられているのです。

しかし、『ZAITEN』によれば、件の部長は、記事の執筆時点でも処分されておらず、有給休暇を使うなどして休職扱いになっているのだとか。元部長が8月で満50歳になったので、このまま「依頼退職」するのではないかという噂が流れているそうです。そのあたりのいきさつについて、『ZAITEN』は次のように書いていました。

(略)というのも、テレ朝では、50歳の誕生月以降のどのタイミングでも退職する際に申請すれば、「生活設計援助制度」が使えるのだ。この制度は60歳の誕生月まで毎月34万円が支給されるもの。50歳の誕生月で退職した場合、10年間あるので、約4000万円。これとは別に退職金も支払われる。
(『ZAITEN』10月号・上記特集より)


『ZAITEN』は、元部長は「事程左様に会社側が“配慮”をしなければならない存在ということなのか」と書いていました。

「早河王国」になって、テレ朝はエンタメ路線に舵を切り、報道部門が弱体化していると言われます。「ニュースを扱う資質に欠けるような人物」が報道局に送り込まれているという指摘さえあるそうです。上記の「スーパーJチャンネル」のデスクの逮捕だけでなく、会長の覚えめでたく役人待遇のエグゼクティブアナウンサーに昇進した木下容子アナの冠番組「木下容子ワイドスクランブル」でも、昨年、ヤラセが行われていたことが内部告発で発覚しました。

玉川徹氏を晒し者にして針のムシロに座らせるようなやり方も、早河会長や篠塚社長が安倍元首相と会食をするなど安倍元首相に近い存在であったということや、同局の放送番組審議会の委員長が、安倍応援団として知られる見城徹幻冬舎代表取締役社長が就いていることなどが背景にあるのではないかと言われていますが、さもありなんと思いました。


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