Yahoo!ニュースにも転載されていましたが、「bizSPA!フレッシュ」に、下記のような記事が掲載されていました。

bizSPA!フレッシュ
週刊SPA!編集部
生魚の異臭が…東京屈指の“高級住宅街”で地上げトラブル「バブル期並みの悪質さ」

タイトルにもあるように、何だかバブルの頃を彷彿をするような話ですが、たしかに都心は至るところに地上げの跡があり、バブル時代に戻ったかのような光景も多く見られます。

大阪は東京ほどではないみたいですが、東京の都心では中古マンションも高止まりした状態が続いています。東京五輪が終わったら不動産バブルが弾けると言われていましたが、そうはなりませんでした。少なくとも価格面では「堅調」、それも「高止まり」の傾向さえあるのです。

もっとも、これは東京の都心や大阪の郊外の一部に限った話で、地方では価格は下降傾向にあると言われています。そのため、地方と東京・大阪の都市部の不動産価格がいっそう乖離しているのでした。

どうして都心の不動産価格がバルブ期並みに高騰しているのか。ひとつは、言うまでも金融緩和、それも「異次元」の金融緩和の影響です。「異次元」の金融緩和によって、東京都心部の駅前はどこも大規模な再開発が行われています。それは、バブル期もなかったような大掛かりなもので、渋谷の駅前が100年に一度の再開発と言われていますが、決してオーバーとは言えないほどです。しかも、100年に一度のような大規模開発は渋谷だけではないのです。

私は、横浜市の東急東横線沿線の街に10数年住んでいますが、引っ越してきた当初、駅の周辺の路地の奥には、昔ながらの古いアパートが点在していました。また、駅から少し離れると畑も残っていましたし、幹線道路沿いには、地元の小さな会社や商店などがありました。川魚問屋なんていうのもありました。さらに、このあたりは交通の便もいいので、大手企業の社宅や独身寮なども多くありました。

しかし、5~6年前くらいからことごとく壊されて、その跡地の多くにはマンションが建っています。しばらくぶりに前を通ると、風景が一変しているので驚くことがよくあります。

要するに、「異次元」の金融緩和で不動産業界にお札がばら撒かれているからでしょう。ただ、この30年給料が上がってないことを見てもわかるとおり、どんどん刷られたお札が一般庶民にまわって来ることはないのです。せいぜいが住宅ローンの金利が安くなり審査に通りやすくなるくらいです。

また、前に書いたように、日本には2000兆円という途方もない個人金融資産があります。その恩恵に浴する人たちとまったく縁もない人たちの間での格差も広がるばかりです。「マタイの法則」ではないですが、「富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる」のです。そういった格差社会の現実が、不動産価格の「高止まり」にも反映されているのです。

もうひとつ忘れてならないのは、円安です。これはずっと以前より言われていたことですが、日本の不動産が中国本土の富裕層やアジア各地の華僑たちによって投資目的で買い漁られている現実があります。まして、今のように急激な円安になったことにより、彼らの需要がいっそう増して、上記のようなバブル期と見まごうような地上げを招いているのでした。

マンションに縁もゆかりもないネトウヨが、中国は遅れた国、三流国みたいに言っている間に、金満生活を謳歌する中国人の求めに応じて日本の不動産屋がなりふり構わず地上げに狂奔するようになっているのです。しかも、その資金をアベノミクスの名のもと、日本の金融当局が提供しているのです。

記事では、地上げの直接の要因として次のような指摘がありました。

「本来なら立ち退き料として住宅なら賃料の6~18か月分、事務所や店舗なら60~240か月分ほどの補塡を行い、退去期限は立ち退きに合意してから3か月~1年が一般的です。所有権が移ってまだ2か月余りでこの事態とは、悪質さを際立たせます」

「本物件を購入したのは、賃借人を退去させてマンションなどの用地としてデベロッパーに売却して利益を得るのが目的と思われます。土地建物の取得の際に3億円を金利4.5%で借り入れたとすると、彼らの支払う利息は月に100万円強。できるだけ早く立ち退きを完了させないと利益が毎日減少していくので、荒っぽくもなる。」

「賃借人は借地借家法で守られており、賃貸人がいくらお金を積んでも法的には立ち退かせることはできません。だから、悪質な行為に及ぶ例があるのです。賃借人を守るための借地借家法が、かえって地上げ屋を生むとはなんとも皮肉ですね」

(週刊SPA!編集部・生魚の異臭が…東京屈指の“高級住宅街”で地上げトラブル「バブル期並みの悪質さ」)


しかし、その背後に、“安い国ニッポン”の構図があることも忘れてはならないのです。

「異次元」の金融緩和で我が世の春を謳歌しているのは、不動産業界だけではありません。法人税が軽減されたことも相俟って、企業の内部留保は516兆4750億円(2021年)にものぼっているそうです。

法人税減税は、2011年38.54%だったのが、2013年に37%、そして、2018年には29.74%に引き下げられています。しかも、法人税をまともに納税しているのは、全企業の3割ほどにすぎないのだとか。納税するほど利益が出てないということもありますが、もうひとつは、大企業に対して、「資本金1億円以上の外形標準課税」や「受取配当金益金不算入制度」などのような減税や免税処置があるからです。「資本金1億円以上の外形標準課税」では、資本金1億円以上の大企業より、外形標準課税の対象外の資本金1億円以下の企業の方が、平均税率が高くなるという逆進性も生じており、大企業優遇は税制面から見てもあきらかなのです。

その一方で、消費税は、1988年12月に消費税法が成立して、1989年4月に3%でスタート、1997年4月5%、2014年4月8%、2018年10月10%と引き上げられています。

実際に1989年に消費税が導入されてから34年間で、国と地方を合わせた消費税の総額が476兆円であるのに対して、法人税の減税分が324兆円、所得税と住民税の減税が289兆円だったそうです。これが、消費税の増税分が法人税や所得税・住民税の減税の穴埋めに使われたのではないか、と言う根拠になっているのでした。

2012年、野田内閣が、民主党政権成立時の公約を反古にして、自民党と公明党の間で、「税と社会保障の一体改革」の三党合意を交わして、消費税増税に舵を切り、民主党政権は自滅したのですが、そのときに、野田内閣が提出して成立した法案は、消費税率を2014年に8%、15年に10%に引き上げるというものでした。

ちなみに、三党合意の社会保障の部分では、以下の3点が確認されていました。

①今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する。
②低所得高齢者・障害者等への福祉的な給付に係る法案は、消費税率引上げまでに成立させる。
③交付国債関連の規定は削除する。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途、政府が所要の法的措置を講ずる。

しかし、三党合意とは裏腹に、社会保障の改革はおろか、社会保障費の増大に対して、税収による補填は僅かな伸びしかなく、その多くは保険料の引き上げで賄っているのが現実です。

日本共産党の関連団体と言われる民商(民主商工会)のサイトによれば、消費税導入以前の1988年と消費税が10%になった2020年を比較すると、国民健康保険料(1人平均)は5万6372円から9万233円に引き上げられ、医療費は1割負担が3割負担に、国民年金の保険料(月額)は7700円が1万6610円と2倍以上も上がっているそうです。また、年金の支給開始年齢の繰り下げもはじまっています。所得に対するいわゆる「租税公課」の割合は、4割を優に超えており、重税国家と言っても過言ではないのです。

ちなみに、横浜市は、住民税と国民健康保険料がバカ高いので有名ですが(それと職員の給与が高いのでも有名)、私のような独り者のその日暮らしでも、介護保険料と合わせた国民健康保険料は(年間10回分割で)毎月3万円近く引き落とされています。引っ越してきた当初から比べたら、2倍どころか3倍くらい上がっています。だからと言って、もちろん収入が3倍上がっているわけではないのです。毎年春先に国民健康保険料と住民税の確定金額のお知らせが届くと、目の前が真っ白になって血の気が引くくらいです。

これでは、「税と社会保障の一体改革」という三党合意は何だったのかと言わざるを得ません。自公もひどいけど、旧民主党はそれに輪をかけて無責任でひどいのです。

さらに、ここにきて政府の税制調査会のメンバーから、消費税増税の声も漏れ伝わるようになっています。立憲民主党も、新しい執行部に野田政権で副総理を務めた岡田克也氏や財務相を務めた安住淳氏が入ったことで、(自民党に歩調を合わせて)増税路線の布陣を敷いたんじゃないかという指摘があります。また、前代表の枝野幸男氏が、2021年10月末の衆院選の公約で、新型コロナウイルス禍への対応として「時限的な5%への消費税減税」を掲げていたことを「間違いだった」「二度と減税は言わない」と発言したことが物議を醸しているのでした。

まったく懲りないというか、こういう野党が存在する限り、自公政権は左団扇でしょう。そして、日本はとどまるところを知らず安い国として凋落し食い散らかされるのです。ましてや、国防費の増大や敵基地先制攻撃など、片腹痛いと言わねばなりません。そういう妄想と現実をはき違えたオタクのような発想も、国の経済を疲弊させ、さらに凋落を加速させるだけでしょう。

追記:(11/09)
元朝日の記者の鮫島浩氏は、8日、自身のYouTubeチャンネルで、「野田佳彦首班で大連立!宏池会と立憲民主党を財務省がつなぐ『消費税増税内閣』急浮上!!」という動画を上げていました(下記参照)。上で見たように、野田佳彦は旧民主党政権の獅子身中の虫だったのですが、松下政経塾出身の彼がとんでもないヌエ、食わせものであることは今さら論を俟ちません。3年間選挙がないことをチャンスとばかりに、与野党一致で増税に突き進むシナリオが水面下で進んでいると言うのです。もし事実なら、まさに立憲民主党の正体見たり枯れ尾花みたいな話でしょう。今まで「立憲民主党が野党第一党である不幸」をくり返し言って来ましたが、もういい加減、引導を渡すしかないのです。

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