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イーロン・マスクに440億ドル(約6兆5千億円)で買収されたTwitter社では、世界の従業員7500人の半分にあたる3700人に解雇が通告されたとして、大きなニュースになっています。

イーロン・マスクによれば、Twitter社は一日あたり約400万ドル(約5億9千万円)の赤字だそうです。

もちろん、アメリカのレイオフと日本のリストラを同列に論じることはできませんが、いづれにしても大ナタを振るったことはたしかでしょう。

Twitterが世界で7500人しか従業員がいなかったということも驚きでした。あれだけ世界中でサービスを展開していながら、僅かこれだけの従業員しかいなかったのです。しかも、イーロン・マスクによれば、半分は余剰人員だったということになります。

イーロン・マスクが言うように、一日に約400万ドルの赤字を垂れ流していたことが事実であれば、Twitter社の株主たちがイーロン・マスクに訴訟してまで買収を求めた理由が、今になればわかるのでした。しかも、売上げの大半は広告費で、広告頼りの危うい状態から抜け出せなかったのです。

ここに来て、ネット広告の市場が縮小しており、プラットホーマーはどこも四苦八苦しています。FacebookやInstagramを傘下におさめるメタも、今週中にも数千人規模に上る大規模解雇を始める予定だというニュースがありました。(追記:11月9日、メタは、全従業員の約13%にあたる1万1千人超を削減すると発表しました)

ネットの覇者であるGoogleも例外ではありません。Googleも広告に依存した体質から未だに脱皮できてないのです。Googleの持ち株会社のAlphabetは、10月25日に2022年第3四半期(2022年7月~9月)の決算を発表したのですが、それによれば、売上高が前年同期比6%増の690億9200万ドルだったにもかかわらず、純利益は27%減の139億1000万ドルと大幅な減益でした。中でもYouTubeの広告収入が2%減で、YouTube広告の売上高を開示するようになった2019年第4四半期以来初めての減収になったそうです。

子どもたちの「なりたい職業」の第1位はユーチューバーだそうですが、今後、ユーチューバーに対する広告費の分配も見直されるかもしれません。そのたびに「あこがれの職業」であるユーチューバーたちに「激震が走る」ことでしょう。

そもそも今回のTwitterの騒動を見てもわかるとおり、ユーチューバーという職業がいつまで存在できるかもわからないのです。デジタルの世界の10年は、もしかしたら従来の世界の50年にも、それ以上にも匹敵するかもしれません。時間の概念が異なると言ってもオーバーではないくらい、有為転変のスピードが速いのです。

IT化が進めば進むほど、雇用が削減されるのは理の当然です。IT化によって、どんな職種がなくなるか、どんな人たちが仕事を失うか、というような雑誌の特集をよく目にしますが、多くの人たちはそんな過酷な現実を強いられ、「労働力の流動化」なるバーゲンセールの商品台に乗せられて叩き売られるのです。岸田政権は、”成長分野”に「労働移動」するために「学び直し(リスキリング)」が必要だなどと、電通から吹き込まれたような借り物の用語を使って「新しい資本主義」の生き方を国民に説いていますが、日本のどこに”成長分野”があるというのでしょうか。岸田首相自身が所信表明演説で吐露したように、「新しい資本主義」と言ってもインバウンドの”爆買い”が頼りなのです。

さらに、Twitter社のレイオフから見えるものはそれだけではありません。社員が数千人の企業によって、「言論の自由」が担保されていたという、悪夢のような現実を私たちは改めて見せつけられたのです。

メディアが盛んに報じていますが、Twitterの「言論の自由」は、新しい経営者の手の平の上で弄ばれているのです。「言論の自由」はそんなものじゃない、「言論の自由」は守られるべきだ、とのたまう人たちもいますが、それはトンチンカンなお門違いな主張にしか見えません。

Twitterのサービスが開始された当初、Twitterで新しい社会運動がはじまるなどと言っていた左派リベラルも多くいました。一企業のCEOの匙加減でどうにでもなる「言論の自由」で社会運動もないでしょう。ITの時代に対して、労働者が為す術もないのと同じように、左派リベラルも為す術がないのです。

そもそも、140文字で何が表現できるというのでしょうか。「おまえの母さん、デベソ」と言い合っているようなものでしょう。デジタルネイティブの若者たちは、長い文章だとそれだけで拒否反応を示して、彼らの間では長い文章を書くこと自体が”害”みたいな風潮があるみたいですが、それで何を伝えられるというのでしょうか。丸山眞男が言う「タコツボ」とはちょっと意味合いが違いますが、彼らはタコツボの中で、最初からコミュニケーションを拒否しているようにしか思えません。

誰かの台詞ではないですが、革命はとどのつまり胃袋の問題なのです。大事なのは、右か左かではなく上か下かなのです。しつこいほどくり返しますが、現在いま、求められているのは”下”の政治です。”下”に依拠する政治なのです。「ツイッターデモ」も、元首相と同じように「やってる感」を出しているにすぎません。

日本は、先進国のふりどころか、そのうち「日本、凄い!」と自演乙することさえできなくなるでしょう。あれだけバカにしていた中国も、気が付いたら、”アジアの盟主”として、文字通り巨像のように私たちの前にそびえ立つまでになっていたのです。前も書きましたが、若者たちも中国発のファストファッション(SHEIN)に、「安い」「カッコいい」と言って群がるようになっています。そのうち”韓流”だけでなく、”華流”もブームになるでしょう。

とりとめのない話になりましたが、下記は2010年、Twitterが日本でサービスを開始してまだ間がないときに書いた記事です。ついでにご笑読いただければ幸いです。


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