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(2022年12月・奥多摩)


■予定調和


あのジェフ・ベックが亡くなったというニュースがありました。若い頃仰ぎ見ていた上の世代の人たちが次々と旅立っています。

ジェフ・ベックについて、音楽評論家の萩原健太氏が、朝日新聞のインタビュー記事の中で次のように語っていました。

朝日新聞デジタル
「ギターは歌う」 本気でそう思わせたジェフ・ベック 萩原健太さん

 そんな彼が革新的だったのは、音楽的におかしな音を平気で弾いちゃうこと。「ブロウ・バイ・ブロウ」でも、ビートルズの曲をカバーしていますが、コード進行から外れてしまう音に平気で行くんですよね。多分、「これがいけない」とかじゃなくて、「こういう風に歌いたい」っていう気持ちがすごく強いんだと思う。

 予定調和も嫌う。たどり着くべき正解なんていうのは元々なくて、1回演奏したら、次の演奏では違うことをしたい、という気持ちがすごく強い人だったんじゃないかな。不協和音も、彼にとってはたぶん全然不協和音ではなくて、「ここでこっちに行きたいよね」っていう気持ちが、ギターに伝わってそのまま音になって出てくる、みたいな感じだった。


そうなんです。昔、「予定調和」を嫌う時代があったのです。「予定調和」という言葉は”軽蔑語”のように使われていました。

でも、最近毒ついているように、ネットの時代になり、「予定調和」こそ正道、あるべき姿みたいな風潮が強くなっています。「不協和音」を激しく排斥しようとする、文字通り同調圧力が強くなっている感じです。

SNSは一見言いたいことを言う百家争鳴みたいに見えるけど、それはただのノイズでしかないのです。ノイズは、むしろ同調圧力を高めるための燃料のような感じでさえあります。

自分と反対の意見にどうしてあんなに感情的に反発するのか。しかも、それは「自分」の意見ではないのです。「自分たち」の意見にすぎないのです。何が何でも「予定調和」で終わらなければならないとでも言いたげです。萩原健太氏が言うように、何だか最初から「正解」が用意されているかのようです。

言うなれば、ジェフ・ベックはへそ曲がり、天邪鬼だったと言えるのかもしれません。それが彼の個性であり、彼の音楽性だったのです。ジェフ・ベックも今だったら、「へたくそ」「邪道」なんて言われたでしょう。

話は飛びますが、ウクライナ侵攻についても、メディアに流通しているのは「予定調和」の言葉ばかりです。それがあたかも真実であるかのようにです。私も何度も書いているように、防衛省付属の防衛研究所の研究員がしたり顔でメディアで戦況を解説していますが、それはもはや大本営発表と同じようなものでしょう。でも、誰も疑問を持たずに、いつの間にかウクライナは味方VSロシアは敵という戦時の言葉に動員されているのでした。

誰が戦争を欲しているのか。誰が世界大に戦争を拡大させようとしているのか。誰が私たちを戦争に巻き込もうとしているのか。それを「予定調和」の言葉でなく、もう一度自分たちの言葉で考えるべきでしょう。

と、今更言っても空しい気もしますが、そんな中で、次のようなツイートは「予定調和」の言葉に抗するものとして貴重な気がしました。

アジア記者クラブ(APC) (@2018_apc) · Twitter




2023.01.13 Fri l ウクライナ侵攻 l top ▲