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■高官たちの相次ぐ辞任


ロシアのウクライナ侵攻から1年が経ちますが、最近、ウクライナで政府の高官たちが相次いで辞任している、という報道がありました。

BBC NEWS JAPAN
ウクライナ政府高官が相次ぎ辞任 ゼレンスキー大統領、汚職対策に着手

記事によれば、下記の高官たちが辞任したそうです。

キリロ・ティモシェンコ大統領府副長官
ヴャチェスラフ・シャポヴァロフ国防副大臣
オレクシー・シモネンコ副検事総長
イワン・ルケリヤ地域開発・領土担当副大臣
ヴャチェスラフ・ネゴダ地域開発・領土担当副大臣
ヴィタリー・ムジチェンコ社会政策担当副大臣
ドニプロペトロウシク、ザポリッジャ、キーウ、スーミ、ヘルソンの5州の知事

記事にあるように、キリロ・ティモシェンコ大統領府副長官は大統領選のときにゼレンスキー陣営のキャンペーンに携わっていた、ゼレンスキー大統領の側近中の側近で、ロシア侵攻後はウクライナ政府のスポークスマンを務めていました。

この他に、オレクシイ・レズニコフ国防相にも疑惑の目が向けられている、と記事は書いていました。

■汚職認識指数


しかし、これは今にはじまったことではないのです。前も書きましたが、ロシア侵攻前から、ウクライナは名にし負う汚職国家として知られていました。

政府高官の汚職はその一端にすぎず、人身売買や違法薬物の製造なども以前より指摘されていたのです。昨年、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が、「薬物に関する年次報告書」で、ロシア侵攻によって、ウクライナ国内の「違法薬物の製造が拡大する恐れがあると警告した」というニュースも、このブログで取り上げました。

関連記事:
ウクライナ侵攻で薬物製造拡大の恐れ

これなども、「かわいそうなウクライナ」のイメージが裏切られるようなニュースと言えるでしょう。

ロシアは、政治や経済をマフィアが支配する「マフィア国家」だとよく言われていましたが、ウクライナも五十歩百歩なのです。ロシアやウクライナで言われる新興財閥オルガルヒというのは、マフィアのフロント企業のことです。

汚職・腐敗防止活動を行っている国際NGO団体のトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の「汚職認識指数」によれば、ウクライナは、180の国と地域の中で、2022年が116位、2021年が122位でした。

TIの「汚職認識指数」は、世界経済フォーラムの「年次報告書」でもその方法が採用されているくらい、信頼度が高いものです。

トランスペアレンシー・インターナショナル
汚職認識指数(2022年)

ちなみに、ロシアは、2022年が137位で、2021年が136位です。

今、世情を賑わせている広域強盗事件で、「ルフィ」と呼ばれる人物がフィリピンの入管施設の収容所からテレグラムを使って指示を出していたとして、あらためてフィリピンの収容所や刑務所の腐敗がクローズアップされていますが、そのフィリピンは、2022年がウクライナと同じ116位で、2021年はウクライナより上(良)の117位です。つまり、ウクライナはフィリピンと同じくらい腐敗した国なのです。

■武器の横流し疑惑


しかも、ウクライナの腐敗は、BBCの記事にあるような「役人が食料を高値で購入している」とか「ぜいたくな生活を送っている」とかいったレベルにとどまりません。

ウクライナに節操のない軍事支援を行うことのリスクは、かねてより指摘されていました。

ひとつは、武器の横流しです。時事通信も、次のような記事を書いていました。

JIJI.COM(時事通信)
国際支援の陰で汚職懸念 武器流用や着服の疑いも―有識者ら「監察機関設置を」・ウクライナ

支援が有効に機能してないのではないか、つまり、底に穴が空いたバケツに水を注いでいるようなものではないか、とずっと言われていました。

■ネオナチ


それからもうひとつ、ウクライナはアゾフ連隊のような民兵が跋扈するような、ネオナチが支配する国だったので、ヨーロッパ各地からネオナチの傭兵が多く参戦しており、彼らがウクライナでアメリカやヨーロッパの最新兵器の使用法を会得することも懸念されていました。私も下記の記事で書きましたが、そのことによって、ヨーロッパにネオナチの暴力が拡散する怖れが指摘されているのでした。

関連記事:
ウクライナに集結するネオナチと政治の「残忍化」

いつその暴力が自分たちに向かって来るかもしれないヨーロッパの国が、軍事支援に逡巡するのはむべなるかなと思いますが、しかし、結局、バイデンの”強硬策”に押し切られているのが現状です。でも、バイデンの”強硬策”とは、とどのつまり、自分の手は汚さずに戦争をけしかけて、今までと同じように覇権を維持しようとする、唯一の超大国の座を転落したアメリカの新たな世界戦略にすぎません。それは、“台湾危機”も同じです。

日本のメディアは、ずっとうわ言のように中国経済は崩壊すると言い続けて来ました。にもかかわらず、気が付いたら中国はアメリカの向こうを張る経済大国になっていたのです。今もまた、ロシアは瀕死状態にあり、ロシアが白旗を上げる日は近い、と熱に浮かされるように言い続けています。ホントにそうなのか。

政府がアメリカに隷属しているので、メディアも同じように隷属しているだけではないのか。クイズではないのですから、ウクライナかロシアかという二者択一がナンセンスなのではないか。そう思えてなりません。

ここからはくり返しになりますが、それにしても誰も停戦を言わない不思議を考えないわけにはいきません。ゼレンスキーは、奪われた領土を奪還するまで戦争はやめないと言っています。しかし、ウクライナの国民の3分の1は、ウクライナ語は話せずロシア語しか話せないのです。でも、2004年に行われた大統領選で親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ前首相が当選したことに端をした親欧州派によるオレンジ革命やそれに続く2014年のマイダン革命で台頭したウクライナ民族主義によって、ロシア語話者は弾圧されるようになったのでした。その先頭に立ったのがネオナチの民兵・アゾフ連隊(大隊)です。

さらには、アゾフ連隊のようなネオナチの台頭を招いた上に、親欧州派はネオナチと結託して、ロシア語話者や左翼運動家やLGBTへの弾圧をエスカレートしていったのでした。オレンジ革命やマイダン革命は、それがウクライナ人の「尊厳」だとして、西欧かロシアかの二者択一を掲げることで、ユーロマイダンの裏に隠された「民族浄化」を誤魔化したのでした。

奪われた領土を奪還するまで戦争はやめないというゼレンスキーの主張は、玉砕するまで戦うということです。そして、ゼレンスキーの玉砕戦をアメリカやヨーロッパが支援しているのです。戦争をやめさせようとはしないのです。間に入って調停しようという国がないのです。これこそがホントの意味でウクライナ(国民)の悲劇と言うべきでしょう。
2023.02.01 Wed l ウクライナ侵攻 l top ▲