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■バフムトの陥落
今日の夕方のテレビ東京のニュースは、いわゆる「ドンバスの戦い」の中で、最重要の攻防戦と言われるウクライナ東部の都市・バフムト(バフムート)において、バフムトを防衛するウクライナ軍をロシア軍が完全に包囲しており、バフムトの陥落が近づいていることを伝えていました。
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テレ東BIZ
ロシア軍近くバフムト包囲(2023年3月4日)
■誰が戦争を欲しているのか
こういったニュースを観ると、私たちは唐突感を抱かざるを得ません。というのも、私たちは、日頃、多大な犠牲を強いられているロシア軍には厭戦気分が蔓延し、敗北も近いと伝えられているからです。
たとえば、下記の記事などはその典型でしょう。
東洋経済ONLINE
プーチン激怒?ロシア軍と傭兵会社「内輪揉め」(2月25日)
日本のメディアが伝えていることはホントなのかという疑問を持たざるを得ないのです。そもそも核保有国のロシアに敗北なんてあるのかと思います。ロシアは国家存亡の危機にあると日本のメディアは書きますが、国家存亡の危機に陥ればロシアはためらうことなく核を使用するでしょう。そうなれば、国家存亡の危機どころか世界存亡の危機に陥るのです。核の時代というのは、そういうことなのです。勝者も敗者もないのです。
勝ったか負けたか、どっちが正しいかなんて、まったく意味がないのです。政治家は言わずもがなですが、メディアや専門家や左派リベラルの運動家や、そして国民も、そんな意味のない戦時の言葉でこの戦争を語っているだけです。
勝者も敗者もない戦争の先にあるのは破滅だけです。だからこそ、何が何でもやめさせなければならないのです。80歳のバイデンが主導する今のような武器援助を続けていけば、核を使用するまでロシアを追い込んでいくことにもなりかねないでしょう。
侵攻してほどなく、フランスのマクロン大統領の仲介で和平交渉が行われ、和平の気運も高まっていました。ところが、”ブチャの虐殺”が発覚したことで、ウクライナが態度を硬化させ、とん挫したと言われています。”ブチャの虐殺”に関してはいろんな説がありますが、何だかそこには和平したくない(させたくない)力がはたらいていたような気がしてなりません。誰が戦争を欲しているのかを考えることも必要でしょう。
中国が仲介に乗り出したことに対しても、日本のメディアでは、中国は「誠実な仲介者ではない」「習近平の平和イメージをふりまくためだ」「NATOの分断が狙いだ」などと、ゲスの勘繰りみたいな見方が大半ですが、しかし、中国以外はどこも和平に乗り出そうとしないのです。それどころか、欧米は武器の供与を際限もなくエスカレートするばかりなのです。
『Newsweek』(日本版)によれば、次期大統領選の共和党候補指名獲得レースに名乗りを上げたニッキー・ヘイリー元国連大使は、「大統領選に出馬する75歳以上の候補者に精神状態の確認検査を義務付けるべきだ」と言ったそうですが、笑えない冗談のように思いました。私たちだって、70歳になれば車の免許を更新する際に、認知機能のテストを受けなければならないのです。況や大統領においてをやでしょう。
■プロパガンダ
今日のテレ東のニュースは、次のように伝えていました。
(略)ウクライナ側は、バフムトに戦略的価値はほとんどないとしていますが、この都市をめぐる双方の莫大な損失が戦争の行方を左右する可能性があるという指摘も出ています。
でも、おととい(3月2日)のCNNのニュースは、こう伝えていました。
Yahoo!ニュース
CNN
ウクライナ軍、バフムートで「猛烈に抗戦」 ワグネルのトップが認める
(略)ウクライナのゼレンスキー大統領は、現時点でバフムート防衛が最大の課題になっていると強調。ロシア軍は同市周辺でじりじりと前進しているものの、ウクライナ軍は未だ退却しておらず、膠着(こうちゃく)状態に持ち込んでいると指摘した。
ゼレンスキーは、「バフムート防衛が最大の課題になっていると強調」していたのです。それが、戦況が不利になると、「バフムトに戦略的価値はほとんどない」と言い出しているのです。
戦争にプロパガンダが付きものであるのは、言うまでもありません。しかし、日本のメディアは、ウクライナのプロパガンダをプロパガンダとして伝えていません。あたかもニュース価値の高い真実のように伝えているのでした。そのため、私たちは、バフムト陥落のようなウクライナ不利のニュースに接すると唐突感を抱くことになるのでした。
ウクライナ戦争でもこのあり様なのですから、身近な”台湾危機”では、どれだけ日米政府のプロパガンダに踊らされているかわかったものではないでしょう。