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(イラストAC)


■WBCがトップニュース


WBCの準決勝の日本対メキシコ戦が、日本時間の今日(21日)、アメリカ・フロリダ州のローンデポ・パークで行われ、ロッテの佐々木朗希投手が先発ピッチャーに予定されているそうです。

テレビの悪ノリはエスカレートする一方で、報道番組でも、国会審議やウクライナ情勢やアメリカの”金融危機”や中ロ会談を押さえて、WBC関連のどうでもいいようなニュースがトップになっているのでした。

ウクライナ和平の仲介を買って出た中国の習近平主席は、昨日、3日間の予定でロシアを訪問しプーチン大統領と会談しました。初日の非公式会談で習主席は、「ロシアとともに『本当の多国間主義を堅持し、世界の多極化と国際関係の民主化を推進」すると強調」(産経新聞より)したそうです。

「民主化」は悪い冗談ですが、これは、アメリカの没落に伴い世界が多極化する中で、中国がその間隙をぬって300年振りに覇権国家として世界史の中心に復帰するという、歴史の転換を象徴する発言と言っていいものです。

既に中国とロシアは、BRICSや上海機構などを使ってドルの基軸体制から脱却した、新たな(多極型の)通貨体制の構築を進めていますが、欧米の金融危機が顕在化したことで、それがいっそう加速されているのでした。世界の多極化は、私のような人間でさえ2008年のリーマンショックのときから言い続けていることです。アメリカが唯一の超大国の座から転落して、世界は間違いなく多極化する。アジアの盟主は中国になる。面従腹背であれ何であれ(好きか嫌いかなど関係なく)、”東アジア経済共同体”のような協調路線に転換しない限り、日本は生き残れないと。手前味噌ですが、それがいっそう鮮明になっているのでした。

歴史は大きく変わろうとしているのです。中国によるウクライナ和平の仲介もその脈絡で考えるべきなのです。しかし、日本のメディアでは、それよりも東松山のヌーバー・フィーバーの方が優先されるのでした。

■70歳以上に際立つ人気


そんな中で、やっぱりと思ったのが下記の記事でした。

Yahoo!ニュース(個人)
侍ジャパンに岩手県と高齢者が大フィーバー!~大谷翔平・佐々木朗希・村上宗隆らの活躍に熱視線!~

次世代メディア研究所代表でメディアアナリストの鈴木祐司氏は、日本戦の過去5試合の視聴率が軒並み40%を超えたというビデオリサーチの「世帯視聴率」とともに、次のような「興味深いデータ」も取り上げていました。

特定層別視聴率を測定するスイッチメディアや、都道府県だけでなく市町村別視聴率を割り出しているインテージによれば、70歳以上の高齢者が格別に盛り上がっており、地域では岩手県の視聴率が傑出している。


具体的に世代別の視聴率を見ると、まずZ世代(25歳以下)は、「10%に届かないほど低」く、「この世代では、野球に興味のある人がかなり少ないようだ」と書いていました。また、コア層(13~49歳)も、「個人全体と比べると5%以上低い」そうです。

つまり、WBC人気を支えているのは、50歳以上の中高年なのです。中でも、70歳以上が際立って多いのだと。

50~60代は個人全体より7~8%高い。そして70歳以上に至っては個人全体の倍近い。やはり野球は高齢者に支えられているスポーツだ。



WBC日本戦の特定層別視聴率
(上記記事より)


地域別でも、東京は低くて、大谷や佐々木朗希の地元を中心にして、地方の方が圧倒的に高いのだそうです。

関東地区も比較的低く、熊本県をはじめとする南九州が高い。そして北海道や岩手県を頂点に、東北が高くなった。


メディアが言うように、日本中が歓喜に沸いているわけではないのです。昼間のワイドショーでも、電波芸者コメンテーターたちが見ていて恥ずかしくなるような俄かファンぶりをさらけ出しはしゃぎまくっていますが、当然ながらそんな光景を醒めた目で見ている人たちも多いのです。

でも、今の翼賛的な報道の下では、そう言うと、侍ニッポンに水をかけるとんでもない暴言だとして、非国民扱いされかねない雰囲気です。90年前だったら、鉈や斧で襲われたかもしれません。

ヤフコメもWBCでフィーバー(笑)していますが、あの世界の一大事みたいなコメントを投稿しているのも、野球ファンのおっさんたちなのかもしれません。ヤフコメにヘイトな書き込みをしているのは、ネトウヨ化した中高年が多いと言われていますが、合点がいったように思いました。

Yahoo!のトップページに、「韓国が日本に負けて屈辱を味わっている、ざまあ」みたいな記事が多いのも、ヤフコメのコアな層である中高年をさらに煽るために、ネットの守銭奴が意図的に掲載しているのかもしれません。

■テレビ局の切羽詰まった事情


今や野球は、(過去の遺物とは言わないけど)中高年に愛される昔のスポーツなのです。若者のテレビ離れが言われて久しいですが、地上波の視聴者も今は中高年がメインで、中高年向けのコンテンツが必須と言われています。かつての「テレビっ子」がもう中高年のおっさんになったわけですが、それは、プロ野球が国民的人気を博した、”野球の黄金時代”とちょうど重なっているのでした。

そう考えると、WBCをここぞとばかりに(まるで戦争報道のように)煽りに煽りまくって熱狂を演出する、テレビ局の切羽詰まった事情もわからないでもないのです。ただ、「WBC1」(下記の関連記事参照)に足元を見られて放映権料が高騰しているため、40%以上の高視聴率を叩き出しても営業的には赤字なのだそうで、次回の中継はないのではないか(無理ではないか)と言われているのでした。

もっとも、国際大会と言っても、営利を目的とする会社が主催する(サッカーの)カップ戦を真似た興行にすぎないので、次回開催されるかどうか不透明だという声があるくらいです。そもそも各国のリーグ戦が始まる前に「世界一」を決めるというのはお笑いでしかなく、言うなれば、選手たちは、キャンプの合間に、MLBと選手会が共同で作った会社が主催する資金集めのイベントに駆り出されているようなものです。それで、「いざ決戦へ」「世界一奪還」「歴史を塗り替える」などと言われても、鼻白むしかないのです。

と言っても、今のご時世では、それってあなたの意見、感想ですよね、と言われるのがオチなのでしょう。


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2023.03.21 Tue l 芸能・スポーツ l top ▲