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■声明に批判的な質問


昨日(5日)、学者やジャーナリストが記者会見して、「ロシアによるウクライナ侵攻に対して日本が停戦交渉の仲裁国となるよう求める声明を発表」したそうです。声明の中で、日本政府に対して、5月に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に際して停戦交渉を呼びかけるよう訴え」のだとか(下記記事より)。

朝日新聞デジタル
ウクライナ侵攻、政府に仲裁求め学者ら声明 報道陣から批判的質問も

 声明は学者ら約30人が連名で発表。現状では「核兵器使用や原発をめぐる戦闘の恐れ」があると指摘し、「戦争が欧州の外に拡大することは断固防がねばならない」と訴えた。ロシアとウクライナは即時停戦の協議を再開すべきだと訴え、日本政府が中国、インドとともに交渉の仲裁国となるよう求めている。
(上記事より)


ところが、会見の場で、「ウクライナで現地取材した記者らから、『ロシア寄りの提案ではないか』などと批判的な質問」が出たそうです。

それに対して、和田春樹・東京大名誉教授は、「『ロシアと米国が核兵器を持って対峙(たいじ)する世界で、ロシアをたたきつぶして降伏させることはあり得ない。核戦争になるような事態は止めなきゃいけない』と説明」したそうです。

件のジャーナリストが言っていることは、何度も言うように、敵か味方か、ロシアかウクライナか、勝ちか負けか、という二者択一を迫る”戦時の言葉”にすぎません。そんな思考停止した言葉で記事を書いているのかと思うと、おぞましささえ覚えてなりません。戦時中も「言論報国」のもと、メディアは戦争を礼賛して、“動員の思想”に奉仕しその先兵の役割を担ったのでした。そういった思考停止は、戦争中のように“戦争の狂気”を呼び起こすだけです。

声明を発表した30名の学者やジャーナリストたちは、同時にネット署名や新聞広告を出すためのクラウドファンディングもはじめたようで、相も変わらぬお友達サークルでの自己満なやり方にうんざりさせられますが、それはそれこれはこれです。

前の記事のくり返しになりますが、核保有国に敗北などあり得ないのです。それが核の時代の実相です。

■金網デスマッチ


一方で、ウクライナ戦争や台湾危機などきな臭い世相を反映して、自衛隊に入隊する人間が減っており、自衛隊は人材確保に苦慮しているという記事もありました。

自分たちが戦争の当事者になるのは嫌だけど、他国の戦争だったら、まるで金網デスマッチを応援する観客のように、「やれ、やれ、最後までやれ」と囃し立てて死闘(玉砕戦)を煽るのです。防衛増税は、言うなれば、そんな国民に向けた金網デスマッチの観戦料のようなものと言っていいのかもしれません。

如何にも日本的な光景とも言えますが、戦前と同じようにこういった空気に流されると、やがてそのツケが自分たちにまわってくるということがまるでわかってないのです。(前も書きましたが)戦争前、東条英機の自宅に「早く戦争をやれ!」「戦争が恐いのか」「卑怯者!」「非国民め!」というような手紙を段ボール箱に何箱も書いて寄越した国民たちは、やがて戦死者の半数以上が餓死と言われるような無謀な戦争の先頭に立たされ、生活も人生も戦争に翻弄されて塗炭の苦しみを味わうはめになったのでした。そして、敗戦になった途端、今度は自分たちは被害者だ、軍部に騙された、と言い始めたのです。

宮台真司は、「日本人は一夜にして天皇主義者から民主主義者に豹変する存在」「空っぽの日本」という三島由紀夫の言葉を引用して、そこにクズな(空虚な)日本人の精神性を指摘したのですが、あの頃から見事なほど何も変わってないのです。


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2023.04.06 Thu l ウクライナ侵攻 l top ▲