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(パブリックドメイン)


何だか同じことばかり書いているような気がしないでもありませんが、しかし、蜘蛛の糸を掴むように、拙い小さな”希望”であっても、ひとつひとつ丁寧に拾っていくしかないのです。日本中が”戦時の言葉”に覆われ、金網デスマッチを観戦しているような今の状況は、どう見ても異常と言うしかありません。

■ルラ大統領の和平案


昨日(8日)、ブラジルのルラ大統領が提案した和平案について、ウクライナが一蹴したというニュースがありました。

AFPBB NEWS
ウクライナ、ブラジル大統領の和平案一蹴 クリミア放棄せず

ブラジルは、2月の国連総会におけるロシア軍の即時撤退を要求する決議案では、BRICSの中では唯一賛成票を投じた国です。

ルラ大統領は左派の労働党出身ですが、ウクライナ戦争で中立を保っている国々が共同で、ウクライナ・ロシア双方に停戦を働きかけるべきだとして、そのための枠組み作りを模索しているのでした。今回の和平案はそのためのたたき台と言えるかもしれません。

記事にもあるように、ルラ大統領は、ウクライナに対して、「すべてを手に入れることはできない」「クリミア半島の領有権を放棄して和平交渉を開始すべき」」という現実的な着地点を提案したのです。

しかし、ウクライナ政府の反応は、次のようににべもないものだったようです。

 ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ(Oleg Nikolenko)報道官は、「ウクライナの領土を1センチでも譲ることを正当化する政治的・道徳的理由はない」「和平調停の試みはいかなるものであれ、主権尊重に基づき、ウクライナの領土保全を完全に回復するものでなければならない」とフェイスブック(Facebook)に投稿した。
(上記記事より)


ただ、これはウクライナ政府の公式な見解とは言い難いので、水面下で何らかの動きがあるかもしれません。そう願うばかりです。

■地に堕ちた欧米の民主主義


ルナ大統領は、来週、中国を訪問する予定で、そこでも和平案の枠組み作りを協議すると言われています。

また、フランスのマクロン大統領も訪中し、やはり中国に積極的に和平に乗り出すよう要請したという報道がありました。フランスは、侵攻当初、和平にひと役買ったのですが、ブチャの虐殺が起きたことで、ウクライナが態度を硬化して決裂したと言われています。そのため、ブチャの虐殺は和平を潰すためにでっちあげられたものではないかという陰謀論まで出ているのでした。

尚、中国の習近平国家主席と会談したマクロン大統領と欧州委員会のライエン委員長は、中国をサプライチェーンから排除するデカップリング(分離)に反対することで意見が一致したとの報道もありました。アメリカが主導する対中強硬策に冷水を浴びせた格好で、今の世界経済で中国を無視することはできないという本音が吐露されたと言えるでしょう。

このように好き嫌いは別にして、300年ぶりに覇権を手にする中国の存在感は増すばかりです。ウクライナ戦争でも、中国やブラジルなどBRICSの国が和平を主導する可能性さえあるのです。それは、今までの国際紛争ではまったく見られなかった光景です。

一方、欧米は武器供与をエスカレートして、戦争の拡大に手を貸すだけです。今や、欧米の民主主義の理念は完全に地に堕ちたと言ってよく、権威主義と民主主義の戦いだというバイデンの口吻など、片腹痛いと言わねばなりません。

ウクライナ戦争をめぐるこのような光景もまた、世界が多極化して政治や経済の軸が欧米からBRICSをはじめとする新興国に移っていくという、新しい世界の構図を示唆していると言えるでしょう。

もとより、(何度も言いますが)核の時代の戦争では勝者も敗者もないのです。核保有国が敗者になるということは、核戦争で世界が破滅することを意味するのです。それはオーバーな話でも何でもないのです。

ゼレンスキーが唱える、領土を1センチでも譲ることができないという徹底抗戦路線は、ウクライナにとっての玉砕戦であるだけでなく、世界の最終戦争をも招来しかねない危険なものです。ゼレンスキーの要求どおり武器を供与し続ければ、プーチンは間違いなく核を使うでしょう。それでも「ロシアが悪い」で済ませるつもりなのかと言いたいのです。核戦争には、敵も味方も、善も悪も関係ないのです。

もちろん、裏では私たちがうかがい知れない丁々発止のやり取りが行われているはずなので、どこに本音があるのかわかりませんが、とにかくこれ以上犠牲を増やさないためにも、誰でもいいから和平を仲介することが切望されるのでした。

そう考えると、今の欧米はまったく当てになりません。欧米は戦争の当事者であっても、和平を仲介する当事者ではありません。左派リベラル界隈には、平和憲法を持つ日本が仲介の役割を担うべきだと宣うおめでたい人間がいますが、それも悪い冗談です。

仮に中国やBRICS主導で和平が実現すれば、何度も言いますが、世界がひっくり返ることになるでしょうし、世界地図は一瞬にして塗り替えられることになるでしょう。しかも、今の状況では、もうそれしか残された道はない感じなのです。
2023.04.09 Sun l ウクライナ侵攻 l top ▲