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ガーシーのXデーが近づく中、またガーシーが話題を提供してくれました。今回の八っつぁん&熊さんのかけあいのテーマは、ネット時代の詐欺師です。武田鉄矢が言う「ただの悪口」のオンパレードです。
■YouTubeは詐欺師だらけ
八 ガーシーがパスポートを紛失したんだって(笑)。
熊 パスポートの返納命令が4月13日、つまり明日なんだけど、返納しようと思って1週間探したけど見つからなかった、引っ越しで紛失したみたいだ、と弁明する動画をインスタライブで配信したそうだ。
八 パスポートの返納命令に従わない場合、旅券法違反で起訴されるので、それを逃れるためなのか。
熊 詐欺師のやることだから、何か裏がありそうな気がしないでもないけどな。UAEのゴールデンビザを持っているという話があるので、それが剥奪されない限り日本の警察は手が出せない。実際に令和3年度末の時点で国外に逃亡した被疑者は699人もいて、その中で日本に移送されたのは僅か28人だそうだ。
八 ガーシーやガーシーの周辺に限らず、ネット時代は詐欺師が大手を振ってのし歩く時代であるとも言えるな。
熊 昔の詐欺師は、人目に隠れてというか、こっそりと人を騙して金銭などを巻き上げていた。しかし、現代の詐欺師は、ネットを使って不特定多数を相手に堂々と金銭を巻き上げようとする。というか、巻き上げるという表現すら的確とは言えないような感じだ。その典型がYouTube。
八 配信料が詐欺師の食い扶持になっている。
熊 今や、YouTubeは詐欺師だらけと言っても過言ではない。
八 たしかに、弁が立つ、口がうまい人間にとって、これほどうってつけのメディアはない。みんな生き生きしているな。
熊 ネットの時代で、どこまでが詐欺でどこまでが詐欺でないか、そのグレーゾーンが益々曖昧になってきた。
八 いかがわしさもキャラになるしな。
熊 昔、「馬の小便水薬、鼻くそ丸めて萬金丹」という歌があったけど、あれは詐欺じゃないだろ? でも、今はホントに馬の小便を水薬と言ったり、鼻くそを丸めて萬金丹と言ったりしている。ネットだとそれが可能なんだよ。
八 YouTubeの動画を見せつけられると、疑うことより信じることが先に立つ。そして、ネットで真実を発見した気持になり、それをみんなに知らせなきゃと思う。大宅壮一は「一臆総白痴化」と言ったけど、その”テレビ信仰”の究極の姿がYouTubeとも言えるな。
熊 テレビとYouTubeを”対立概念”のように言う人間がいるけど、全然そうじゃない。ネットで話題になるのはテレビのネタばかりだ。大塚英志は「迎合」と言ったけど、持ちつ持たれつの関係だと言った方が正しいかもしれない。
八 YouTubeのいわゆる信者たちを見ても、芸能人のブログにお追従のコメントを投稿するファンと寸分も変わらないな。
熊 違うのは、ここで言う可視化だけ。疑うことを知らない人間、疑うだけの能力も見識もないような人間が、詐欺師を市民社会に引き入れて、詐欺師に市民権を与えた。つまり、詐欺師だけでなく、詐欺師を支える(ホントはカモにされているだけだけど)「バカと暇人」も可視化された。これがGoogleがWeb2.0で言っていた集合知、総表現社会がもたらした世も末のような光景だよ。
八 さらに詐欺師の口上を切り取って伝える既存メディアのコタツ記事が、「嘘を百万遍言えば真実になる」役割を果たした。
熊 ネットの時代には、詐欺師を培養し可視化する(お墨付けを与える)土壌があるんだよ。
■Googleの罪と警察の事なかれ主義
八 Google自身も2018年に、「Don't be evil」を行動規範から削除したしな。
熊 ネットの黎明期に、「ネットは悪意の塊である」と言った人がいるけど、文字通り、ネットの時代になり、evil=邪悪なものが大手を振ってまかり通るようになった。それはGoogleがネットを支配する過程と重なっている。Googleの罪は大きいよ。
八 ネットによって詐欺師が可視化、半合法化されたという話で言えば、昨日、カンボジアでも19名の「かけ子」が捕まったけど、闇バイトで「かけ子」を集め、テレグラムで指示する「特殊詐欺」や「強盗」の現代風なやり口も、ネット時代が生んだものだな。
熊 その巧妙且つ大胆な分業システムや、闇バイトで応募する人間たちの軽さや犯罪に至るハードルの低さをもたらしたのは、間違いなくネットだよ。しかも、それを構築したのがITに通暁したインテリやくざというのも現代的だな。
八 単にやくざのシノギに過ぎないのに、そう思わせないところはたしかに凄いな。
熊 しかも、警察組織にはびこる公務員特有の事なかれ主義を逆手に取っていることも忘れてはならない。
八 よく言われていることだけど、いわゆる下っ端ばかり捕まえて点数だけ稼ぐという警察の事なかれ主義だな。
熊 だから、組織の頂点には決して行き着かない。フィリピンのルフィ一味も今回のカンボジアグループもそうだけど、メディアは「資金の流れと組織の実態の解明を進める」とバカの一つ覚えのように言うけど、解明されたためしはない。と言うか、誰も解明されるとは思ってない。その方が警察にとっても都合がいい。所詮は公務員なので、数年したら他の部署に移るわけだから、その間下っ端を捕まえて点数を稼いでおけばいい。
八 前に破防法絡みで、公安調査庁にとっては、オウムの残党が存在する方が都合がいいという話があったけど、あれと同じだな。
熊 闇組織の方が警察より一枚も二枚も上手だよ。
八 闇バイトで集めた下っ端は、いくらでも取り換え可能な使い捨て。金を掘る人間より金を掘る道具を売る人間の方が儲かる、というネットの特徴がここでもよく表れているな。
■特殊詐欺はオワコン
熊 でも、もう特殊詐欺はオワコンだよ。システムがバレたし、高齢者は先が短い。金を持っているのは食い逃げ世代の高齢者だけ。新しく参入してくる次の世代の高齢者は金を持ってない。彼らの一番の問題は貧困だよ。
八 所詮は期間限定の犯罪だった。リゾートホテルを拠点にした理由もわかるな。
熊 実際にしのぎは次に移っている。海外を拠点にした特殊詐欺だけが大々的に報道されているけど、クレジットカードの不正利用やネットバンキングの不正送金の被害額は、特殊詐欺の比ではない。しかし、まったくと言っていいほど解明されてない。犯人は「中国人」ということになっているけど、半ば野放しのような状態だ。ときどき見よう見まねではじめたような、へまな留学生グループが捕まるだけ。
八 そのために、使うのにどんどんややこしくなり面倒くさくなって、ユーザーである俺たちの手間ばかりが増えるんだよ。
熊 犯罪はデジタル技術を使ってスマートだけど、対策はきわめてアナログという笑えない現実がある。
八 とは言え、あとに戻れないので、付け焼刃で屋上屋を架すしかないんだろうな。キャッシュレスの時代だとか言いながら、それをターゲットにした犯罪は巧妙化し増える一方。にもかかわらず、ユーザーは「被害を防ぐのはあなたたち自身ですよ」と言わんばかりにアナログな自己防衛策を押し付けられるだけ。
熊 そういった無力感だけが募るような現実が、さらに犯罪に至るハードルの低さをもたらしているとも言えるな。ガーシーやガーシー界隈に限った話ではなく、詐欺師がヒーローになるような時代だぜ。このような手段を問わない「世の中は金次第」というマネー信仰(言うなれば貨幣の物神性のオバケ現象)は、最近よく目にする(社会や国家が)「溶ける」という表現がぴったりだよ。
八 たしかに、これほど詐欺師がヒーローになり、衆人環視のもとで国家をコケにする行為を行うというのは前代未聞だな。トンマな「元赤軍派」がシンパシーを抱くほど、ネットがただのチキンでショボい詐欺師をここまで大きく見せるようになった。まったく、ネットは罪作りなもんだよ(笑)。