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■ガーシーの犯罪


逮捕されたガーシーのYouTubeでの収益は1億円だそうです。ほかに二次使用の切り抜き料の収入も数千万円あったと言われています。

それらのお金は、親族や本人、それに複数の別人の口座に送金されていたそうです。

ガーシーのチャンネルは、ガーシーひとりで運営されていたわけではないのです。言うなれば、「東谷義和のガーシーch【芸能界の裏側】」は、ガーシーの冠番組のようなものだったのです。もちろん、ネタもガーシーが持ち込んだのですが、しかし、そのネタを材料にして番組を企画・制作するのに別の人物たちも関わっていたのです。それらの人物の下には実際に実務に携わる人間たちもいたはずで、あの暴露チャンネルにはかなりの人数が関わっていたとみるのが常識でしょう。

今言われている「名誉棄損」「常習的脅迫」「威力業務妨害」「強要」という容疑に限っても、ガーシーだけでなくそれらの“共同制作者たち”に捜査の手が及んでもおかしくないのです。さらに、チャンネルの運営とは別に、ガーシーの周辺の人物たちもチャンネルに便乗して、利害関係のある特定の人物に関するネタを提供したり、ガーシーに“暴露”を依頼していたと言われており、そういった周辺の人物たちも事情聴取される可能性があるでしょう。

■YouTubeの建前と本音


YouTubeには様々な禁止事項や暴力や死や性に関してのNGワードがあるそうです。にもかかわらず、炎上系とか迷惑系と呼ばれる動画が制作され、多くの視聴者を集めているのでした。そして、彼らは、そういったゲスな動画で再生回数を稼ぎ、動画に貼り付けられた広告によって少なくない金額の配信料(広告費)を得ているのでした。

もちろん、動画に広告を貼り付けているのも、ユーチューバーに配信料(広告費)を分配しているのも、Googleです。

それどころか、最近では、「あなたは日本の歴史の真実を知っていますか?」というような陰謀論や、後背位でセックスをしているような女性の顔が映し出されて、「60歳でもビンビンです」というような強精剤の広告さえ目立つようになっているのでした。

Googleの建前と本音には、呆れるというよりもはや嗤うしかありません。さすがに、Googleも創業以来掲げていた「Don’t be evil(邪悪にならない)」という行動規範を2018年に削除したのですが、今やGoogle自身がevilな存在になっていると言ってもいいでしょう。

■ネット通販の黎明期


私がネット通販をはじめたのは2004年でした。Googleが創業(会社設立)したのが1998年で、日本にオフィスを開設したのが2001年ですから、その3年後のことでした。

2004年当時の日本のインターネットの検索エンジンは、YST(Yahoo! Search Technology)と呼ばれていたヤフーのシステムが圧倒的に強くて、Googleのシェアはまだ20~30%でした。YSTやGoogleのほかにマイクロソフトにも、今のBingの前身で、アメリカのinktomi(インクトミ)という検索エンジンを利用したMSNサーチという検索エンジンがありました。

YSTで上位に表示されるには、ヤフージャパンのディレクトリ型検索サービスである「Yahoo!カテゴリ」に登録されることが必須で、3万円だかを出して申請したことを覚えています。

関連記事:
Google ※2006年4月

2004年当時はまだネット通販の黎明期でした。先行者だったということもあり、YSTでもGoogleでも上位(つまり1ページ目)に掲載されて、最初から順調にスタートすることができました。もちろん、当時のブログでも書いていますが、ネットは容易に模倣できるので(それどころかフィッシングサイトさえ簡単にできてしまう)、すぐに似たようなサイトが雨後の筍のように出て来たことは言うまでもありません。

2010年にYSTの撤退に伴い、ヤフージャパンがGoogleのエンジンを採用したことで、日本におけるGoogleのシェアはいっきに80%以上になったのですが、それでもしばらくは上位掲載が続いていました。

ところが、Googleの寡占体制が確立されると、Googleのアロガントな体質が徐々に目立つようになってきたのです。つまり、現在、EUなどが問題にしている検索と広告を結び付けた(広告サイトを優遇するような)システムができていき、検索ページでも資本力のある大きな企業のサイトが上位に並ぶようになったのです。それにつれ、自社のサイトも目に見えて後退して行ったのでした。昔のGoogleの検索ページは、すっきりして見やすかったのですが、広告が目立つようになると、ひどく汚れて見にくくなっていきました。

上の記事でも書いているように、初期の頃は、私たちのような資本のない零細な業者でも、ネット上では大手の会社と対等に競争できたのです。それで“ウェブ民主主義”と呼ばれたりしていました。しかし、革命の理想はホンのつかの間で終わったのでした。

■ネットとリアル


何度もくり返しますが、ネットにおける「言論の自由」も、所詮はGAFAのようなプラットフォーマーが自社の利益と照合した上で、便宜的に保障しているにすぎないのです。プラットフォーマーなどと言うともっともらしく聞こえますが、要するに、彼らはリアル社会のインフラを使ってサーバーを運営しているアメリカの民間企業にすぎないのです。

ガーシーのような動画が可能だったのも、Googleから見れば、ハグのようなものだったのかもしれません。しかし、国家権力の要請によって、あのように簡単にBANされるのです。BANされればすべてはそれで終わりです。ガーシーと一緒にするなと怒られるかもしれませんが、それは「言論の自由」においても決して他人事とは言えないでしょう。

昔はビジネスでも、言論活動でも、ゲリラ的に行うことが可能でした。しかし、GAFAのようなプラットフォーマーが台頭すると、ネットの世界も整序され、リアル社会の権威や秩序がネットにも持ち込まれるようになり、その結果、ネットとリアルの境界が曖昧になったのでした。ネットとリアルを対立概念のように捉えて、ネットの優位性みたいな話がまことしやかに言挙げされていますが、もはやそんな時代でもないのです。

初期の頃のネットの”無料経済”を支えていた広告に依存するビジネスモデルも、視聴時間の競争が激しくなった現在では難しくなっていると言われます。広告に依存するビジネスモデルの代表格はGoogleですが、そのGoogleでさえYouTubeの広告の低迷に収益の足を引っ張られているのでした。

広告に依存するビジネスモデルに代わるのがサブスクですが、しかし、サブスクこそネットとリアルの垣根を越えた時間とお金の奪い合いなので、その収益化はさらに難しいと言えるでしょう。

去年あたりから似たようなリベラル系のYouTubeチャンネルが立て続けに登場していますが、しかし、扱うテーマも出演するコメンテーターも重複しており、傍目で見ても、それで収益化するのは至難の業だろうなと思います。

■ITと身体


山に登ったりすると、身体性(身体的なもの)によって私たちが規定されていることがよくわかります。私たちは、自分の身体を通して、世界との関係を築いていくのです。いくらチャットGTPがネットを席捲しても、そこには身体性(身体的なもの)はなく、世界を獲得することはできないのです。

マイナンバーカードのように、安易に個人情報を提供すれば、あとは五月雨式に様々な情報が紐付けられ、私たちの生活が国家の手によって丸裸にされることになるのですが、眼の前にぶら下げられた餌に一に二にもなく飛びつく人たちは、そんなことさえわかってないかのようです。便利さと引き換えに、中国式のデジタル監視社会が完成し、私たちは自分の個人情報で自分が縛られることになるのです。

中国の警察官が、3D眼鏡のようなものを装着して街頭に立っている動画を観たことがありますが、眼鏡は指名手配犯や危険人物の顔認証のデータと接続されており、目の前の通行人の中に該当する人物がいればヒットして反応するようになっているのでした。そういった光景も他人事ではなくなるのです。

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@ks1531471966より

これは、上記のツイッターから拾った画像ですが、このようにマイナンバーカードの導入は、欧米では管理社会化への懸念による国民の抵抗によって廃止されているのでした。一方、日本では、周回遅れのトップランナーのように、“中国化”がいっそう加速されているのです。

もっとも、マイナンバーカードは、個人情報保護法と社会保障と税の一体改革がベースになっており、その意味では旧民主党政権も無関係とは言えないのです。立憲民主党やその界隈の左派リベラルが、今になって善人ズラしているのにはいつものことながら呆れますが、ただよく聞けば、彼らは「拙速だ」と言っているだけで、マイナンバーそのものに反対しているわけではないのです。彼らは、欧米の市民のレベルにも達してないリベラルもどき、、、にすぎないのです。

でも、ちょっとクサい言い方をすれば、私たちの生き死にや人生の喜びや悲しみは、ITやデジタルやAIの便利さとは何の関係もないのです。そんなものがあろうがなかろうが、私たちは生老病死から解放されるわけではないし、貧困や疎外から解放されるわけでもないのです。そう考えることは、決して時代遅れでも情弱でもトンチンカンなことでもないのです。逆に、1件7500円で自分の個人情報を売り渡す、この国のマジョリティの人間たちを心底から嗤ってやればいいのです。
2023.06.08 Thu l 社会・メディア l top ▲