
(イラストAC)
■「世界難民の日」
6月20日は国連が定める「世界難民の日」で、それに合わせて東京スカイツリーは、特別に国連カラーの青色にラットアップされるそうです。これは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の駐日事務所が主催するライトアップイベントの一環で、スカイツリーのほか全国40ヶ所以上のランドマークが青色にライトアップされるということです。
また、「世界難民の日」に合わせたユニクロの「特別授業」で、女優の綾瀬はるかが、東京都武蔵野市の小学校にサプライズで登場したというニュースもありました。これは、ユニクロがUNHCRとタイアップして行っている、箪笥の肥やしになった服を回収して、難民たちに届けるという社会貢献活動の一環だそうです。
■異常な日本の難民認定率
先日、国会で成立した改正入管難民法で散々指摘されたように、日本の難民認定は外国に比べて非常に厳しく、2022年度に難民と認定されたのは202人です。2021年が74人でしたから2.7倍に増えたのですが、しかし、不認定とされた人は2022年では1万人を超えるそうで、認定率は2%以下の狭き門なのです。
ちなみに、2021年度の各国の認定数と認定率は以下のとおりです。これを見ると、日本の異常さが一目瞭然です。

※日本以外のデータは、以下のサイトから引用しました。
国際NGOワールド・ビジョン
難民認定者数と認定率の世界比較、受け入れ数ランキングや日本の現状
※日本のデータは、生活保護の捕捉率などと同じように、出入国管理庁が発表したおおまかな数字しかなく、上記のような比較データがありません。それで、出入国管理庁が発表した数字に基づいて当方で算出しました。
■難民は他人事
ユニクロの「特別授業」に見られるように、日本にとって難民は所詮他人事なのです。自分たちは難民を冷酷に追い返しながら、遠い国の難民には可哀そうと同情を寄せる。ここにも、日本人お得意の建前と本音が表れているのでした。
まるで現代版貴族の館のような33階建ての豪奢な横浜市庁舎も、UNHCRの呼びかけに応じて、6月20日には青色にライトアップされるそうですが、だったら山中竹春市長は、日本のお寒い難民認定の現実について、嫌味の一つくらい言えよと思います。
難民申請を審査する参与員が100人いる中で、一人で難民申請の25%を担当していた参与員がいたことが、先の入管難民法改正案の審議の過程であきらかになりましたが、その参与員にどうして審査が偏ったかと言えば、彼女が難民審査にことのほか厳しい姿勢を持っていたからです。その一方で、認定に積極的な参与員の元には、いっこうに審査がまわって来なかったそうです。
片端から(事務的に)申請を却下した彼女は、一方で、地雷除去の活動もしていて、「難民を助ける会」という国際NGO団体の名誉会長を務めていたという、驚くべき事実もあきらかになったのでした。もっとも、近くに来た難民は水をかけて追い返し、遠くの難民には可哀そうと施しを与える日本人のいやらしい心根を考えれば、それも別に不思議ではないのです。
そして、こういった建前と本音の両刀遣いの先に、あの「ニッポン凄い!」の自演乙に象徴される、「反日カルト」の旧統一教会と平気で手を組むような下劣な「愛国」主義があるのでしょう。
■知性より名誉
国連難民高等弁務官事務所と言えば、ご存知のように、緒方貞子さんが1991年から2000年まで10年間、第8代の難民高等弁務官を務めていましたが、そのお膝元がこのあり様なのです。
緒方貞子さん自身は、日本の難民認定の低さを批判していたようですが、ただ、日本では緒方貞子さんの難民高等弁務官という職も、名誉職のようなイメージで捉えられていたフシがありました。だから、日本の入管行政が変わることはなかったのです。
知性より名誉が優先されるのは、日本の公的な組織ではよくある話で、そうやって建前と本音が合理化されるのでしょう。さしずめ綾瀬はるかの「世界難民の日」の「特別授業」などはその最たるもので、そこには知性の欠片もないのです。彼女は、難民の何を知っているというのでしょうか。