
(public domain)
■クックパッドのリストラ
私はまったく利用しないので知らなかったのですが、クックパッドが6月に今年3度目となるリストラを発表したそうです。
2月に一部事業の停止に伴い46名の希望退職者を募集し、その翌月の3月には、海外レシピ事業からの撤退を発表して73名のリストラを断行したばかりで.した。ところが、6月には、さらに海外子会社を含むグループ全体で110人削減すると発表したのでした。
クックパットは、2022年12月期通期の連結決算では売上高が前年比9.2%減の90億8,600万円、営業損益も前年26億3,200万円から35億2,000万円の赤字拡大に陥っているのでした。
クックパッドの収益の柱は、サイトの広告とプレミア(有料)会員の会費ですが、そのプレミアム会員も2018年に200万人だったのが2022年には168万人に減少しているのだそうです。
要因としては、競合サイトの乱立や料理系ユーチューバーの台頭があると言われています。とりわけ、動画コンテンツに乗り遅れたことが大きいと指摘する声が多いのです。
■集合知の末路
しかし、私は、次のようなユーザーの声にいちばんの要因が示されているような気がしてなりません。
サイト利用者からの投稿によって掲載レシピ数を増やしてきたクックパッドだが、逆にレシピの数が増えすぎたために、利用者の間からはレシピのチョイスに迷ってしまうといった声が上がっていたようだ。
また同時に、レシピのクオリティも基本的には素人による投稿なだけに玉石混交、ぶっちゃけていえば“ゴミレシピ”と呼ばれるような、あまり役に立たないレシピが増えたにも関わらず、その状況を半ば放置したのも悪手だったとの指摘も。特に酷いケースだと、離乳食レシピにも関わらず、はちみつが入ったものも以前は多くあったようで、そのことが大いに叩かれたことも過去にはあった。
さらに、そういった“ゴミレシピ”が、普通に検索サイトなどでレシピを探している時に“サジェスト汚染”よろしく多く引っかかることも、クックパッドへの嫌厭に繋がったようで、そういった層は、食品メーカーや調味料メーカーなどが運営するレシピサイトなどに流れたようだ。
MONEY VOICE
クックパッド、今年3度目となるリストラ断行の異常事態。増殖する“ゴミレシピ”放置と動画対応への遅れが致命傷に?
つまり、ここに示されているのは、Googleがウェブ2.0で華々しく唱えた「集合知」の末路とも言うべきものです。
誰もがネットを利用するようになるにつれ、ネットが「常に水は低い方に流れる」ようになり、「集合知」と言っても玉石混交で、それを見分ける手間とリテラシーが求められるようになったのです。ネットを覆ったのは、「集合知」ならぬ「集合痴」だったのです。
動画に乗り遅れたという話も、YouTubeがアルファベット(Googleの持株会社)の収益の足を引っ張っていることに象徴されるように、タムパやコスパの風潮の中で、動画投稿も頭打ちになりつつあります。その意味では、クックパッドは二周遅れているとも言えるでしょう。
■ネットの錬金術の終わり
それどころか、検索さえ、チャットGTPのようなAIによるチャットボットに代わるのではないかと言われているのです。そうなれば、検索対象とダイレクトにつながるので、今のように検索エンジンで表示される、広告と検索がごっちゃになったような検索結果の候補リストなど、誰も見向きもしなくなるでしょう。
ネットを支配してきたGoogleが用済みになったら痛快ですが、それもあり得ない話ではないのです。
このように、クックパッドの苦境は、(スマホ以来の)大きな転換期を迎えたネットの今の状況を体現していると言っていいのかもしれません。それは、タダで集めた口コミ(ゴミ)に広告を付けて宝にするという、ネットの錬金術とも言うべき典型的なビジネスモデルが終わりつつあるということでもあります。そのビジネスモデルによって広告に依存したネットの”無料経済”が成り立っていたのですが、既に”無料経済”も遠い昔の話になっています。だからと言って、サブスクに移行するのも簡単ではなく、まるで雨後の筍のように乱立してお金と時間の取り合いをすれば、収益化のハードルが高くなるのは当然でしょう。
「先行者利益」という言葉がありますが、クックパットはネットの黎明期から事業を始めた「料理レシピのコミュニティウェブサイト」(Wikipediaより)の文字通り先行者だったのです。でも、わずか20年足らずで苦境に立たされているのです。