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(イラストAC)



■高齢者の就職難


前に70歳になってアルバイトを探しているけど、なかなか思うような仕事が見つからず苦労している知人の話を書きましたが、警備員の仕事をするようになったそうです。

世の中は未曽有の人手不足と言われていますが、そんな中でも高齢者はアルバイトを探すのさえ苦労しなければならないのです。

結局は、警備員か清掃のような昔から高齢者に割り当てられたような仕事しかないのです。しかも、賃金など労働条件は10年もそれ以上も前からまったく変わってないそうです。むしろ、正社員を対象した「働き方改革」の皺寄せが非正規に向けられている現実さえあると言われます。

要するに、高齢者を雇用する側も年金受給が前提なのです。だったら安くていいだろうという考えがあるのです。高齢者自身も、年金があるので安い賃金でも妥協してしまう、と言うか、妥協せざるを得ないのです。

折しも、Yahoo!ニュースに下記のような共同の記事が転載されていました。

Yahoo!ニュース
共同
高齢者の53%、就職できず リクルート調査、企業及び腰

 60~74歳の就職希望者のうち53.7%が、仕事探しをしても見つかっていなかったことがリクルートの調査で分かった。企業が特段の理由がないのに採用に及び腰になっていることが主な要因として浮かんだ。


60歳~74歳の就職発動状況
(記事より)

中でも年金だけでは生活できない高齢者にとって、就職難は深刻な問題だと言えるでしょう。仮に仕事が見つかっても「安い給料でこき使われるような」仕事しかないのです。知人が前に言っていたように、役所や社会福祉法人のような公共性が高い職場ほど、低賃金で搾取されるというひどい現実さえあるのです。そのため、生活費を稼ぐためにWワークを行なっている高齢者もいるそうです。

■警備員の仕事


警備にしても、大半は交通誘導のような仕事だそうです。たしかに、この酷暑の中、警備員の制服を着て道路に立っているのは高齢者が目立ちます。私の知っている警備会社の人間も、「あれは地獄ですよ」と言っていました。

知人は幸いにも施設警備の仕事を見つけることができたそうですが、夕方から翌朝までの夜勤を15日やっても手取りは13万円もいかないと言っていました。夜勤が15日だと、夜勤明けを除けば実質的な休みはゼロです。そのため、夜勤を減らして、24時間勤務を入れるのだとか。

彼が働いている職場は一人勤務で、3名でシフトを組んでいるそうですが、他の2人はいづれも低年金の”後期高齢者“で、70歳の彼は「若い」と言われているのだとか。久々に「若い」と言われて、自分でも若返ったような気持になったよと笑っていました。

仕事自体は、防災設備の監視と巡回だそうですが、しかし、設備に関してはズブの素人なので、異常を知らせる発報があった場合、対応できるのか不安だと言っていました。前からいる”後期高齢者”の2人からはまともな引継ぎもできてないと嘆いていました。

知人はインテリで文才もあるので、警備員になった顛末などをnoteに書いたそうですが、ほとんど「いいね」も付かず読まれないので、書くのをやめたと言っていました。

note自体が劣化する一方なので、読者の質の問題もある思いますが、もうひとつは、高齢者が警備員になるのは特段珍しくないということもあるのかもしれません。

知人は、警備員の仕事を始めてから何だか世間から疎外されているような気持を抱くことが多くなり、自分を卑下するようになったと言っていました。そういった心情を書き綴って貰いたいと思っていたので、noteの挫折は個人的には残念でした。

妙なプライドがあるからダメなんだという意見もありますが、しかし、人間がプライドを捨てたらお終いでしょう。つまり、警備員のような仕事は、プライドがあるからダメなんだと言うような、身も蓋もない殺伐とした世界でもあるのです。また、彼が働いている施設では、意地の悪いお局さんみたいな職員がいて、難癖ばかり付けてくるので嫌になるよと言っていました。その手の施設は、給与が安いので人材の面でも粗悪なところがあるのかもしれません。そんな中で、人のやさしさを失うことなく何を拠り所に生きていくか、という切実な問題もあるように思います。

別の知り合いの人間は、「給与が低くても仕事が楽だからという理由で妥協して就職すると、その程度の人間しかいなくて、低級な人間関係に苦労することになる」「給与が高いけど仕事のハードルも高い職場には、それなりの人間が集まっているので切磋琢磨することができ、社会人としてのスキルが上がる」と言っていましたが、若い人に聞かせてやりたい言葉だと思いました。

■関心外の世界


帰省や行楽のニュースが溢れるお盆休みの中で、知人のような高齢者たちは、今日も暗い警備室で24時間勤務に就いているのでしょう。しかし、世の中の多くの人たちは、そんな高齢者など視野にも入らないような日常の中で、休日を謳歌しているのでした。でも、その”特権”も今だけかもしれないのです。

そう言えば、私が若い頃に勤めた会社にも守衛のお爺さんがいて、夜遅く帰ったら、受付のところに座っていました。2人いましたので、一日交代で勤務していたのでしょう。会社には宿直室があり、同期の人間は、残業した際、その中で同じ課の女の子とキスをしたと言っていましたが、私は中に入ったことさえありませんでした。その宿直室で、守衛のお爺さんたちは仮眠をとっていたのでしょう。でも、”特権”を享受していた当時の私にはまったくの関心外で、誰が社屋の鍵を閉めているのかということさえ考えたこともなかったのです。


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