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(写真AC)



北原みのり氏のツイッター(今はXと言うのか?)を見ていたら、次のようなツイートがあり、思わず膝を叩きました。

私たちが日頃目にしている報道には、あきらかにメディアの印象操作があります。そして、それは言論統制とも言えるような情報管理へと収斂されていくのです。デモクラティック・ファシズムとは言い得て妙だとあらためて思います。

■中国からの「嫌がらせ電話」


たとえば、汚染水の海洋放出に関して、中国から日本の官庁などに抗議電話がかかってくることについて、日本のメディアはそれを「嫌がらせ電話」と書くのですが、そこには汚染水を「処理水」と書く日本のメディアの姿勢が如実に表れているように思います。こうやって汚染水の海洋放出が”嫌中憎韓”のナショナリズムと結びつけられていくのです。


■「頂き女子りりちゃん」の「パパ活マニュアル」


また、今、話題になっている「頂き女子りりちゃん」の「パパ活マニュアル」についても、次のようにツイートしていました。


「頂き女子りりちゃん」は、家族と折り合いが悪くて10代半ばで家を飛び出し、歌舞伎町で夜を明かすようになったそうです。そして、これもよくある話てすが、ホストに入れ上げ、その資金を稼ぐために性産業で働きはじめるのです。

今回、「詐欺ほう助」の容疑を科せられた「パパ活マニュアル」は、その体験で得たノウハウをまとめたものでしょう。「頂き女子りりちゃん」に1億円を注ぎ込んだオヤジもいたそうですから(しかも、そのオヤジは自分が騙されているという認識もなかったそうです)、その腕は相当なもので、「パパ活」、つまり、売春や疑似愛人稼業で金を稼ごうという少女たちにとっては、文字通り”活きた教科書”だったのかもしれません。

それは、学校や社会では教えてくれない、彼女たちの本音の(自前の)処世術とも言えるものです。

北原氏が書いているように、虫のいいオヤジからただ乗りされないために、金になるオヤジと金にならないオヤジを見分けるノウハウとも読めるような内容で、言うなれば、身一つで世の中の裏通りを渡り歩く彼女たちにとって、みずから身を守るためのマニュアルという側面もあるように思います。

それに、「パパ活マニュアル」が「詐欺ほう助」に当たるのなら、「パパ活」のオヤジたちは詐欺の被害者ということになります。極端に言えば、売春=女は加害者で、買春=男は被害者なのです。そんなバカなと思う人は多いでしょう。

「パパ活」のオヤジたちの大半は、学校の教師や官庁の職員や警察官やサラリーマンなど、私たちの身近にいるごく普通のオヤジたちです。

私もこのブログで何度も書いたことがありますが、発情したオヤジが街角で娘ほど歳が離れた少女に片端から声をかけている姿は、昔から渋谷などでもよく見られた、街の風物詩と言ったら叱られるかもしれませんが、そう言ってもおかしくないような光景でした。

私の知っている女子(と言っても既に30代後半の女性ですが)は、立教に通っていた頃、池袋の西口を歩いていると、スーツを着てネクタイをしたオヤジから「3万円でどう?」などとよく声をかけられたそうです。

若い女性たちの多くは、そうやって自分の肉体を男たちに(それもよりによって加齢臭が漂うイカれたオヤジたちに)値踏みされた経験を持っているのです。そして自分の若い肉体が、商品的な価値があるのだということを知るのです。まして、女子高生であれば、さらに何倍も付加価値が付くことを教えられるのでした。

同時に、偉そうに説教を垂れる学校の教師や官庁の職員や警察官やサラリーマンたちに(あるいは自分の父親に)、建前と本音があることも身をもって知ることになるのです。

マルクスは、みずからの肉体を通した労働力しか売るものを持たない人々を無産階級=プロレタリアートと呼んだのですが、それは、マルクスが説くよりもっとリアルでわかりやすい資本主義の現実と言えるでしょう。

■プラシーボ効果


さらに、北原みのり氏は、次のようなツイートもしていました。


顔の下半分に年齢が出ますよと言われ、マスクを取ったら「まあ」と驚かれるんじゃないかと恐怖を抱き、老け顔だと孫からも嫌われて暗い人生しか送れませんよと言われると、じゃあ若見え効果のあるクリームでも塗ろうか思うのでしょう。

もっとも、それは女性に限った話ではありません。

先日、高齢の男性が最近おしっこの回数が増え、特に夜間の頻尿に悩んでいるという話をしていました。それで、テレビで見た健康食品を買って飲みはじめたというのです。

私は、おしっこの回数が増えたのは前立腺肥大の可能性が高いので、泌尿器科に行ってフリバスやアボルブなどの薬を処方して貰った方が安くて早いですよと言ったのですが、しかし、彼は、自分が病気ではないと信じたい気持もあってか、どうしても広告のキャッチ―なコピーの方を信じて譲らないのでした。

変形膝関節症に関するCMも然りです。通販番組を席捲するあの膨大なCMには驚くばかりですが、潜在的な患者を含めると約3000万人もいるという変形膝関節症は、健康食品メーカーにとっても美味しい市場であることは間違いないでしょう。プラシーボ効果というのが、ホントにどれだけ心理的に効果があるのかわかりませんが、それはプラシーボ効果を狙った市場と言えないこともないのです。

■豚に真珠の日本のメディア


ラーメン屋の倒産が、前年同期の3.5倍に大幅に増えているというニュースがありました。そこには、「1000円の壁」があるのだそうです。つまり、価格を1000円にするとお客が「高い」と感じて、来客数が減少し売り上げが落ちるという法則が、ラーメン業界では通説になっているのだとか。でも、今の原材料費や水道光熱費の高騰の中で1000円以内に抑えると、利益を圧迫して立ち行かなくなるのです。ラーメン業界は、値上げするのも地獄、値上げしないのも地獄のジレンマに陥っているというわけです。

何故か誰も言わないけれど、今の物価高がスタグフレーションであり、資本主義の構造的な危機の表れであるのは明白なのです。それは、私たち自身の生活を見れば理解できる話でしょう。

でも、メディアは、ここに至っても、日本は海外に比べて物価が安いとか、経済界も大幅な賃上げの必要性を認めるようになっているとか、そんな気休めにもならない寝言みたいなことばかり言っているのです。

人手不足の問題についても、人手不足の業界が抱える低賃金・重労働の構造的な背景を見るのではなく、もっぱら少子高齢化が問題であるかのような記事でお茶を濁すだけです。

汚染水の海洋放出に関しても、原発推進の国際機関であるIAEA(国際原子力機関)のお墨付きを得たとして、一片の反対・疑問も許さないという徹底ぶりです。メディアお得意の両論併記さえ存在しないのです。

デブリ(炉心が溶融した核燃料)に触れた地下水も、冷却水と同じように海水で薄めれば問題ないという「子どもだまし」のような話が公然とまかりとおっているのです。しかも、少しでも異論をはさむと、被災住民を盾に「風評被害を振り撒くもの」「中国や韓国の反日論に与するもの」とされ排除されるのです。「汚染水」という言葉を使おうものなら、それだけで袋叩きに遭うのです。

挙句の果てには、中国では汚染水批判の反動で魚離れが起きて水産業者が苦境に陥っており、一方、日本の水産業界は”脱中国”の流れが着々と進んでいるなどと言って、負け惜しみなのか、「ざまあみろ」みたいな報道さえ出はじめる始末です。

ジャニー喜多川氏の性加害さえ報道しなかったヘタレメディアがどの口で言っているんだ、と言いたくなりますが、このようにいざとなれば挙国一致に翼賛化する日本のメディアにとって、「言論の自由」など所詮は豚に真珠にすぎないのです。


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