パレスチナ国旗



■圧倒的多数の休戦決議


27日、国連総会が、イスラエルとハマスに対して「人道的休戦」を求める決議案を圧倒的多数で採択した、というニュースがありました。

ロイター
国連、ガザの「人道的休戦」決議案採択 圧倒的多数で

決議案に法的拘束力はないものの、安保理が常任理事国の拒否権の乱発によって為す術もなく機能不全に陥る中で、国連として一定の姿勢を見せたと言えるでしょう。

決議案は、ヨルダンなどアラブ諸国が主導し、日本やイギリスなど45カ国が棄権、イスラエルと米国など14カ国が反対しましたが、アラブ諸国やロシア・中国・フランスなど3分の2の120カ国が賛成したということです。

これを見てもわかるとおり、世界は分断しているどころか、アメリカやイスラエルにNOを突き付ける国の方が圧倒的に多いのです。

■現代の狂気


しかし、イスラエルのエルダン国連大使は、「人道危機など起きていない。ハマスを壊滅して人質を救出する」と反発(東京新聞)したそうです。また、エルダン大使は、ガザの人道的危機を訴えている国連のアントニオ・グテーレス事務総長を「テロリストの行為を容認し正当化している」として辞任を求めたそうです。

あらためてシオニズムが”現代の狂気”であることを痛感せざるを得ません。

イスラエル軍は、ガザへの攻撃を強めており、27日現在でガザにおける死者は7,326人になったとパレスチナ保健省が発表しています。その中には、3,000人以上の子どもが含まれているそうです。一方、イスラエル側の死者は1,400人のままです(27日現在) これは今月7日のハマスによる越境攻撃で亡くなった人たちで、その後死者はほとんど出ていません。ただ今後の地上侵攻でハマスの反撃を受け、兵士に被害が出ることは当然あるでしょう。

既にガザへの通信が途絶えたという話もあり、イスラエル軍の「報復」に名を借りたガザの虐殺はエスカレートする一方です。

イスラエルは過去においても、モサドの暗殺組織が他国の主権を侵害して、イスラム組織の幹部を殺害したことがありますが、今回も既にハマスの幹部の何名かが殺害されています。

殺害された幹部たちの経歴を見ると、みんなガザのキャンプで生まれているのです。彼らは、生まれてきたときから迫害の運命とシオニズムに対する憎しみを背負っているのです。そして、そこには、イスラエル軍が無差別にガザの子どもたちを殺害する理由もあるように思います。

今回、イスラエルに殺害されたハマスの軍事部門のトップのムハンマド・デイフも、やはりガザのキャンプで生まれ、イスラム大学で物理学・化学・生物学を学んだインテリですが、2014年のイスラエル軍の空爆で、妻と生後7カ月だった息子と3歳の娘を亡くしているのでした。

言うまでもなく、シオニズムは、聖書の「聖なる山」「真実の町」である「シオンに帰ろう。エルサレムに住もう」という言葉を牽強付会に解釈した、ユダヤ教の教義を紐帯とするユダヤ人の建国運動ですが、その過程において、パレスチナ人が住んでいた200の村を焼き払い、抵抗するパレスチナ人を万単位と言われるほど殺害し、女性や子どもに対する誘拐や性犯罪や人身売買など暴虐の限りが尽くされたと言われています。そして、選ばれし我らが千年王国を建立せんとするメシア思想=”現代の狂気”は、ガザの惨状を見ればわかるように今なお続いているのです。

もちろん、ユダヤ人も2千年間流浪の民であったし、第二次世界大戦では600万人がナチスのホロコーストで犠牲になっています。しかし、人間というのはままならないもので、そういった受難の歴史がいっそう”狂気”を加速させた面もあるのではないかと思います。

ユヴァル・ノア・ハラリがただのシオニストにすぎなかったと言うのもそれゆえです。彼は、文字通りハンナ・アーレント(彼女もユダヤ人です)が言う「悪の凡庸さ」を演じているのです。こんな歴史の皮肉があるでしょうか。

イスラム組織が武装しているのは、イスラエルの侵略に抵抗するためで、彼らの主要な武器はロケット弾だけです。ガザに地下道がはりめぐらされているのも、かつてのナチスに対するレジスタンス兵や北ベトナムのベトコンが行ったようなゲリラ戦の基本戦術です。それをイスラエルやイスラエルを支持する西側諸国は「テロリズム」と呼び、イスラエルに「自衛権」があると強弁しているのです。

強盗に抵抗する被害者が「テロリスト」と言われ、強盗が被害者を殺害するのは「自衛権」だと言われているのです。しかも、国連の機能不全が占めすように、強盗を裁く裁判所も法律もなく、世界は無法状態になっているのです。

■きっこの批判


きっこは、ツイッターで、次のようにイスラエルを擁護する西側諸国を批判していました。


休戦決議に棄権した日本政府や「どっちもどっち論」に逃げる日本のメディアやリベラル派は、(かたちばかりの国連批判をしながら)世界の無法状態を黙認して、強盗も被害者も「どっちもどっち」と言っているのです。そうやってパレスチナ問題の不条理な現実から目を背けているのです。中田考氏ではないですが、今の日本人に真っ当な人の心、良心はあるのかと言いたくなります。とどのつまりそういう話でしょう。

■重信房子の歌


「テロリスト」として未だ日本の国民から呪詛される重信房子氏は、獄中で次のような歌を詠んでいました(皓星社刊『歌集 暁の星』より)。

吾亦紅草線路に沿って咲く小径アラブに行くと父に告げたり

李香蘭君の訃報が胸を衝く大陸を愛しパレスチナを愛し

革命に道義的批判はしないという七四年の父の記事読む

吾亦紅摘みつつ歩みしひとあるき若き憂国 父は語りつ

テロリストと呼ばれしわれは秋ならば桔梗コスモス吾亦紅が好き

重信房子氏の父親は、1932年の血盟団事件に関与した右翼団体・金鶏学院に連なる戦前の右翼活動家でした。娘がパレスチナ闘争に参画することに対しては、民族主義者として思うところがあったはずです。

ナクバと呼ばれるパレスチナ難民は、今や560万人に達しているのです。少なくとも彼女らの人生を賭した活動によって、日本人が現代における深刻な民族問題のひとつである、パレスチナ民族の悲惨な現実を知るきっかけになったのは事実でしょう。そして、今があるのです。
2023.10.28 Sat l パレスチナ問題 l top ▲