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■ヤフコメが消えた


11月1日、朝日新聞デジタルに、次のような署名記事が出ていました。

朝日新聞デジタル
3社の記事からヤフコメが消えた 苦悩するメディア「我々は傭兵」

2022年初めに、突然、「NEWSポストセブン(小学館)、週刊女性PRIME(主婦と生活社)、東スポWEB(東京スポーツ新聞社)の3媒体のすべてのエンタメ記事から、『ヤフコメ』と呼ばれるコメント欄が消えた」のでした。

私もそれは気付いていました。ただ、私は、三社がコメント欄を閉鎖するようにヤフーに要請したのではないかと思っていたのです。

ところが、話は逆だったのです。あくまで業界関係者の推測ですが、どうやらヤフーによる一方的な処置だったようです。

記事は、そこに至った”裏事情”を次のように書いていました。

 21年10月、当時、週刊誌などでは秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんの結婚をめぐるバッシング報道が過熱していた。ヤフコメの投稿は批判的な内容が相次ぎ、過激さを増していた。

 対応が必要と考えたヤフーは同19日、誹謗(ひぼう)中傷など違反とみなされる投稿が一定数に達した記事のコメント欄を丸ごと非表示にする機能を導入。さらに、メディア関係者によると、ヤフーの担当者から、複数の出版社あてに「皇室記事の提供は控えてほしい」と要請があった。

 11月になると、ヤフーはメディア各社に「過剰に扇動的な記事にならないように」と注意を促すメールも送付。正確性を欠き、誤解を招く表現が使われた記事が悪質なコメント投稿を誘引している、と指摘した。

 3媒体のコメント欄が消えたのは、ヤフーの要請に従わず、記事を提供し続けたからではないか。メディア関係者の一致した見方だ。ヤフー側からの詳細な説明はなく、業界内では動揺が広がった。


何のことはない、三社が炎上目的で(バズらせるために)必要以上にバッシングの記事を書いたために、ヤフーからペナルティを課せられたのです。言うなれは、ヤフーから”糞メディア”と認定されたようなものです。

■皇室への忖度


でも、メディアとヤフーは、記事をバズらせてPVを稼ぎ、それを広告収入につなげるという、ニュースをマネタイズする手法においては、呉越同舟、同じ穴のムジナであったはずです。

それがどうしてヤフーから梯子を外されたのか。それは、三社が執拗に繰り返したのが、「秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんの結婚をめぐるバッシング報道」だったからです。

在日朝鮮人や生活保護受給者やフェミニストや左派系文化人に対する「バッシング報道」ではないという点が、今回のペナルティのポイントです。

記事の中で、宍戸常寿・東大大学院教授(憲法)が言うように、ヤフーが主導する今回の処置が、「言論の自由」の根幹に関わる問題を含んでいるのはたしかでしょう。

また、記事が書いているように、「消費者のニュースへの接点が、紙媒体からデジタルに移行するなか、ヤフーはニュースの『差配役』としての存在感を強めている」のはそのとおりでしょう。

■ヤフーのご都合主義


ヤフーは、皇室関係の記事にはこのような厳しい処置を講じるものの、週刊誌やスポーツ新聞による低俗な「コタツ記事」に対しては、相変わらず見て見ぬふりをしているのです。別に人権感覚に基づいてペナルティを与えたのではないのです。

何度も言うように、ヤフーにとってニュースの価値は、どれだけバズるか、どれだけマネタイズできるか(PVを稼いで広告収入を得ることができるか)だけなのです。そのために、バズらせるのに好都合な最低の日本人にニュースを語らせる場として、つまり、水は常に低い方に流れるネット民の”餌場”として、ヤフコメがあるのです。ただ、その中で皇室関係の記事は別だよと言っているだけです。

たしかに、小室圭さんと眞子さんの結婚に対するバッシング報道は常軌を逸しており、私もずっと批判してきました。ただ、問題はそれだけではありません。小室圭さんと眞子さんの報道は氷山の一角にすぎず、問題はヤフコメの存在自体にあるのです。差別ヘイトの温床であり、排外主義的なカルト宗教の信者たちの巣窟になっているコメント欄を閉鎖しない限り、ヤフーの処置は付け焼き刃のおためごかしと言わざるを得ません。

■プラットフォーマーとニュースメディアの蜜月の終わり


朝日新聞は、先日、ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなどのニュースメディアで、SNSやグーグル検索から自社サイトに流入してくる割合(トラフィック)がどんどん減っているというニューヨークタイムズの記事を掲載していました。記事が書いているように、SEOを介したニュースメディアとプラットフォーマーの蜜月も終わりを迎えつつあるのです。それが“ネットの時代”の次の位相です。

朝日新聞デジタル
ニュースと決別するSNS メディアに深刻な打撃 NYT【前編】
ニュースと決別するSNS メディアに深刻な打撃 NYT【後編】

身も心もプラットフォーマーに売り渡したような低俗な記事を量産して、その場凌ぎの延命策に頼る旧メディアの姿勢は、所詮は軽慮浅謀な弥縫策にすぎないのです。

ネットの守銭奴たるヤフーにコメツキバッタのように媚びへつらうその姿のどこに「言論の自由」があるというのか。そんな言葉を口にするのさえ片腹痛いと言えるでしょう。もとより、ヤフーに「言論の自由」をいいように食い荒らされても、彼らは痛痒さえ感じてないのかもしれません。


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2023.11.02 Thu l 社会・メディア l top ▲