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(記事より)



■鬱屈した老後の人生


前に書いた介護施設で警備員をしている70歳の知人と話をした際、彼は、まわりが高齢者だらけの警備員という仕事に加え、派遣された現場も高齢者ばかりの介護施設なので、何だかいっきに年を取ってもう人生が終わったような気持になっている、と言っていました。

たしかに、どう考えても人生を前向きに考えることができるような環境とは言えないでしょう。いくら職場を面白おかしくとらえても、その空虚感は消しようがないのです。

週末の電車に乗ると、冬休みということもあって、やたら家族連れが目立ちます。ドアの横に立っていると、まわりを途中から乗ってきた家族連れのグループに囲まれて、反対側のドアに降りようにもおしゃべりに夢中で通路を空けないので降りられないのです。

「すいません」と言ってもいっこうに動く気配がないので、「この野郎、のけよ!邪魔だろ!」と叫びたくなりました。もちろん、常に体裁を気にするしがいな小市民の私ですので、醜態を晒すことはありませんが、何だかキレる老人の気持がわかるような気がしました。

前も書きましたが、週末の電車のシルバーシートは、そんな家族連れに占領されています。ベービーカーに乗った「小さなお子様」をダシに、親たちがさも当然の権利と言わんばかりにシルバーシートにふんぞり返って座っているのでした。

少ない年金を補填するために、警備員の夜勤を終え、くたくたになって帰る途中の高齢者がそんな場面に出くわしたら、「くそったれ!」と思っても仕方ないでしょう。

政府は、こういった子育て世帯を支援するために、年間3.6兆円の財源が必要だと言うのです。支援の内容は、児童手当の拡充と保育サービスの充実が主な柱になっています。また、財源は、「社会保障費の抑制」とともに、私たちが支払う社会保険料(具体的には医療保険料)に一定額を上乗せした1兆円規模の「支援基金」を創設する案が有力だそうです。もちろん、低年金の警備員も応分の負担をすることになるのです。

児童手当の拡充に関しては、24年10月分から児童手当の支給対象を高校生まで拡大し、第3子以降については支給額を月3万円に増やす方針だそうです。

一方、厚生労働省年金局の資料によれば、国民年金の月の平均支給額は、5万679円です(以下、すべて令和3年度の資料)。厚生年金の受給者で、月の支給額が5万円未満は38万8575人、5万円以上10万円未満は336万1204人です。しかし、国民年金だと、月に5万円以下の受給者が864万2783人もいるのです。

もちろん、夫婦であれば二人分の年金が受給できるのですが、一人暮らしだとこの金額で生活しなければならないのです。

それに対して、児童手当は、第3子以降であれば0歳~18歳までは、月に3万円が支給されることになります。3人子どもがいれば、月に最大で6万円支給されることになるのです。それ以外にも扶養控除もありますし、医療費や学費の無償化も進んでいます。

月に5万円ほどの年金で生活している(一人暮らしの)高齢者は、おそらく数百万人は優にいるのではないかと思いますが、貧困に喘ぐ高齢者に比べると、子育て家庭への厚遇ぶりが突出しているように思えてなりません。同じ子育て家庭でも母子家庭などの貧困家庭をダシにして、ほぼ所得制限なしの大盤振る舞いが行われようとしているのでした。そこには上か下かの視点がまったくないのでした。

電車の中の光景は、何だか今の理不尽な世の中を象徴しているように思えてなりません。

■生活保護の実態


それでもまだ、働くことができる高齢者は恵まれているのです。働くことができなくなった低年金の高齢者の生活は悲惨を極めています。やっとどうにか生活保護を受けることができるようになっても、「一日千円」「週に1万円」の屈辱や、「甘えだ」「怠け者だ」「自業自得だ」というバッシングに耐えなければならないのです。それどころか、彼らを食い物にする貧困ビジネスも待ち構えています。中には、貧困ビジネスと役所が提携しているケースさえあるのです。

福祉事務所からの依頼で生活保護受給者の葬儀を多く手掛ける社会福祉法人で働く人間に話を聞いたことがありますが、「一日千円」「週に1万円」のような屈辱は人生の最後までついてまわるのです。生活保護専門のような病院や老人ホームも存在しますが、メディアもそういったホントの影の部分に目を向けることはないのです。もっとも、それでも病院や施設で最期を迎えるのはまだ恵まれた方だと言っていました。

そもそも葬祭扶助を手掛ける社会福祉法人にしても、現業の職員以外は公務員の天下りで、しかも彼らは単なるお飾りではなく、実質的に団体は彼らによって牛耳られているそうです。公金が投入される場所にはどこまでも公務員たちの”触手”が伸びているのです。

でも、先日の朝日の記事もそうでしたが、メディアは引き取り手がない無縁仏の最後の駆け込み寺みたいな記事を書くだけで、葬祭扶助が濡れ手に粟の”遺体ビジネス”を生み出し、生活保護受給者がどこまでも食い物にされている実態にはまったく触れないのでした。むしろ、メディアは、全体の0.29パーセント(全国厚生労働関係部局長会議資料より)の不正を針小棒大に報道して、バッシングを煽るような側面さえあるのでした。

国民はそんな生活保護の実態を知らずに(知らされずに)、役所にとって都合のいい生活保護バッシングに動員されているのでした。バッシングが向かうべきはそっちじゃないだろうと思いますが、彼らには所詮馬の耳に念仏です。

■「ぷよぷよ」元社長のジェットコースター人生


私はゲームはしないので、「ぷよぷよ」もまったく知りませんでした。その一世を風靡した「ぷよぷよ」の生みの親で、文字通りジェットコースターのような人生を送った、コンパイル社の元社長・仁井谷正充氏の記事を読みましたが、どんつまりの老後しか待ってないような人生の中で、何だか「元気をもらった」気がしました。鬱屈した日々を送っている知人にも、是非、読んでもらいたいと思いました。

集英社オンライン
 「ぷよぷよ」で70億円売り上げてテーマパーク建設で90億円の大赤字破産…伝説のクリエイターがそれでも抱く野望とは「流れに流されているうちに当たっちゃったんだよね」

仁井谷氏は、地元の広島大学理学部に通っていたときに学生運動に没頭して、7年かけて大学を卒業したあと、広島電鉄に入社し電車の車掌をしながら今度は労働運動に没頭します。革命家を夢見ていたそうです。しかし、三里塚闘争で逮捕されて「転向」(本人の弁)するのでした。 

そのあと写植の仕事をしていたときに、「魔導物語」や「テトリス」や「コラムス」などのロールプレイングゲームのブームがはじまり、自分でもゲームを作っていたら、その流れに乗って、「なんとなく『ぷよぷよ』ができて、ヒットした」と言っていました。

設立したコンパイル社は、70億円の売り上げをあげるほど急成長。その勢いを借りて、今度は千葉県の幕張に「ぷよぷよランド」というテーマパークを作ることを計画。結局、それがアダとなり、90億円の大赤字で会社は倒産し、自身も自己破産したのでした。

自己破産したあとは、警備員や介護の仕事をして糊口を凌ぎ、現在は家賃4万円の千葉のアパートで暮らしているそうです。

「今は年金生活ですが、たまに副収入があります。年金プラス5万から10万円くらい副収入あれば、生活ができるんです。あとは貯金を取り崩しながら……。でも、本業のゲーム開発で稼げるのが理想ですけどね。なかなかそうはいかないですね」
(上記記事より)


「たまの副収入」というのは、韓国のゲーム関係者からの「YouTube動画制作や、パッケージへのサインなどの販促活動の協力金」だそうです。

というのも、「大ヒットした『幻世酔虎伝』(1997年リリース)が、その後、韓国の学校で支給されるパソコンに標準でインストールされたことがきっかけで」、韓国では「日本ゲーム史の偉人として」仁井谷氏がとらえられているのだとか。そして、現在、韓国での自叙伝の出版計画が進められているのだそうです。

そういうこともあって、仁井谷氏は意気軒高なのでした。

「僕は過去を振り返らない、過去を振り返って、それを肴にお酒飲むとか、そういうタイプじゃないんです。常に何か新しいことをやってみたいし、人生に悲観することがないんです。任天堂さんあたりが僕に200億円預けてくれたら絶対にヒット作品を作れると思うんですけどね」  
(同上)


ここまでポジティブになれるのは本人の性格もあるかもしれませんが、人生なんて「どうで死ぬ身の一踊り」(西村賢太)なのです。残り少ない人生だからこそ、好きなように勝手に生きてみたいものだと思います。老後だからこそ、なりふり構わず生きてもいいのではないか。死ぬときはみっともなくてもいいのです。

年の瀬、仁井谷氏の記事を読んで、そんなことを考えました。                  
2023.12.27 Wed l 日常・その他 l top ▲