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(『週刊文春』12024年1月4日・11日合併号より)


■火のないところに煙は立たない


今度の文春砲のターゲットは、松本人志でした。どこまでホントかわからないとはその通りですが、ただ、ちょっと意地の悪い言い方をすれば、火のないところに煙は立たないとも言うのです。

いささか古いのですが、話は8年前の2015年の冬のことだそうです。場所は、六本木のホテル「グランドハイアット東京」の15階にある「グランドエグゼクティブスイートキング」という、1泊約30万円の「VIP御用達のゲストルーム」です。

女性を集めたのはスピードワゴンの小沢一敬。彼から仕事で知り合った女性たちにLINEが入り、ホテルでの「部屋飲み」に誘われたそうです。参加者は、女性が3人で、男性も小沢のほかに放送作家の「X」、それにあとから遅れてやって来た「VIP」の松本の3人でした。そして、3人の女性が順繰りに男性の相手をさせられる「ゲーム」が行われたそうです。

「X」については、文春の記事の中で次のように書かれています。

「Xは、NSC出身の元芸人。元雨上がり決死隊の宮迫博之らと親しく、その縁で松本と知り合い、バラエティ番組『松本家の休日』(朝日放送)などに出演していました。放送作家としては『人志松本の酒のツマミになる話』などを担当。松本の身の回りの世話をこなしており、一時期は1年のうち三百六十日一緒にいると言われたほどの仲です」(テレビ局員)


まるで「ググれよ」と言われているような書き方なので、さっそくググってみました。その結果、大阪NSC12期生の某だということがわかりました。記事からもわかるように、彼は松本人志の腰巾着のような放送作家だそうです。

ただ、文春に書かれている乱交パーティは、これだけではありません。

その3カ月前にも、「女衒」の小沢が企画した「部屋飲み」が同じ場所で行われていたのだとか。

そのときの参加者は、女性が4人で男性も4人でした。上記の3人のほかに「男性タレント」が1人参加していたそうです。ただ、「男性タレント」に関しては差し障りがあるのか、放送作家と違ってヒントになるような記述はありませんでした。

■吉本の剛腕恐るべし


当然ながら「軽率だ」「無防備だ」として、小沢の誘いに乗った女性たちを責める声もあるに違いありません。中には行きがかり上、断るに断れなかった駆け出しの女優やタレントもいたようですが、ただ、(私も知っていますが)お笑い芸人と遊びたがる女性たちがいることも事実です。また、遊びが本気になって結婚に至るケースも結構あるみたいですが、お笑い芸人たちも、彼女たちを性のはけ口としてお手軽に利用しているのも事実です。でも、それはそれ、これはこれです。

「セックスするから覚悟しておいでよ」と言って誘ったわけではないのです。「今からすごい世界的な人が来るから」(文春の記事より)と言われたのです。しかも、部屋に入ると、「くれぐれも失礼のないように。怒らせるようなことをしたら、この辺、歩けなくなったちゃうかもしれない」(同)と半ば脅しのように釘を刺されているのです。そして、スマホまで取り上げられているのです。

そういった脅しが功を奏して、「芸能界の権力者である彼の怒りを買うと、どんな仕事上の報復を受けるか分からず、これまで口を閉ざした子が数多く存在する」(同)と被害者の女性は証言しているのでした。

性犯罪やハラスメントの背景にある力関係を考えると、日本人お得意の「どっちもどっち」論は、被害者の口を封じる悪質な圧力=デマゴギーと言えるでしょう。

もっとも、こういった女性を性のはけ口にする性暴力まがいの話は、お笑い芸人に限ったことではないのです。『紙の爆弾』(鹿砦社)の今月号(2024年1月号)にも、「政界に横行する公金『コンパニオン宴会』」という記事が出ていましたが、政治家も、成り上がりの若手経営者も、同じようなことをやっているのです。それをいちばんよく知っているのはあのガーシーかもしれません。

「不同意性交」だったのかどうかわかりませんが、テレビ局の障害者トイレで、女性スタッフとこと・・に及んだ(松本の子分のような)お笑い芸人も、今では何事もなかったかのようにテレビやCMに出ています。吉本の剛腕恐るべしですが、吉本をそのようなモンスターにしたのはテレビ局なのです。

■松本人志の一夫多妻論


松本人志は、女性に性行為を求める際、盛んに「俺の子どもを産んでほしい」「君の子どもがほしい」と耳元でささやくのだそうです。それは松本が好むプレイのひとつなのかと思ったら、必ずしもそうではなく、パーティの席では次のような一夫多妻論を開陳していたそうです。

「日本の法律は間違っていると思うねん。日本は俺みたいな金も名誉もある男が女をたくさん作れるようにならんとあかん。この国は狂ってる。なんで嫁を何人も持てないんや」
(略)
 その一人が場を取り繕うように、「素敵な奥様がいらっしゃいますよね」と尋ねると、松本は眉間に縦皺を刻んで言った。
「女は出産すると変わんねん」
 そして、女性たちを凝視しながら言葉を続けたのだ。
「俺的には三人とも全然ありやし。で、俺の子ども産めるの? 養育費とか、そんくらい払ったるから。俺の子ども産まん?」
(記事より)


テレビでも似たような発言をしているようですが、もしこれがホントなら、アホ丸出しです。テレビはこんな松本に時事問題を語らせていたのです。

■テレビの異様な光景


それもひとえに(このブログでも何度も指摘していますが)、テレビ局が番組制作を吉本に(実質的に)丸投げするほど、吉本と深い関係を築いてきたからです。その結果、どのチャンネルを回しても吉本の芸人が出て来るという、まるでテレビが吉本にジャックされたような異様な光景が作り出されたのでした。

今回の問題でも、芸能マスコミに出ているのは、会社からの指示なのか、忖度なのかわかりませんが、松本を擁護する芸人たちのしらばっくれたコメントばかりです。特に今田耕司のコメントは極めて悪質でした。もとより、松本に時事問題を語らせてきたテレビ局は、何がなんでも松本を守ろうとするでしょう。そういった絶対的な力を背景にした理不尽でアンフェアな空気に対しても、私は違和感を抱かざるを得ません。

前に闇営業問題が発覚した際、私は、下記の記事の中で、吉本と闇社会の関係について、次のように書きました。

関連記事:
吉本をめぐる騒動について

前に紹介しました森功著『大阪府警暴力団担当刑事』(講談社・2013年刊)では、わざわざ「吉本興行の深い闇」という章を設けて、吉本と闇社会の関係について書いていました。

昭和39年(1964年)の山口組に対する第一次頂上作戦を行った兵庫県警の捜査資料のなかには、舎弟7人衆のひとりとして、吉本興業元会長(社長)の林正之助の名前が載っていたそうです。

2006年、正之助の娘の林マサと大崎洋会長(当時副社長)&中田カウスの間で起きた内紛(子飼いの芸能マスコミを使った暴露合戦)は、私たちの記憶にも残っていますが、その背後にも裏社会の魑魅魍魎たちが跋扈していたと書いていました。本では具体的な名前まで上げて詳述していますが、巷間言われるような、裏と表、守旧派と開明派、創業家と幹部社員の対立というような単純なものではなかったのです。また、その対立は、2011年の島田紳助の唐突な引退にもつながっているそうですが、今回の騒動にもその影がチラついているように思えてなりません。


そもそも吉本内部の序列が、テレビの世界に持ち込まれていること自体が異常です。そのため、まるで楽屋での内輪話みたいなもので番組が作られて、太鼓持ちのような役割を担う「ひな壇芸人」と呼ばれる芸人たちさえ生まれているのでした。それも、吉本など芸能プロダクションが番組制作に大きく関わり、キャスティングを一手に引き受けているからでしょう。

その結果、多くのお笑い芸人を擁する芸能プロダクションと深い関係にあるテレビ局のプロデューサーが、部外者から見ればただの癒着にしか見えないのに、「大物プロデューサー」と呼ばれたりしているのでした。

しかも、お笑いの世界の序列がいつの間にか独り歩きして、ビートたけしやタモリや明石家さんまなど、既にお笑い芸人として旬を過ぎ芸らしい芸もなくなったベテラン芸人を、「お笑い界のビッグ3」などと呼んで持て囃しているのでした。

■ダウンタウンのチンピラ芸と松本人志


松本人志は、彼の日頃の言動やその芸風を見てもわかる通り、チンピラがそのまま年を食ったような人間です。そう言って悪ければ、”大物芸人”として、背伸びして大きく見せることを強いられた哀しきピエロです。吉本がそうさせたのです。

今回の報道のあと、松本人志はみずからのX(旧ツイッター)に、次のように投稿しています。

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(Xのスクショより)

闇営業問題のときも「松本動きます」とかいった投稿が話題になりましたが、こういった投稿もめいっぱいの虚勢なのでしょう。石原慎太郎ではないですが、「空疎な小皇帝」(斎藤貴男)という言葉が思い出されてなりません。

ダウンタウンが登場した頃は、今のようにコンプライアンスという言葉もない時代でした。彼らのチンピラ芸は、コンビ名に示されているように、阪神工業地帯の周縁部に住むクソガキたちの中から生まれたものです。だから、彼らの笑いは、イジメと紙一重だったのです。

しかし、コンプライアンスという言葉が生まれ時代が変わっていく中で、彼らのチンピラ芸は時代と齟齬が生じるようになったのでした。

今回の記事がホントなら、松本がやっていることはまさに#MeToo運動の真逆をいくチンピラのそれでしかないのです。いい年していつまでそんなことをやっているんだという話ですが、芸だけでなく芸人としても完全にズレているのです。

♯MeToo運動の高まりの中で、たとえば、左派リベラル界隈でも、文芸評論家の渡部直己や国際ジャーナリストの浅井久仁臣など「手癖の悪い」連中が過去のハラスメントを告発され、表舞台から姿を消しましたが、松本が「いつ辞めても良い」と本気で思っているなら、潔くやめた方がいいでしょう。それが身のためであるし、何より時代はもうダウンタウンの笑いを求めてないのです。

もちろん、チンピラは松本人志だけではありません。フライデーの記事にチラッと出て来る何とかジュニアや、ガーシーの友達でもあった何とか淳も似たようなものです。彼らもまた、チンケな芸人に過ぎないのに、吉本の剛腕によって偉そうに時事問題を語るまでになっているのでした。

そう考えれば、テレビの罪は大きいと言わねばなりません。テレビがやっていることはあまりに節操がなさすぎるのです。

テレビ東京が通販番組か情報番組かわからないような、グレーゾーンの番組をよく放送していますが、吉本と癒着して番組を作っているテレビ局も似たようなものです。公共の電波を使っているテレビのあり方として、吉本興業との関係は旧ジャニーズ事務所との関係に勝るとも劣らないほどの大きな問題を孕んでいると思いますが、どうしてその声が少ないのかと思います。

■吉本のコメント


吉本は文春の報道を受けて、次のようなコメントを発表しました。

一部週刊誌報道について

本日発売の一部週刊誌において、当社所属タレント ダウンタウン 松本人志(以下、本件タレント)が、8年前となる2015年における女性との性的行為に関する記事が掲載されております。

しかしながら、当該事実は一切なく、本件記事は本件タレントの社会的評価を著しく低下させ、その名誉を毀損するものです。当社としては、本件記事について、新幹線内で執拗に質問・撮影を継続するといった取材態様を含め厳重に抗議し、今後、法的措置を検討していく予定です。

ファン及び関係者の皆様には大変ご心配をおかけする記事内容でしたが、以上のとおり本件記事は客観的事実に反するものですので、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。


「当該事実は一切なく」といつもの吉本の強面が垣間見えるようですが、一方で、「取材態様」にまで言及しているのは、大阪に向かう新幹線の車内で記者から直撃された際、松本人志がスマホで記者とカメラマンを撮影しているからで、そのことをわざわざ取り上げているのでした。恐らく松本に泣きつかれたのでしょう。

ただ、その唐突感に対して、既に腰が引けていると指摘する人もいます。また、「法的措置」まではいかないのではないかという見方もあるようです。「法的措置」を取れば、ジャニー喜多川の性加害のようにみずから墓穴を掘る恐れがあるからです。だから、「当該事実は一切なく」と言いながら、「検討していく」という表現にとどめているのではないかと言うのです。もっとも、逆に吉本が「法的処置」を取った方が、いろんな暗部がさらけ出されるので、却っていいのでないかという声もあるのでした。

■活動休止 ※追記


本日、松本人志が芸能活動を休止するという「速報」がありました。吉本興業によれば、松本人志から「『様々な記事と対峙(たいじ)して、裁判に注力したい』とし、活動を休止したいという強い意志が示された」(朝日の記事より)のだそうです。

テレビの画面から察するに、その言動とは裏腹に彼自身は小心な性格のような気がしますが、ここに来てその性格がモロに出た感じです。そもそも記事に書かれたことが事実なら、記事に登場する松本人志は文字通りの裸の王様なのです。

既に旬が過ぎただけでなく、その芸風から言ってももう笑えない芸人になってしまったダウンタウンの松本人志は、このまま永遠にフェードアウトするしかないでしょう。

「裁判に注力したい」というのもめいっぱいの虚勢のつもりなのでしょうが、もう虚勢にすらなってないのです。

文春がほのめかしているように、今後あらたな証言が出て来る可能性は高く、「裁判に注力」するどころか泥沼に引きずり込まれる可能性の方が高いでしょう。

松本人志は文字通り堕ちた偶像になったのです。そんな逆風が吹き始めたのを察知して活動休止したというのが、今日の「速報」の真相だと思います。記者会見もやりたくない小心な人間が選んだ”最善の方法”が、活動中止から引退という姑息な方法だったのではないか。

活動休止の発表後、松本人志はみずからのX(旧ツイッター)を更新して、「事実無根なので闘いまーす」と投稿したそうですが、これが還暦を迎えたおっさんの日本語かと思うと、哀しくもせつないものがあります。文字通り引かれ者の小唄と言うべきでしょう。足掻けば足掻くほど笑えないギャグしか出て来ない。もう完全に終わっているのです。

一方で、テレビなどのメディアは、ここに至っても吉本のコメントを垂れ流すだけで、多分に腰が引けたおざなりな報道に終始しています。あれだけ人の揚げ足とりが得意なワイドショーも、独自の取材さえ行ってないのです。ジャニー喜多川の性加害と同じように、触らぬ神に祟りなしの姿勢なのです。

けだし、吉本興業とテレビ局の“不純な関係”については、何ひとつカタが付いてないのです。これからはこの問題も、松本人志のスキャンダル以上に注視する必要があるでしょう。

吉本による公共の電波の私物化をテレビ局が許していたという、とんでもない問題なのです。お笑いだから許されるというような惚けた話ではないのです。
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