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(山本太郎氏のXより)



■馳知事の呼びかけと山本太郎バッシング


地元の北國新聞によれば、石川県の馳浩知事は「5日の石川県災害対策本部員会議で『能登に向かう道路が渋滞し、困っている。個人や一般ボランティアが被災地へ向かうのは控えてほしい』と述べ、不要不急の来訪はしないよう呼び掛けた」そうです。馳知事は、それ以前にもX(旧ツイッター)で、一般車の乗り入れの自粛を呼びかけており、あらためて自粛を呼びかけた格好です。

現在の西日本新聞の前身である「九州日報」の記者をしていた夢野久作は、1923年の関東大震災の際に、二度にわたって震災直後の東京を訪れ、そのルポルタージュを「街頭から見た新東京の裏面」「東京人の堕落時代」と題して、「九州日報」に連載したのですが、その中で、廃墟と化した東京は人影もなく「がらーんとしているだろう」と思っていたら、実際は人であふれ、道路も大混雑していた、と書いていました。震災直後の東京にあふれていたのは、廃墟と化した東京を興味本位に見に来た物見遊山の人々だったのです。 

馳知事が被災地への来訪を控えるように呼びかけたのは、そういった物見遊山の来訪を恐れたからではないかと解釈する人もいるかもしれませんが、東京と能登半島では事情がまったく異なるでしょう。ただ、甚大な被害が生じた奥能登へ行くには、道路も限られているため、支援活動に支障が出ることを恐れたというのはあるかもしれません。

ただ、被災地への来訪は議員も自粛が要請されていますし、被災地の上をドローンを飛ばすことも禁止されているそうで、何だか異常な気がしないでもありません。

能登半島にある志賀原発では、油の流出が当初の発表より5倍に増えているとか、周辺15カ所ではモニタリングポストが「壊れて」放射線量の測定が不可能になったというニュースがありますが、来訪禁止やドローン禁止の”過剰な規制”を考えると、どうしてもよからぬ想像を巡らせたくなるのでした。

馳知事の呼びかけに呼応するかのように、ネット上ではさっそく「自粛警察」の震災版とも言うべき人間たちによる、ボランティアに対するバッシングがはじまったのでした。たとえば、いちはやく被災地に入ったれいわ新選組の山本太郎代表もそのひとりです。

山本代表は、現地に行った理由も含めて、みずからのXに次のように投稿していました。 


この投稿に対して、被災者のカレーを食べたのはけしからんと難癖を付けているのでした。それをスポーツ新聞のコタツ記事が取り上げて、Yahoo!ニュースが拡散し、テレビのコメンテーターたちがしたり顔でバッシングを追認しているのでした。

私は、こういった手合いを「最低の日本人」と呼んでいるのですが、要するに、「最低の日本人」の彼らが気に入らないのは、馳知事の呼びかけを無視して被災地に行ったからでしょう。 

しかし、同じように支援物資を積んだトラックとともに現地に入り、「軽率だ」「迷惑だ」とバッシングを浴びた後藤祐樹千葉県八街市議は、道路が渋滞しているのは乏しいガソリンを求めて地元の人たちの車がガソリンスタンドに行列を作っているからで、必ずしもよそから来た車で渋滞しているわけではない、とXで反論していました。

ネットには現地を車で走ったツイキャスも上げられていましたが、それを見ると特に渋滞している様子はなく、ツイキャスの主も「(自粛要請は)風評被害だよ」と皮肉を言っているくらいでした。しかし、メディアには今の道路状況に関する報道はいっさいないのです。自分たちもカメラを持って奥能登を訪れているので、道路の状況もわかっているはずですが、政府や石川県の自粛要請をオウム返しのようにくり返すだけです。

こう言うと、陰謀論やフェイクニュースを煽っているように思われるかもしれませんが、テレビなどメディアはどこまでホントのことを伝えているのかという疑問を持たざるを得ません。

地元の人によれば、地震直後は一時的に道路が渋滞していたことがあったそうです。それは、能登半島の出身者で金沢などに住んでいる人たちが、身内の安否を心配したり支援物資を届けるために車で訪れたからだと言っていました。もちろん、道路が寸断されて限られたルートしか通れないということもあったのでしょうが、ツイキャスを見ると、至るところで補修工事が行われた跡があり、(前の記事でも書きましたが)土木作業員たちが夜を徹して突貫工事をしたことがよくわかるのでした。土建会社にとっては地震特需でしょうが、工事に携わる作業員たちは被災者でもあり、頭が下がる思いがします。

一方、馳知事は、不要不急の来訪は控えるようにと言いながら、非常事態を宣言して、県の職員に「全庁をあげて災害対応にあたるよう指示」したのは1月6日、つまり、地震が発生した5日後なのです。これでは新年の「仕事始め」と同じでしょう。まったく呆れるしかありません。

石川県内で100人を超える人が亡くなった今回の地震について、石川県の馳知事は「これまでにない未曽有の大災害だ。能登を救うために、県庁としての非常事態を宣言する」と述べ、県の職員に対し、全庁をあげて災害対応にあたるよう指示しました。

県は被害の大きい自治体への職員の応援を増員させるなど、対応を強化することにしています。

また、県は被災地以外の旅館やホテルに、被災した人たちが過ごせるよう調整を進めるとしています。

このほかに、石川県小松市が能登地方の被災者およそ80人を受け入れるなど、県内の自治体で被災した人を受け入れる支援の動きが出ていることを明らかにしました。

NHK
石川 馳知事が非常事態を宣言 県職員に災害対応を指示


現場を知るということは大事なことです。支援活動がどうなっているのか、ホントに機能しているのを知るのも、政治家やジャーナリストだけでなく、ボランティアを志願する人たちも必要なことでしょう。

実際に現地の惨状を見た山本太郎代表は、上記のXで、自衛隊は自走式と牽引式キッチンカーを800台以上も持っている、牽引式は約45分のうちに250人分、自走式は約60分で150人分の炊事を行うことができる、どうしてその能力を活用しないのだ、と書いているのでした。

■ボランティアを拒否する「お役所仕事」の夜郎自大と「最低の日本人」たち


生き埋めになったままの人たちだけでなく、山間部で一人暮らしの高齢者の移送も進んでない状態だそうで、震災の関連死は東日本大震災を上回るのではないかという懸念さえ出ているのです。

どうして積極的に民間のボランティアの力を借りようとしないのか、不思議でなりません。役所は尻を叩かないと動かないというのは、私たちでもよく知っています。ホントに「お役所仕事」に任せるだけでいいのかと思います。

輪島市の坂口市長は、1月6日の石川県災害対策本部員会議で、「避難所もぎゅうぎゅう詰めで、ノロ(ウイルス)やコロナが発生している」と窮状を訴えたそうですが(朝日の記事より)、そういった事態に迅速に対応できるノウハウを持っているのは民間でしょう。「お役所仕事」ではとても対応できるとは思えません。

尻を叩かないと動かないのに、「最低の日本人」たちは、お役所に任せればいいんだと言って、自衛隊や消防や警察を英雄視するだけなのです。今、必要なのは役所の尻を叩くことでしょう。

しかも、岸田政権が投入した自衛隊は、「2日の約1千人を皮切りに、3日に約2千人、4日に約4600人、5日には約5千人、6日には約5400人、7日には約5900人に増員した」(朝日)だけだそうです。2011年の「東日本大震災では発災の翌日に約5万人から約10万人に、熊本地震では2日後には当初の約2千人から約2万5千人」(同)へと増員していることに比べれば、岸田政権の不作為はあきらかです。それは、被災者にとっては座して死を待つに等しいものです。

その極めつけは、元自衛隊員だとかいう芸人のやす子の発言です。彼女は、1月7日に放送されたTBS「サンデー・ジャポン」に出演して、次のように言ったそうです。

「一般の方がいま、助けに行くぞって行かれているんですけど、その一般の方がどこに泊まるかというと、民泊を借りたりとか、ガソリンをどうするかというと現地のものを使わないといけなくて、被災地の方にも力を借りなければいけなくなる」

「けど、自衛隊は自己完結してて、燃料、食べるもの、寝るところもすべて自分たちで持って行く。ですので、被災地に迷惑をかけずに支援ができるのが、自衛隊の大きないいところのひとつかなと思っているので」

「緊急車両が通れないと助かる命も助からなくなってしまう。いま、みんなができることは、募金とか、一旦、いまいるところで祈るというか、いまできる生活を送った方がいいんじゃないかなと思います」

Yahoo!ニュース
ディリースポーツ
やす子が完ぺき説明「自衛隊は被災地に迷惑かけずに災害支援できる」一般市民へは自重求め「みんなが出来るのは祈る事」


このやす子の発言に対して、ディリースポーツは「完ぺきな説明」と書いていましたが、どこが「完ぺき」なんだと思いました。山本太郎代表が言うように、圧倒的な人員不足だけでなく、キッチンカーすらも活用してないのです。やす子は決して賢いとは思えないキャラクターの芸人ですが、自衛隊の派遣人数など現状認識はお粗末なものしか持ってないようです。にもかかわらず、まるでボランティアが被災地に迷惑をかけているようなこましゃくれた発言をしているのです。バカな愛されキャラだから何を発言しても許されるというものではないでしょう。

ここに来て岸田政権に対して、政府内からも「初動を甘く見た」(朝日)というような声が出始めているそうですが、最初から初動を誤っていたのです。緊急事態であるにもかかわらず、仕事始めまで緊急事態宣言の発出を控えていた(としか思えない)石川県の対応を見てもわかるとおり、「お役所仕事」に任せていては、被災地の惨状は益々深刻化するばかりでしょう。未だに被害の全容すらつかめてなくて、日ごとに死者や安否不明者の数が増えているあり様なのです。

ボランティアというのは、瓦礫を片づけたり、家具を運び出したり、側溝の泥を掻き出したりするだけではないでしょう。「お役所仕事」にない即応性もあるし、通信や食事やトイレや衛生管理のノウハウも持っているのです。何より「最低の日本人」と違って、どこかの総理大臣の言葉ではないですが、「共助」の精神も、利他の考えもあるのです。

自分たちが税金を使うときはザルだけど、納税者に使うときは「ごうつくばばあ」みたいに厳格になるのは政治家や役人の常ですが、そんな連中にすべてを任せていては悲劇がさらに悲劇を呼ぶような事態になるのは目に見えているような気がします。生き埋めになったまま放置されるだけでなく、関連死も膨大に増えるのではないかと言われる中で、彼らがやっているのはボロ隠しのようなパフォーマンスと自演乙だけなのです。

どうして自衛隊はキッチンカーを使わずにヤマザキパンを運ぶのか。そう言うべきなのです。やす子のお粗末な発言を「完ぺき」と持ち上げるメディアのアホらしさをどうしてアホらしいと言わないのか。

■災害出動より「出初式」


当初、メディアはこぞって、甚大な被害が発生した奥能登に至る道路は寸断され、陸路による物資の輸送や被災者の移送ができないという報道をしていました。だったら、自衛隊が持っている大型ヘリを使って空路で行えばいいじゃないかという声もあったのですが、政府にはそういった発想はありませんでした。

その一方で、1月7日には、陸上自衛隊の第1空挺団は、千葉県の習志野演習場で「降下訓練始め」を予定どおり実施したそうです。これを報じた赤旗電子版によれば、「訓練は島しょ防衛を想定し、空挺団員によるパラシュート降下や、陸自ヘリによる部隊展開などを展示。訓練には陸自第1ヘリコプター団、航空自衛隊のC2、C130H輸送機などが参加(略)。米英、カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、インドネシアの7カ国の軍隊も参加」し、派遣命令を出す木原防衛大臣も訓示したのだとか。つまり、災害出動より例年行われている「出初式」=お祭りを優先したのです。

「訓練始め」に参加したCH47Jヘリは55人の輸送が可能で、C2は最大約30トン、C130Hは最大20トンを搭載できるそうです。奥能登の孤立した集落を救援するために、どうして「降下訓練」の成果を発揮しないのかと誰でも思うはずです。

なお、この模様を朝日新聞は、何の批評も加えずに(悪びれもせずに)映像付きで報じています。政府も政府ならメディアもメディアなのです。

朝日新聞デジタル
陸自、千葉で降下訓練始め 防衛相「同盟国との連携示すことは重要」

ただ、忘れてはならないのは、(今まで書いたことと矛盾するかもしれませんが)自衛隊=軍隊は国家=国体を守るためにあるのであって、国民を守るためにあるのではないということです。災害対応ごときでは、陸路がダメなら空路や海路があるという発想は自衛隊にははなから存在しないのです。災害派遣は、あくまで「自衛隊は頼りになるぞ」というパフォーマンスの場にすぎないのです。

孤立した集落を救助するために、悪路を徒歩で進む自衛隊員に「感動と感謝の声」という記事などはその典型でしょう。いたずらに72時間が過ぎ、生き埋めになった多くの人々が見捨てられていても、みんなで感動して感謝しなければならないのです。

■デマを拡散するYahoo!ニュースの怖さ


今回の地震では、X(旧ツイッター)がYouTubeと同じようにアクセス数に応じて広告料が支払われるようになった影響もあり、Xを中心にしたSNS上で炎上目的のデマ投稿が増えたというニュースがありました。

しかし、それはSNSだけではないのです。むしろ、一番のデマの発信源は、スポーツ新聞や週刊誌のコタツ記事です。

その端的な例が、避難所に車で乗り付けて自販機を壊して中の飲み物を奪っていく集団の話です。そんなコタツ記事がYahoo!ニュースに掲載されると、とんでもない事件、犯人たちは極刑に処すべきとヤフコメで炎上したのですが、後日、それがまったく事件性がないことが明らかになったのでした。

北國新聞によれば、ことの顛末は次のようなものです。

能登半島地震の避難所となっている穴水町の穴水高で1日夜、男女数人が自動販売機を壊し、同校の避難者用に飲料水を置いていったとみられることが6日、同校などへの取材で分かった。自販機を壊した人は「自分も避難者で、飲み物を確保するために自販機を壊していいか(管理者に)確認した」と話しており、石川県警は事件性はないとの見方を示している。

 穴水高によると、車で訪れた数人が自販機を器具でこじ開け飲料水を取り出し、避難所に置いていったという。

北國新聞DIGITAL
自販機破壊、避難者のためだった 
「飲料水確保するため」 穴水高


私は、このニュースを見て、関東大震災の際の朝鮮人が井戸に毒を入れたという話を思い出しました。

アクセス数を稼ぐためにデマを発信しているのは、SNSだけでなくYahoo!ニュースも同じなのです。ヘイトの問題でも散々指摘されていますが、Yahoo!ニュースがどんな存在であるのかを考えると、これはとても怖いニュースだなと思いました。
2024.01.08 Mon l 震災・原発事故 l top ▲