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■ドイツに抜かれて世界第4位になったGDP


昨日、日本の去年1年間の名目GDPが、ドイツに抜かれて世界第4位になったというニュースがありました。

内閣府によれば、日本の去年1年間の名目GDPは、ドル換算で4兆2106億ドルでしたが、ドイツの去年1年間のGDPは、4兆4561億ドルで日本を上回ったそうです。

日本は2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位になっていましたが、今度は人口がほぼ3分の2のドイツに抜かれて4位になったのでした。

GDP(国内総生産)は、一定の期間に国内で生産されたモノとサービスの付加価値の合計額ですので、基本的に人口が多い国の方が「有利」です。そう考えると、人口が3分の2しかないドイツに抜かれたことの意味は、円安の影響があったとは言え、数値以上に深刻な問題を含んでいると言えるでしょう。

さっそく朝日は、次のような記事を掲載していました。

朝日新聞デジタル
時時刻刻
技術立国は昔話、円安頼みにも限界 経済浮上のカギはデフレ克服

 高度経済成長の勢いに乗った日本は、1968年に西ドイツ(当時)を国民総生産(GNP)で上回り、世界2位の経済大国となった。なかでもテレビは80年代に世界市場の3~4割を握ったとされる「メイド・イン・ジャパン」の象徴だった。

 それがいまや、家電は外貨の稼ぎ手ではなく、海外から買い付けるものになった。その光景は、テレビにかわって家電の「主役」に躍り出たスマートフォンにも重なる。

 「ワンセグ」や「iモード」など国内で独自のサービスが発展した日本の携帯電話は、ガラパゴスと言われながらも、世界の先端を走っていた。だがスマートフォンの登場で、一気に陳腐化してしまう。東芝やNECなど大手が次々と市場を去った。いま国内市場の半分を握るのは、米アップルのiPhoneだ。

 日本はスマホに組み込むセンサーやカメラなどの電子部品では、高い競争力を保つ。スマホが売れれば関連企業ももうかる仕組みは残ったものの、最終製品にして世界に送り出す力は衰えた。

 この間、米国ではアップルやグーグルなど巨大IT企業が急成長。アジアではサムスン電子や台湾積体電路製造(TSMC)など、半導体で覇権を握る企業が台頭した。日本はイノベーションでも、ものづくりでも、世界から後れを取った。


■ガラパゴス化と内向き志向


日本の技術は一流、ものづくりは日本のお家芸、と言われたのも(そう自演乙していたのも)今は昔なのです。

「世界に誇る亀山モデル」とか言われた(勝手にそう言っていた)液晶テレビの市場でも、今や日本の企業は見る影もなく、有機ELテレビの世界シェアのトップを走るのは韓国のLG電子だそうです。私たちの世代は、かつて韓国のLGや中国のハイセンスは安かろう悪かろうの象徴みたいに言ってバカにしていました。しかし、今は完全に立場が逆転しているのです。さらに、中国メーカーでは新興企業のTCL集団が、大型テレビの分野でシェアのトップを占めるまでになっているのでした。

記事にもあるように、ドコモが主導した携帯のガラパゴス化は、スマホの時代になると瞬く間に海の藻屑と化したのですが、私は、トヨタのハイブリッドも同じ轍を踏んでいるように思えてなりません。世界の自動車産業は競ってEVにシフトしているのですが、しかし、日本では依然としてトヨタが主導するハイブリット車が幅をきかせており、そのために(トヨタに遠慮して?)EV向けのインフラの整備が全然進んでないのでした。

そこには、なつかしい言葉ですが、「パラダイス鎖国」=ガラパゴス化で浮利を追う(それで世界に誇るとか言っている)、日本企業の内弁慶な体質が示されているように思えてなりません。名目GDPでドイツに抜かれたことについても、(そんなことは気にせずに)身の丈に合った日本独自の道を歩めばいいんだ、というような意見がありますが、既に資本主義が石橋湛山が生きていた頃のような牧歌的な段階にないことは常識中の常識で、何の慰めにも(ましてや負け惜しみにも)なってないのです。

■「脱成長」というお花畑と少子高齢化という言い訳 ※追記


今や市場は世界に拡大しているのです。資本は国民国家の枠を超え、世界の市場でしのぎを削っているのです。それは、資本主義が拡大再生産という”宿痾”を抱えているからで、そうやって常に新たな市場を開拓しなければ行き詰まってしまうからです。30年間ほとんど成長していない日本が衰退していくのは当然なのです。

「脱成長」なんて口で言うのは簡単ですが、成長をやめるなら資本主義をやめるしかないのです。資本主義というシステムを維持するためには、力尽き倒れるまで走り続けなければならないのです。そんなのは経済学のイロハでしょう。

日本が衰退したのは少子高齢化が原因だ、というような言説がまかり通っていますが、それは本末転倒した言い訳、誤魔化しにすぎません。そんな言い訳を百万篇くり返しても、現在進行形の衰退(坂道を転がり落ちている現実)を押しとどめることはできないのです。

今から45年前の『なんとなく、クリスタル』で、田中康夫が少子高齢化で社会的コストの増大に苦しむ近未来の日本を予言したように、少子高齢化の社会になるのは45年も50年も前からわかっていたのです。だから、さらに成長するためには、新たな市場を開拓することが求められていたのですが、日本の電機・電子部品メーカーは、IT化の流れに乗り遅れ(競争に敗れ)、欧米だけでなく中国や韓国や台湾にも先を越され、現在のスマホからEVという絶好の成長の機会を逃すことになったのでした。それで(革命を起こす気もないのに)「脱成長」だとか言うのは、日本人お得意の(いつもの)負け惜しみの誤魔化しにすぎないでしょう。

少子高齢化に伴う人手不足には、外国人労働者を使えばいいではないかと考えるかもしれませんが、中国や韓国や台湾などの周辺国も少子高齢化が急速に進んでいますので、既に外国人労働者の取り合いになっているそうです。

そのため、政府は現代の奴隷制度と言われた従来の「技能実習制度」を見直して、転籍や転職が可能になる在留資格の緩和に方針転換したのですが、しかし、日本の場合、賃金や待遇が際立って悪い上に円安も重なり、外国人労働者にとっても日本は魅力のある国ではなくなっていると言われています。一方で、留学生は週28時間までアルバイトが可能で、何故か留学性に対する規制は緩いので、”留学生”という名の出稼ぎ労働者しか入って来ないのではないかと言われているそうです。当然の話ですが、衰退する国は外国人労働者からも敬遠されるのです。

先日、テレビは、半導体製造の”巨人”と言われ、2月15日時点の時価総額が420億ドル(約6兆3100億円)を誇るTMSCが、日本政府の働きかけで熊本県の菊陽町に日本工場を建設したことで、熊本では”TMSCバブル”が起きているというニュースを伝えていました。

熊本の田舎町にときならぬ通勤ラッシュが起きているとか、ホテルやマンションの建設ラッシュに沸いているとか、清掃員や食堂の調理員を時給1800円や1500円で募集しているとかいった話とともに、世界で唯一の「半導体学部」を持つ台湾の明新科技大学が、新たに日本人学生を対象にした「日本コース」を新設したという話も伝えていました。

その中で、明新科技大学の学長は、「日本には半導体を担う人材がいますか? いないでしょ。だから、日本のため、台湾のために日本人の技術者を育成するのです」と言ってましたが、これが今の日本の現実なのです。

もっとも、TSMCの工場誘致に対して、「日の丸半導体」の復活をもくろむ日本政府も、数兆円の投資を行うそうですが、IT業界の勢力図は短いサイクルでめまぐるしく変わるので、他人の褌で相撲を取ろうという日本政府の巨額投資がただの紙くずになる可能性もなくはないのです。

岸田内閣は、物価高と賃上げの好循環でデフレ脱却などと言っていますが、そんなものが絵に描いた餅であるのは誰の目にもあきらかです。この物価高に対応できるだけの賃上げを獲得できる労働者なんてホンの一部です。多くの国民は物価高に苦しめられ、貧しき者は益々貧しくなるばかりです。

実際に「物価高と賃上げの好循環」という謳い文句とは逆に、実質賃金は下がり続けているのです。時事通信が運営する投資家向けサイトの「時事エクイティ」も、次のように書いていました。

時事エクイティ
物価高上回る賃上げ、遠く=実質賃金下げ幅拡大、消費足かせ―23年

 6日発表された2023年の毎月勤労統計調査(速報)では、物価の変動を反映させた実質賃金が前年比2.5%減少した。2年連続で前年を下回り、下げ幅は9年ぶりの大きさに拡大。政府が目指す「物価上昇を上回る賃上げ」の実現には程遠い状況だ。物価高による賃金の目減りが家計を圧迫、23年の消費支出は3年ぶりに減少した。
 厚生労働省によると、23年は基本給と残業代などを合わせた名目賃金が、労働者1人当たり月平均で32万9859円と1.2%増加。3年連続の上昇となったが、新型コロナ禍による賞与などの大幅な落ち込みからの反動増が見られた前年(2.0%増)から伸びは鈍化した。
 一方で、実質賃金などの算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年比3.8%上昇。春闘で30年ぶりの高水準の賃上げを達成したものの、物価高騰に賃金上昇が追い付いておらず、生活実感に近い実質賃金の下落に歯止めがかかっていないのが実情だ。


日経平均株価が34年ぶりにバブル後最高値を更新するのではないかとメディアは大騒ぎしていますが、それはやっと34年前の水準に戻ったにすぎないのです。一方、この34年間で、アメリカの株価は約14倍、ドイツは9倍、イギリスと韓国は約3倍になっているそうです。

日本は2023年の11月と12月に2ヶ月連続してGDPがマイナスになり、それがドイツに抜かれた直接の要因になったのですが、日本経済はむしろ縮小しはじめている(不況に陥りつつある)のです。にもかかわらず、メディアは、マネーゲームの狂熱をまるで日本経済の再生のように報じているのでした。

しかも、GDPの半分を占める個人消費が、物価高に対する「節約志向」によって低迷したことで、GDPが押し下げられたと言われながら、その裏では、メーカーや銀行や電力会社など大企業は、値上げによって史上空前の利益を上げているのでした。

能登の地震のニュースの中で、被害を受けた家にブルーシートを高額で売りつける悪徳業者の話がありましたが、日本の大企業はまさにこの悪徳業者と同じことをしているのです。

にもかかわらず、政府は、先客万来のインバウンドでGDPを押し上げるという、雲を掴むような話に頼るだけです。個人消費の落ち込みや火事場泥棒のような大企業の収奪には、為す術もないのか、見て見ぬふりをするだけなのです。

■韓国の後塵を拝する日本


ニッチもサッチもいかなくなっているのは、経済だけではありません。”反日カルト”に国を売りながら、胸にブルーリボンのバッチを付けて「愛国」者のふりをしていた安倍派の国会議員たちが、その裏では裏金作りの”脱法行為”を行っていたという、呆れてものが言えない話もありました。安倍派だけで裏金は6億円超あり、二階派も5.7億円あったそうです。

彼らは国会議員というより、もはやヤクザと言うべきでしょう。こういう人間たちが法律を作っているのですから、「政治資金」と名乗れば無税になり、その上、年間315億円(2023年)の税金が政党助成金として各政党に支給されるという、税金を食い物にするお手盛りの法律が作られるのは当然でしょう。税金を食い物にするという点では、政党助成金を受け取ってない共産党を除いて、与党も野党も同じ穴のムジナなのです。

安倍派の呆れた行状には、愛国と売国が逆立した”戦後の背理”が見事に示されていると言えますが、と同時に”戦後の背理”は、この国には愛国者なんていないことを示しているのです。

(前も同じことを書きましたが)テレビなどのメディアは、まるで大谷を中心に地球が回っているかのように、連日、大谷のどうでもいい話を延々と伝えていますが、もはや誇るべきは大谷だけなのかと言いたくなります。ところが、何ということでしょう、ドジャースの開幕戦(対パドレスの開幕戦)は、日本ではなく韓国で行われるというのですから、もう笑うしかありません。

これもダイソーの買収と同じで、日本の凋落を表していると言えるでしょう。日本では高額の観戦ツアーが発売されるそうですが、岸田首相も開幕戦の当日に韓国を訪問して、開幕戦を観戦する話さえあるそうです。文字通り、恥も外聞も捨てて、韓国の後塵を拝するようになっているのでした。さすがにこれでは、ネトウヨと雖も「ニッポン凄い!」と自演乙することはできないでしょう。


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