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(写真AC)



■世界の多極化のスピード


くどいようですが、私は、アメリカが唯一の超大国の座から転落して、世界は間違いなく多極化すると言い続けてきました。その最初の兆候が2008年のリーマンショックだったのです。そして、アメリカの凋落にとどめを刺したのが2021のアフガン撤退でした。

今年11月のアメリカ大統領選挙では、トランプが返り咲く可能性がきわめて高いと言われていますが、そうなれば、2020年の前回の選挙に敗北した際、支持者を煽ってワシントンの連邦議会議事堂の襲撃事件を起こした張本人が、再びアメリカ大統領に返り咲くことになるのです。

これはもうメチャクチャとしか言いようのない歴史的な珍事ですが、しかし、珍事として笑い飛ばすことのできない深刻な問題を含んでいるのは言うまでもありません。トランプの返り咲きは、共和党と民主党の(実質的な)二大政党制や、アメリカンデモクラシーのお粗末な現実を示しているだけでなく、アメリカがもはや取り返しのつかない分裂と混乱に陥り、自滅への道をひた走ることをも同時に示しているのです。

世界は多極化して、世界にいくつかのセクターが生まれ、アジアの覇権は中国が握り、赤い資本主義による”新中華思想”が世界を席巻するようになると言い続けてきましたが、その通りになっています。一方でイスラムが台頭し、大ロシア主義も復活するだろうと書きましたが、現実は予想を超えた速いスピードで進んでいることがわかります。

■BRICSの台頭


今のロシアのウクライナ侵攻も、ガザをめぐるハマスとイスラエルの対立も、その脈絡で見るとより理解が進むように思います。「休眠から目覚め」(ブルームバーグ誌)ロシアや中東の”武器製造工場”として存在感を見せ始めている北朝鮮が、「バカにできない国」になりつつあるのも然りです。

西側のメディアは、ウクライナに侵攻したロシアは疲弊し、今にも敗北しそうだと言っていましたが、ここに来て急に、敗北しそうなのはむしろウクライナで、ロシアは侵攻前より手持ちの現金は13倍にも増えて国庫は潤沢になっている、というニュースが出ています。

CNN
ロシア国庫、異例の潤沢ぶり 手持ち現金は侵略前の13倍以上

その背景には、言うまでもなく、BRICSの台頭があるのです。BRICSの国々が経済的にも政治的にも欧米の支配から脱し、欧米に対抗し得るような大きな力を持つようになったからです。そして、BRICSに、昔は「第三世界」と呼ばれ、現代は「グローバルサウス」と呼ばれる発展途上国が連なって大きな市場を形成しているからです。

国際経済の専門家やロシア研究者が競馬の予想屋ではないことは重々承知していますが、それにしても、世界経済やロシアのウクライナ侵攻に関して彼らが言っていることは、的外れのトンチンカンなことばかりです。

もちろん、アメリカが凋落すると言っても、戦後世界に君臨した唯一の超大国だったので腐っても鯛で、その資産は莫大なものがあります。アップルやマイクロソフトやグーグルなどアメリカの企業が、インターネットという歴史的な情報革命を担い、時代をリードしてきたことは否定し得ない事実です。

下の図は、東京新聞に掲載されていた1989年と2023年3月末現在の世界の時価総額トップ10の比較ですが、これを見ると、日本の企業の没落と先端産業をけん引してきたアメリカの企業の台頭が一目瞭然です。

世界時価総額ランキング 093833
※東京新聞Webより https://www.tokyo-np.co.jp/article/252608

■77歳の狂人と81歳の認知症


しかし、これは国境を飛び越えて世界の市場でビジネスを展開する経済の話にすぎません。大統領選挙はあくまで国内政治の問題なのです。トランプの逮捕や暗殺など大どんでん返しが起こらない限り、アメリカが大混乱に陥り、自滅していくのは避けられないでしょう。だからと言って、トランプよりバイデンがマシかと言われても返答に窮するような話で、今回の大統領選挙は77歳の狂人と81歳の認知症の老人の戦いでしかないというのはその通りです。

万が一バイデンが当選しても、今の状態ならあと4年はとても持たないでしょう。そのことはみんなわかっているのですが、でも、誰もそうは言わないのです。アメリカ国民にバイデンを選べという方が無理でしょう。

バイデンのような高齢者が未だに大きな力を持っている民主党の党内力学を考えるとき、民主党はトランプ(トランプ支持者)に支配された共和党を嗤えないのです。

もっとも、トランプであれバイデンであれ、今のアメリカに民主主義や正義を語る資格はありません。ブラジルのルラ大統領が、イスラエルがガザでやっていることはナチスのホロコーストと同じだと発言し、それに対してイスラエルのネタニヤフ首相が猛反発したというニュースがありましたが、イスラエルを”現代のナチス”のような怪物国家にしたのはアメリカとイギリスなのです。そして今なお、アメリカは一貫してイスラエルのホロコーストを支持しているのです。

ヨーロッパ各国も、名にし負う腐敗国家であり、ファシストの聖地でもあるウクライナにのめり込んだ結果、分裂と混乱と右傾化の返り血を浴びてどこも疲弊しているのでした。何だかプーチンの高笑いが聞こえてくるようです。

私たちは、二度の大震災や未曾有の原発事故を経験し、百年に一度というパンデミックも経験しました。知らず知らずのうちに、”歴史の生き証人”みたいになったのですが、もうひとつ、近代をリードしてきたアメリカやヨーロッパの凋落と歴史からの退場を、今まさに目の当たりにしているのです。
2024.02.26 Mon l 社会・メディア l top ▲