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(写真AC)



■「凄い、凄い」の大合唱


花巻東高校野球部の佐々木麟太郎選手がアメリカの名門、スタンフォード大学に推薦入学することになったそうで、大きな話題になっています。メディアは「凄い、凄い」の大合唱です。

スタンフォード大学は、日大のようにスポーツさえできればフリーパスで入学できるような大学ではなく、学業も優秀でないと入学できないと言われているそうです。

テレビ朝日の「モーニングショー」にコメンテーターとして出演しているバイオリニストの廣津留すみれさんは、私の地元の大分上野丘高校を出てハーバード大学に入学したのですが、地方の公立高校からハーバードに入学したとして話題になり、本を出したりテレビに出演するようになったのでした。

廣津留さんが出た大分上野丘高校は、大分県では屈指の進学校で、偏差値も70を超えています。一方、佐々木麟太郎選手の花巻東高校の偏差値は、私立なのでいろんなコースを設けているのですが、特進コースでも49、スポーツコースは44、進学コースは42です。

そんな高校からハーバードと並び称されるくらいの難関大学と言われるスタンフォードに進むのは、たしかに「凄い」とは言えますが、しかし、いくら学業優秀とは言え、スタンフォードに入学するのはそれこそ奇跡に近いような話でしょう。メディアも、「凄い」ではなく「奇跡だ」と言うべきなのです。

しかも、スタンフォード大学の合格率は4%であるにもかかわらず、佐々木麟太郎選手は野球部の監督とリモートで面接しただけで合格したそうです。大学は高校時代の成績も考査して入学を認めたと言うのですが、その高校は特進コースでも偏差値49の高校なのです。

さらに驚くことに、入学者の5%しか適用されない奨学生に選ばれ、その総額は4年間で5000万円と言われているのです。奨学生の場合、毎年学業などの審査が行われて更新の可否が決められるそうですが、佐々木凛太郎選手は毎年の審査も免除され、5000万円の返済も免除されるのだとか。まさに至れり尽くせりなのです。

当然、監督とリモートで面接しただけでなく、水面下では入学に際しての条件面での交渉も行われたはずですが、しかし、メディアの手にかかればすべてが「凄い」の言葉で片づけられ、”英雄譚”として扱われるのでした。

廣津留すみれさんも、陰で「冗談じゃないわよ」「あんなのと一緒にしないで貰いたいわ」と悪態を吐いていたとしても不思議ではないのですが、テレビではひたすら歯の浮いたような言葉で佐々木麟太郎選手を持ち上げて、”英雄譚”の太鼓持ちを演じているのでした。

■「国内的鎖国と国際的開国」


松本人志の性加害疑惑でも、テレビやスポーツ新聞や、文春など一部を除いた週刊誌は、独自取材をせずに、松本や吉本興行に忖度したコタツ記事でお茶を濁しているだけですが、佐々木麟太郎選手に関してもその姿勢は変わりません。ただひたすら「凄い、凄い」と持ち上げるだけです。

こういうのを「ニッポン凄い!」と言うのか。少しでも考えれば、そんな単純な話ではないことぐらいわかりそうなものです。

テレビやYouTubeは、外国人観光客が日本の食べ物や日本の風景に感動したとかいう話をバカのひとつ覚えのようにくり返し流していますが、一方で、東アジアからの観光客が頭打ちになり、欧米からの観光客も横ばいで、タイやマレーシアやインドネシアやシンガポールなど東南アジアからの観光客が主流になっているという、インバウンドの先行きを暗示するような現実には誰も触れないのです。

現在、世界は有史以来の観光旅行ブームなので、観光客が増えるのは当たり前ですが(日本だけでなく、どこの国でも観光客が増えているのですが)、その分競争も熾烈を極めているのです。

ひと昔前の発展途上国のように(!)、日本でも外国人観光客向けの”ぼったくり価格”が横行しているようですが、メディアは間違ってもそれを”ぼったくり”とは言わないのです。昔はぼったくられる方だったのですが、今はぼったくる方に身を落としているのでした。

外国人から批判されると「大変だ」と右往左往し、逆に「外交辞令」で褒められると天にも昇るほど大喜びする、その右顧左眄するだけの(それでいて狡猾な)日本人の精神構造は何百年経っても変わらないのです。

丸山眞男は、1961年に刊行した『日本の思想』(岩波新書)の中で、「国内的鎖国と国際的開国」という文章を書いていますが、丸山は、国内では個々の集団がタコツボ化して没交渉になっている一方で、それぞれが「八方破れで、外に向かって開かれている」、そういった「鎖国」と「開国」が無勝手流に同居しているのが日本社会の特徴だと言うのでした。

丸山の理論を敷衍すれば、前も書いたような日本の企業の「パラダイス鎖国」で浮利を追う内弁慶な体質などは、「国内的鎖国」の最たるものと言えるでしょう。でも、その一方で、「亀山モデル」などと言い、さも世界にも認められたかのように自演乙する「国際的開国」も忘れないのです。

何でもいいから、とにかく世界に認められたら「一流」なのです。そのために(嘘でもいいから)世界という「箔」が必要なのです。この「国内的鎖国と国際的開国」という馬から落馬したような話は、鹿鳴館時代から連綿と続く日本人の精神構造をよく衝いているように思います。

佐々木麟太郎選手のスタンフォード進学の報道も、陰では首をかしげながら(スタンフォードって日大と同じじゃないのかと思いながら)、誰もおかしいと口に出して言わないのです。そう言えば、タコツボ化した集団トライブからパージされる(村八分にされる)ことがわかっているからです。そして、単にメディアが大谷に続く新しいヒーローを欲しているだけなのに、スタンフォード進学をそれこそ「国内的鎖国と国際的開国」で牽強付会に解釈した”英雄譚”が、御大層に独り歩きしているのでした。

■大谷翔平の結婚 ※追記


佐々木麟太郎の高校の先輩の大谷翔平が、結婚を発表したことで、日本中が大騒ぎしています。関西テレビの「newsランナー」に言わせれば、日本だけにとどまらず「世界中が大谷ロス」に陥っているのだそうです。

Yahoo!ニュース
FNNプライムオンライン
「大谷さんと結婚したかった…」世界中が大谷ロス 大谷選手が語ったお相手は「日本人で…」 高校生からこれまでの大谷選手の「好きな女性のタイプ」を検証

さすが維新の応援団の大阪のテレビ局だけあって、同じデマゴギーでもスケールが違うのです。しかも、あろうことか、”オータニ”つながりで、「結婚式の増加に期待を寄せている」として、ホテルニューオータニにまで取材するあり様です。私は、「痴呆的」という言葉しか浮かびませんでした。その延長に維新人気があるのでしょう。

「大谷ロス」で夜も眠れない女性が続出という言い方が常套句のようになっていますが、これもミソジニーの一種と言えるでしょう。ミーハーな女性を街頭インタビューに引っ張り出して、そんなパープリンなニュースに仕立てているのでした。

もっとも、”悪ノリ”は国民を脅して年間6800億円近くの受信料を巻き上げる「みなさまのNHK」も同じで、よりによって自民党の裏金問題で開かれた政倫審(衆院政治倫理審査会)の中継中に、「大リーグ・大谷翔平選手 結婚を発表」「相手は日本人女性」というニュース速報のテロップを流したとかで、顰蹙を買っているのでした。

世界に誇る百均のダイソーが韓国資本になり、今や世界に誇るのは大谷しかなくなったかのようで、まさに大谷様々なのです。

報道によれば、既に去年婚約をしていたそうですが、婚約のニュースはいっさい表に出ていませんでした。これだけメディアが大谷に張り付いていながら、ホントに誰も知らなかったのかと思います。

かつてのイチローもそうだったと言われますが、まるで腫れ物に触るような感じで、見事なほどメディアはコントロールされているのでした。言うなれば、メディアは武装解除されて、大谷の足下に跪いているのでした。

もしかしたら、皇室より言論が統制され、スキャンダルもタブーになっているのかもしれません。

佐々木麟太郎は、そんな大谷翔平に続けとばかりに青田買いされているのですが、ホントに大谷のように化けるのか。知ったことじゃないけど。


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