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(Unsplash)



前の記事に「追記」として書いたものが、私のミスで削除されてしまいました。それで、独立した記事として、もう一度書き直しました。

■既視感


大谷翔平選手は、日本時間26日の朝、ドジャーススタジアムで会見を行い、専属通訳の水原一平氏の件について、20日の韓国での開幕戦後のミーティングの席で、水原氏の告白を聞いて初めて知った、自分の口座からブックメーカーに送金していたことも知らなかった、水原氏がESPNのインタビューを受けていたことも知らなかった、水原氏は自分のお金を盗んだ、自分は賭博はやってない、と弁明したのでした。会見の場には100人近くのメディア関係者が集まっていたものの、質疑応答もなく、声明を読み上げただけで会見場を後にしたそうです。

私は何だか既視感を覚えました。その数日前、日本の国会では、裏金問題の政治家たちが同じように弁明していたからです。台詞までよく似ています。

特に送金の件に関しては突っ込みどころ満載なので、質疑応答を避けたのでしょう。と、代理人の弁護士あたりからそう指示されたに違いありません。

■大谷は被害者ではない


当然、アメリカのメディアからはきびしい声が上がっています。

全国紙「USAトゥデー」は「ドジャース・大谷翔平、元通訳にだまされ賭博疑惑に目を奪われたと語る」との見出しで報道。「暗い秘密が暴露されたわけでもなく、刺激的な告白があったわけでもなく、謝罪があったわけでもない。メジャーリーグ最大のスター、大谷翔平は月曜日の午後、ドジャー・スタジアムで12分間、大勢の記者とテープレコーダーの前に座り、少しも緊張することなく、ただ単にだまされたのだと語った」と厳しい論調で報じた。

スポニチ
大谷翔平 違法賭博問題会見に米メディアの反応は 水原氏がなぜ送金できたか不明点を指摘、厳しい論調も


J・トリビオ記者(MLB.com)
「(略)質問したいことはたくさんあった。どうやって一平が翔平の口座にアクセスできたのか、大金が動いたのに(金融機関から)何の連絡も来なかったのか、とかね。僕なんて韓国でカードで7ドル(約1000円)支払っただけで、『通常と異なる動き』というお知らせが来て、カードが止まりそうになったよ。一平と翔平は親友や家族のような存在だった。だから、ミーティングで初めて知ったというのは信じるのが難しいかな」

M・ディジオバナ記者(LAタイムズ)
「(略)6年間毎日一緒にいた人が、ギャンブルの問題を抱えていたことに気づかなかったのかは疑問だし、どうすれば銀行口座にアクセスできるかは聞きたいね。もし自分の妻が500万ドル(約7億6000万円)を送金して全く気がつかないってことはない。彼にしたら500万ドルなんて大した金額じゃないのかもしれないけど…。(略)」

スポーツ報知
大谷翔平の会見に米記者は厳しい反応…「真実と異なるかも」「本当に何が起きたのかは分からない」


そもそも送金したと言っても、私たちのような数万円のはした金ではないのです。1回で7500万円の大金を数回に分けて送金しているのです。当然、二重認証で大谷のスマホに認証コードが送信されたはずですし、ましてやこれほどの大金であれば、銀行はマネーロンダリングを防ぐ責務を課せられていますので、二重認証だけでなく、もっと厳格な本人確認も求められたはずです。なのに、知らなかったとは、アメリカのメディアならずとも、とても信じられない話です。

アメリカのメディアが言うように、大谷はただの「野球バカ」で、精神的にはまだ子どもなのでしょう。日本の野球ファンは、その精神的に未熟な部分を「好青年」と解釈しているだけではないのかと思います。

水原氏がミーティングの席でみずからギャンブル依存症だと告白したとき、大谷は水原氏が言っていることがよく理解できなかったそうです。それは、信じたくないという意味で理解できなかったということではないのです。単に喋っている英語がわからなかったからだそうです。

大谷は渡米して既に6年以上になるのですが、未だに英語をマスターしていません。まだ20代の若者であることを考えると、ちょっとお粗末と言うしかありません。今回の問題でも、大谷のお粗末さが影を落としているような気がしないでもないのです。

日本では、水原氏は通訳と言っても日常の雑務まで行っていたので、大谷の口座の管理を任されていたのではないかという話があります。仮に、二重認証や本人確認の問題を脇に置き百歩も二百歩も譲って、大谷のあずかり知らぬところで杉原氏が送金したのだとしても、銀行の口座開設の際の約款にも書かれているとおり、口座は自己責任で管理しなければならず、キャッシュカード等も含めて他人に譲渡したり貸与することは固く禁じられています。約款上でも大谷の責任はきわめて大きく、同情の余地はありません。しかも、アンダーグランドのブックメーカーに送金されたとなれば尚更です。文字通りマネーロンダリングに加担したわけで、大谷は間違っても被害者なんかではないのです。

■日本的な”情緒”


弁護士の菊間千乃氏は、「モーニングショー」で、大谷は「嘘をついているようには見えなかった」と言っていましたが、そういった個人的な印象でことの真偽を口にするのは弁護士としてどうなのかと思いました。

コンプライアンスが重視されるようになったのに伴い、テレビのコメンテーターにやたら弁護士が起用されることが多くなりました。でも、彼らは、法律の専門家というより、番組で与えられた役割を演じる電波芸者タレントのそれでしかありません。にもかかわらず、弁護士という肩書で解説されると、適当が適当ではなく、あたかも信憑性があるかのように受け取られるのでした。中には、ちょっとでも批判されるとすぐ名誉棄損で訴える、始末の悪いタレント弁護士さえ出ているのでした。前も書きましたが、ホントにワイドショーに出ているような弁護士は何とかならないものかと思います。

また、新しく日本テレビの「news every.」のキャスターに加わった斎藤佑樹も、同番組の中で、元日本ハムの同僚の大谷について、「彼自身の言葉でちゃんと話している姿が、誠実な印象を受けました」と述べたそうです。

それらにあるのは、如何にも日本的な”情緒”にすぎません。でも、それはほとんど意味がないものです。

アメリカのメディアやアメリカの野球ファンは、450万ドル(6億8千万円)の大金を大谷のアカウントで送金したのに、大谷が知らないなんてあり得ないと言うのですが、日本の野球ファンは、大谷ならあり得る、そう「信じる」と言うのです(笑)。日本では「信じる」のひと言で思考停止してしまうのでした。それは、メディアも同じです。

大谷を批判すると、「大谷が嫌いなんだろう」と言われるだけです。それで耳を塞ぐのです。誰かの台詞ではないですが、そんな「バカと暇人」がヤフコメなどを通して可視化され、「水は常に低い方に流れる」世論を形成するようになったのでした。

前の記事で書いたように、朝日新聞は、大谷人気は「日米韓と国境を越えて」広がっており、韓国人の「反日感情」も「ショーヘイに抑え込まれた」と書いていましたが、たかが野球なのにそこまで言うかと思いました。もはや妄想と言うしかありません。

ついでに話を飛躍すれば、保田與重郎が戦前に書いた『日本の橋』(1936年)などを読むと、安倍晋三が『美しい国へ』で換骨奪胎したような、日本的な”情緒”と浪漫ロマン主義的と言われる空疎な言葉がご大層に溢れる文体に、戦後生まれの私たちは辟易させられると同時に、それがキッチュであることもわかるのでした。保田の言葉とその日本的な”情緒”は、日本を平定した渡来人の政権が自画自賛した「大和は国のまほろば」「大和しうるわし」のコピーにすぎないのに、「日本精神」の原点、国(天皇)に殉じる美学として、戦時イデオロギーに利用され、戦意高揚に一役買ったのでした。

考えすぎだと言われるかもしれませんが、朝日の大仰なもの言いは、保田と似たような気分(”情緒”)で大谷を語っているように読めなくもないのです。悪ノリするにも程があると言いたくなります。

今回の問題を冷静に見ると、合理的な視点で大谷にきびしい目を向けるアメリカのメディアやアメリカの野球ファンの方が、アジア人への偏見を差し引いてもなお、日本のメディアや日本の野球ファンよりはよほど健全で、まともな気がするのでした。
2024.03.27 Wed l 芸能・スポーツ l top ▲