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(日刊ゲンダイより)


■非常識な開示要求


松本人志が「週刊文春」を名誉毀損で訴えた裁判の第一回口頭弁論が、28日(木)、東京地裁で開かれました。

もっとも、第一回の口頭弁論は、原告と被告双方が提出した陳述書と答弁書を確認して、今後の裁判の争点を整理するのが目的なので、僅か5分で閉廷したそうです。

その中で素人の私でも驚いたのは、原告の弁護士が、文春に性加害を告発した「A子さん」「B子さん」の個人情報を明らかにするよう求めたことです。

日刊ゲンダイは、次のような司法記者のコメントを紹介していました。

日刊ゲンダイDIGITAL
文春側弁護士も呆れた…松本人志「事実無根」主張なのに「被害者個人情報開示」要求の矛盾

「松本サイドは『A子さん、B子さんが特定できないと認否のしようがない』と主張し、A子さん、B子さんの氏名(芸名含む)、住所、生年月日、携帯電話の番号、LINEのアカウントを明かし、容姿がわかる写真まで用意するように要求しています。これに対して文春サイドの喜田村洋一弁護士が会見で“47年、弁護士やっててこんなことは初めて”と呆れていたように、本人が記事に書かれたようなこと(性加害)を一回もやったことがないなら、全否認でいい。2人以外にも複数の女性に対して同様の行為を行っていて、誰だかわからないという場合においてなら個人の特定に意味はありますが、少なくとも記事に書かれたことについて事実無根と主張しているのですから特定する必然性はありません。個人情報の開示要求は嫌がらせに近いものを感じます」(司法担当記者)


言うまでもなく、「A子さん」「B子さん」は、裁判の当事者(被告)ではありません。松本は「A子さん」「B子さん」を訴えているわけではないのです。裁判の相手は文春です。なのに、文春に彼女たちの個人情報の開示を求めるなど、そんな非常識なことがまかりとおるのかと思いました。

それに、記事にも書いているように、「A子さん」「B子さん」は街でナンパした女性ではなく、もともと小沢の知り合いの女優の卵だったりと芸能界の周辺にいた女性たちで、「A子さん」に至ってはアテンドした小沢一敬とLINEのやり取りをしているのですから、わざわざ裁判の中で個人情報を求めなくても、小沢に聞けばわかるはずです。

だからこそ、「くれぐれも失礼のないように。(引用者註:松本を)怒らせるようなことをしたら、この辺、歩けなくなっちゃうかもしれない」(文春記事より)という小沢の脅しも利いたのでしょう。また、小沢が間をおかず休業して表舞台から消えたにも、そういったことと関係しているのかもしれません。

文春側の喜田村洋一弁護士は、「『まるで警察みたいなものでしょ。それと原告の記憶喚起のために容貌、容姿が分かる写真を出してくれと。出してくれないと、週刊文春に書かれた内容が事実か、事実じゃないか認否できないと言っている』と首をかしげた」(スポーツ報知)そうです。

何だか最初から白旗を上げているような気がしないでもありませんが、司法記者のコメントにもあるように、文春の記事は捏造だと主張している(全否定している)のですから、記憶もクソもないでしょう。記憶が曖昧なのに全否定するというのは、あきらかに矛盾しているのです。それに、記憶を喚起しなければならないという主張は、松本自身が相当数の女性を相手にしたと告白しているようなもので、語るに落ちたとはこのことでしょう。

■下劣な意図


ネットに、文春のX(旧ツイッター)のフォロワーは40万人だけど、松本人志のフォロワーは900万人もいるので、ネットの世論を使えば松本は文春を圧倒する力を持っている、というようなことが書かれていましたが、松本側は、そういったお笑い芸人としての人気を背景にした、嫌がらせどころか、むしろ脅しブラフと言ってもいいような下劣な意図をチラつかせている気がしてなりまん。「A子さん」「B子さん」ともに、証人で出廷することも辞さないと言っていますので、松本側とすれば、何としてでも証言するのを阻止しなければならないのです。そのために、わざと個人情報の開示を要求して(暗にネットに晒されることを仄めかして)、彼女たちにプレッシャーをかけているのではないでしょうか。

メディアも松本の非常識な要求の裏にある意図を報道すべきですが、しかし、ネットに出ているのは文春に個人的な感情を持つコメンテーターたちの牽強付会な(ため、、にする)コメントばかりです。中には、弁護士でありながら、松本の要求は限定付きで容認できるなどとコメントしているタレント弁護士もいるくらいです。

松本の性加害疑惑の流れは潮目が変わったと言う人もいますが、それは松本や吉本興行に忖度するメディアが、この問題について発言した文春の幹部の言葉尻を捉えて、潮目が変わったように情報操作しているからです。松本のファンたちの論理は、無知蒙昧でメチャクチャですが、メディアはメチャクチャを指摘するどころか、逆にそれに同調しているあり様です。欧米では、SNSが若者の心に悪影響をもたらしているとして、SNSの規制に乗り出す動きがありますが、それは若者だけの話ではないのです。

ネット上では既に告発した彼女たちに誹謗中傷が浴びせられており、個人を特定する動きもあるそうです。池袋の暴走事故で妻子を亡くした遺族にさえ、「金目当てだろう」などと誹謗中傷が浴びせられるくらいですから、告発した女性たちが悪意を持った松本ファンのターゲットにされるのは火を見るよりあきらかです。松本側の開示要求がわざとらしく見えるのも、そこにチンピラまがいのいかがわしい底意があるような気がするからです。

最近は#MeToo運動に対する反発で、お金にものを言わせて、告発した女性にスラップを仕掛けるような動きが芸能界やスポーツ界から出ていますが、松本のやり方はその典型と言っていいのかもしれません。吉本興行やテレビ局は、それでも松本に同調し松本を擁護するのか、と言いたいのです。松本人志は、どうあがいても、トンチンカンなアンシャンレジュームでしかないのです。

私は今、たまたま臨床心理士の信田さよ子氏の『家族と国家は共謀する』(角川新書)という本を読んでいるのですが、もし週刊文春の記事にあったアテンドの「指示書」が本物なら(筆跡鑑定すればすぐに証明できるはずですが、松本は嘘だと提訴していませんので本物なのでしょう)、松本人志の性向にもアディクション(嗜癖)の傾向があるように思えてなりません。皮肉でも何でもなく、裁判よりまずカウンセリングを受ける方が先決ではないかと思うのです。

■裸の王様 ※追記


第一回口頭弁論で示された非常識な開示要求にも、松本人志の裸の王様ぶりが露呈されているように思います。松本の不幸は、若くして漫才界の頂点を極めたために、アドバイスをする人間がいなくなったことにあるのではないか。そう思えてなりません。

疑惑のパーティに同席していた放送作家も、松本の子分みたいな人物だし、吉本興業の現社長も前社長も、ダウンタウンのマネージャーだった人物です。

紀藤正樹弁護士は、Xで、「A子さん」「B子さん」の個人情報の開示を求めた「松本氏側の主張は実務上あまりにも非常識な主張」だとコメントしていたそうですが、それが(文春に個人的な感情を持つタレント弁護士を除いた)法曹界の常識であり、多くの弁護士の一致した見方なのだと思います。

どうして裁判の常識を無視したような主張が出て来たのかと言えば、立証方針に松本の意向が強く働いたからでしょう。

あの八代英輝弁護士でさえ、松本側の開示要求に「びっくりした」と言っているのです。

東スポWEB
八代英輝氏 松本人志裁判の身元開示要求に驚き「準備がお粗末」「開示するわけがない」

「訴えてからこの何か月の間にいろいろ打ち合わせもしてきたと思うんですけど、この第一回の口頭弁論になって初めて『A子さん・B子さん誰ですか』って、そんな素朴な疑問今から始めるんだっていうところがある意味衝撃でした」と語ると「なんの立証計画も方針も立ってないって自分で言ってるようなもの」と指摘した。


八代弁護士は「準備がお粗末」と言っていますが、「お粗末」と言うなら、「準備」だけでなく、ダウンタウンの”チンピラ芸”を地で行くような松本の意向が強く反映された原告側の姿勢をそう言うべきでしょう。

くり返しますが、ホントは「A子さん」「B子さん」を知っているのに知らないふりをしている、そこに嫌がらせ以上の意図があるように思えてならないのです。ヤメ検の弁護士も、裸の王様に振り回されているのかもしれません。

専門家の間には、最初から、松本の提訴はかなり無理があるという声がありましたが、何だか第一回目の口頭弁論からずっこけた感じです。
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