ネットを探索していたら、井上公三先生のサイトを見つけて、なつかしい気持になりました。井上先生はパリ在住の版画家ですが、私が最初に勤めたポストカードの会社が先生の版画も扱っていて、私が一時担当していた時期がありました。

先生は冬は南伊豆の別荘ですごされていて、私はその別荘に二度伺ったことがあります。一度は沼津の個展会場にお連れするために車で迎えに行ったのですが、途中、「美味しい店があるから昼食を食べて行きましょう」と言うのです。しかし、個展会場には先生を待っているお客さんがいるし、その日は地元のテレビ局も取材に来ていました。「皆さん、待っていらっしゃいますから」と言ったのですが、先生は「大丈夫ですよ。あわてることはありませんよ」とまったく意に介してない様子でした。それで、二人で先生行きつけの和食の店で食事をして、結局、二時間近く遅刻をして顰蹙をかった苦い思い出もあります。

また、先生の実家は当時、永田町の首相官邸のすぐ横にありました。毎年、国から土地を売ってくれと言われて困っていると言ってました。実家にもお邪魔したことがありますが、先生は下駄を履いてすぐ近くにある霞ヶ関ビルの中の喫茶店に連れていってくれました。あのあたりは文字通り国の中枢機関が集まっている一帯なので、カランカランと下駄を鳴らして歩いていると、しょっちゅう警察官から呼び止められるんです、と笑いながら話していました。

そんな先生の性格とお父さんが元国会議員だという育ちのよさが、あの幻想的な中にどこかハッピーで暖かみのある作品の背景になっているのかもしれません。ちなみに、私も先生から作品を頂いて、今も大事に持っています。

先生のサイトで作品が紹介されていますので、是非ご覧になってみてください。
2005.10.31 Mon l 仕事 l top ▲