
一定の世代以上の方でないとわからないと思いますが、紙ふうせんの「冬が来る前に」を聴きながら銀座の通りを歩いていたら、ちょっとセンチメンタルな気分になりました。
私は、銀座の老舗や高級店とはまったく無縁な人間ですが、銀座の街にはどこか魅かれるところがあります。それは、銀座には駅ビルやショッピングセンターがないからかもしれません。
20年前、この業界に入った当初、ちょうど今頃の時期だったと思いますが、私は、仕事で夕暮れどきの銀座の街を歩いていました。そして、松屋の前を通りかかったとき、店頭からクリスマスのメロディが流れてきたのです。その途端、私は、何故か胸がいっぱいになり涙が溢れてきたことがありました。
銀座にはそんな人を包み込むような雰囲気があります。それは、(同じことをくり返しますが)長い間にその土地の風土が培ってできた街だからではないでしょうか。たとえ縁がなくても、表通りの老舗や高級店から疎外されている感じはありません。それが銀座の魅力ではないでしょうか。
嫌なことがあったときや疲れたときなど、私は銀座に行きたくなります。そして、人込みの中をひとりで歩いていると、なんとなく慰められ元気づけられているような気持になるのです。
最近も個人的に、それこそ人間のおぞましさを見せつけられるような出来事がありました。そんなとき、私には「汚い」とか「卑怯だ」とかいった言葉しか思い浮かばず、人間の本性に関してひどくボキャブラリーが貧困な自分を思い知らされたのでした。それは、今までそういった人間の本性と正面から向き合うことがなかったからなのかもしれません。
そんな情けなさとやり切れなさの中で、私の足は銀座に向かったのでした。

ただ、私は、話題のマロニエゲートにはあまり関心がありません。いつからあの横の通りがマロニエ通りと呼ばれるようになったのでしょうか。そして、その入口にあるからマロニエゲートだなんてネーミングからしてちょっと安易すぎる気がします。事業主体は三菱地所だそうですが、「如何にも」という気がしないでもありません。
真向かいのプランタンも戦々恐々と言われていましたが、むしろプランタンが戦々恐々としているのは、先月オープンしたばかりの有楽町イトシアの方でしょう。マロニエゲートはわずかひと月で主役の座を渡した感さえあります。
それにしても(余談ですが)、せっかく新しくビルを建てたのにどうしてあんな古臭い造りになったのでしょうか。特にエスカレーターに乗っているときの窮屈な感じはどうにかならなかったのでしょうか。”高級”ということに関しても、どこか違うような気がしてなりません。
仕事だけでなく、プライベートでも銀座にはいろんな思い出がありますが、そんな思い出をいつまでも大事にしてくれる街であってほしいなと願わずにおれません。