
免許証の更新がせまっているため散髪に行きました(九州では「床屋に行く」ではなく「散髪に行く」という言い方をします)。どうして免許証の更新と散髪が関係があるのかと言えば、更新手続きに写真が必要なのですが、その写真を撮るためです。古い日本人は写真を撮るときも散髪に行かなければと思うものなのです。
私の場合、結婚式に呼ばれたときなどもやはり、散髪に行くのが習慣になっています。散髪に行かないで結婚式に出席するなど失礼な気がしてならないのです。子供の頃は修学旅行や社会見学やPTA(父兄参観日)のときも必ず散髪に行かされたものです。
昔は”よそ行きの服”というのもありました。普段はタンスの奥に仕舞っておいて、たとえば、旅行や正月やお祭りなど特別のときしか袖を通すことができませんでした。そして、よそ行きの服を着るときは、何故か下着まで新しくなるのが通例でした。文字通り、特別な日(ハレの日)用だったのです。
今はよそ行きの服なんてあるのでしょうか。”勝負服”だったらありそうですが‥‥。
散髪屋(床屋)に行ったら、ご主人がまるでこちらの心を見透すかのように昔話をはじめました。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を観たとかで、「是非御覧なさい」「なつかしい風景がいっぱい出てきますよ」と言われました。そして、さらに、ご主人の話は、新幹線や第三京浜が開通したとき、小旗を持って歓迎式典に参加した子どもの頃の思い出話にまでエスカレートしていきました。
「新横浜で初めて新幹線を見たときはびっくりしましたね。飛行機が地上を走っているんじゃないかと思いましたからね」 それ以来、ご主人は鉄道マニアになったのだそうです。
散髪を終えたあと、駅前の”3分間写真”で写真を撮りました。撮影後、画像をチェックして気に入らなければ撮り直しもできるのですが、モニターに映し出された自分の顔に私は少なからずショックを受けました。
やけに老けているのです。普段、家の鏡で見る顔とはあきらかに違います。「おかしい!」 そう思って、すかさず「撮り直し」のボタンを押しました。ところが、次に出て来た画像も前回とほとんど変わりません。しかも、撮り直しは1回しかできません。それで、仕方なく「現像する」のボタンを押しました。
学生時代、”3分間写真”のアルバイトをしていたことがありました。毎日指定された場所に行って、印画紙や現像液などを交換する仕事で、実家が写真屋でしたので、写真の知識があるというふれこみで採用されたのですが、実際は家の仕事を手伝ったことなんてありません。
ある日、吉祥寺駅に設置してある機械のメンテをおこなった際、誤って現像液と定着液を混ぜたため化学反応を起こし、白煙が濛々と上がって消防や警察が出動する騒ぎになったことがありました。警察官から「君、過激派しゃないだろうね?」「身元引受人はいる?」などとしつこく訊かれ、始末書を書かされたことを覚えています。
ところで、この老け顔の写真、700円で8枚セットなのですが、免許証の更新に必要なのは1枚だけです。さて、残りはどうすべきか、古い日本人としては捨てるのはもったいないし、またひとつ悩みが増えました。