
山下達郎の「ずっと一緒さ」はいい歌ですね。聴くたびにしんみりとします。現在(いま)は断念の果てにあるというのは文字通りの実感ですが、そんな断念の果てに残った、かけがえのないものをいとおしく思う気持がじみじみと表現されているように思います。
先日の深夜、NHKテレビを見ていたら、小学校高学年の娘さんとお父さんの二人の暮らしを数年に渡って撮ったドキュメンタリーを放映していました。お母さんが病気で急死したため、突然二人暮らしになった父娘の日常を淡々ととらえた、とてもいい番組でした。番組のあと、タレントの関根勤さんが感想を述べていましたが、その中で「人間というのは、自分のためより誰か人のためという方が頑張れるんですよね」と言っていたのが印象的でした。
釈尊(釈迦)の元に子供を亡くして悲嘆にくれる母親がやって来て、「苦しくて苦しくてたまりません。どうかこの苦しみから逃れる方法を教えてください」と訴えたところ、釈尊は、「苦しみから逃れる方法を教えてもよいが、それにはひとつ条件がある。自分より幸せな人間を見つけて来なさい。そうしたら苦しみから逃れる方法を教えよう」と言ったのだそうです。それで、子供を亡くした母親は家々をまわって自分より幸せな人間を探したのだそうです。しかし、そんな人間はどこにもいなかったのだとか。人間というのは、誰しもが同じような悲しみを抱えて生きているのです。それが人生だと釈尊は言うのですね。だから、まずそんな人生と向き合うことが大事だと。
いくつもの悲しみを
くぐり抜けたそのあとで
つないだ手の温かさが
全てを知っている
本当の強さは
「ひとりじゃない」って言えること
こんな歌詞が心に浸みるのは、やはり私達もそれぞれ同じような悲しみを抱えて生きているからではないでしょうか。釈尊が言うように、だから人生なのでしょう。