

鎌倉の長谷に用事があったので、ついでに長谷寺と高徳院(鎌倉大仏)に行きました。長谷寺は紫陽花で有名ですが、残念ながら少し早かったようです。しかし、平日の午前中だったにもかかわらず、境内はカメラを手にした中高年のグループと遠足の小中学生達でいっぱいでした。また、テレビ局の名札を付けたテレビクルーの一団も撮影に来ていました。ADとおぼしき青年がカメラの前で「紫陽花がとってもきれいですね」なんてわざとらしく喋っているので思わず吹き出してしまいましたが、どうやらリハーサルをしていたみたいです。帰る際、子供達が「エエッ、ホントに?」「ホンモノよ」なんて嬌声を上げながら境内の奥に走っていましたので、多分タレントが到着して本番の撮影がはじまったのでしょう。ちなみに、紫陽花に関しては、昨年行った北鎌倉の明月院の方が見ごたえがあると思いました。

高徳院も初めてでしたが、正直「なぁんだ、こんなもん?」と思いました。国宝と比べるのもおこがましいのですが、かつて別府にも鉄筋コンクリート造り(!)の別府大仏(私達は「大仏様」と呼んでいました)というのがありました。別府の方が大きかったかもなんて罰当たりなことを考えていたら、つい手を合わせるのも忘れてしまいました。お寺に行くと殊更有難がる人がいますが、親鸞の研究でも有名な俳優の三国連太郎さんは、本来仏教にとってお寺なんてどうでもいいし、ましてや葬式なんて関係ないと言ってました。だから、娘さんが亡くなったときも葬式には出なかったのだそうです。たしかに、『歎異抄』の中でも、「親鸞は父母の孝養のためとて、一返にても念仏申したること、いまだ候はず。」(親鸞は父母の追善供養のために念仏をあげたことなど一度もない)と言ってますね。煩悩具足の凡夫たる私は、むしろ、大仏の近くにあった華正楼鎌倉店の風格のある建物の方が気になりました。
帰りは江ノ電で藤沢に出ました。途中「稲村ヶ崎」から「鎌倉高校前」にかけてはおなじみの海沿いの風景が車窓に広がり、一気に開放的な気分になります。反対側の台地は海岸に向けて坂になっているので、その坂を下ると、目の前に陽光きらめく相模湾の海原がひらけ、さらにその手前を江ノ電がカタコト左右に揺れながら通りすぎて行く光景を目にすることができるのでしょう。なんともうらやましい話ですね。そう言えば、江ノ島をすぎ藤沢に近づいてくると、沿線にはオシャレな門構えの家が並んだ住宅地が多くなり、途中の駅から乗って来るご婦人方もどこかしら上品な感じに見えました。ただ、一方で湘南は暴走族の一大産地でもあるので、昔の特権階級のように海辺の贅沢な風景と時間をひとり占めできるというわけでもなさそうですが‥‥。