フォーク・ソング~歌姫抒情歌

24日に発売された中森明菜の「フォーク・ソング~歌姫抒情歌」は、まさに“歌姫”と言われるにふさわしいアルバムだと思いました。収められているのはおなじみのフォークの名曲ですが、彼女特有のやや突き放すような淡白な歌い方によってオリジナルとは違った抒情的な世界が表現され、中森明菜は他人の曲をカバーするとピカイチだという世評を再認識させられました。

彼女の歌を聴いていると、脈絡もなく忘れていた昔の風景が思い出されました。新宿の路地、六本木の裏道、飯田橋の坂道、品川駅の跨線橋。何故かいづれも夕暮れの風景で、それらの風景の中に佇んでいるのは若い頃の自分です。そして、それらはまぎれもなく私の人生の風景なのだということに気付かされました。

それにしても、この全曲に漂う孤独感はなんなのでしょうか。人生はやっぱりひとりなんだよと言われているような気がします。「雨の物語」を聴いていたらたまらず涙があふれそうになりました。

身すぎ世すぎのためとは言え、最近、パチスロのCR機のキャラクターに使われている中森明菜はさみしいものがありますが、歌手としての中森明菜が一級品であることはたしかです。年を重ね人生の半ばをすぎると、いっそう中森明菜のすごさがわかるのではないでしょうか。

中森明菜はある意味でイタコのようなものかもしれないと思うときがあります。「山口百恵は菩薩である」と言ったのは平岡正明氏ですが、いい歌い手というのはその存在自体が宗教的なのかもしれないと思いました。

>>宇多田ヒカル賛
>>松田聖子という存在
2008.12.26 Fri l 芸能・スポーツ l top ▲