”国営マンガ喫茶”こと国立メディア芸術総合センター(仮称)構想に関連して、『週刊SPA』(扶桑社)の7月7日号に「日本のマンガ、実は世界でウケてない!」という秀逸な記事が出ていました。

麻生総理は、この構想について、国会で次のように答弁したそうです。

今日、日本文化発信の中心的存在であります、アニメ、マンガ、ゲームなどのジャパン・クールと呼ばれるメディア芸術の国際的な拠点を形成することが重要だと考えております。


たしかに記事にあるように、「製造業が徐々に国際競争力を失いつつある中で、次代の日本はコンテンツ産業を中心とした知的財産権立国を目指す。それが麻生総理に限らない多くの声」で、今やお題目のようになっています。ところが、現実は「マンガに描いた餅に終わりそうな節がある」というのです。

JETRO(日本貿易振興機構)が今年の3月に発表した「フランスを中心とする欧州におけるコンテンツ市場('08~'09年)の実態」によれば、ヨーロッパにおける日本映画の観客動員ランキングで1位の「ゲド戦記」ですらわずか33万人だったとか(日本国内では約600万人)。2位の「ドラえもん のび太の恐竜」が9万、3位の「となりのトトロ」が8万、4位のクレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」が7万、5位の「魔女の宅急便」が5万と散々たるあり様です。日本国内で1500万人を動員した「ハウルの動く城」に至っては、EC加盟国全体でたったの1万人だったとか。それを裏付けるように、おたく大国のフランスにおける日本アニメのDVDのシェアは、わずか2%にすぎないのだそうです。

これは、ヨーロッパに限らず、世界最大のコンテンツ市場を抱えるアメリカでも同様で、アメリカにおける日本アニメのDVDシェアはなんと1%台だそうですから、日本アニメは「所詮はニッチ産業」で、「クール・ジャパンは幻想」だと言うのは残念ながら事実のようです。ポケモンの時代は遠い昔の話なのです。

この国の優秀な官僚達がこの事実を知らないわけがありません。にもかかわらず、117億円もの大金を投じてわざわざ箱ものを作ろうとするのはなぜなのでしょうか(しかも、117億円は土地代と建物の建築費で、作品を収集する経費などは別だそうです)。一方で、この問題を報じたテレビニュースによれば、(根拠の出所は不明ですが)アニメ制作などに携わる人材を育成する予算はわずか1400万円しかなく、”国営マンガ喫茶”の建築費の千分の1だとか。むしろ、現状を考えるなら、再び世界に通用する日本のコンテンツ産業を強化・育成しなければならないわけで、それにはまず人材を支援・育成することに予算を投じるべきではないでしょうか。どう考えても、素人には首をかしげざるを得ない話です。

>>”国営マンガ喫茶”
2009.07.05 Sun l 社会・メディア l top ▲