前も書きましたが、先月は非常に忙しかったので、今月はゆっくりできるかなと思っていました。久しぶりに九州に帰ろうかなんて考えていたくらいです。

ところが、ありがたいことなのですが、「特別企画」で大変多くのご注文をいただき、今月も寝る間もないような忙しい毎日がつづいています。細切れの睡眠しかとれないので、当然身体もきついのですが、それより精神的にしんどくてなりません。終日、パソコンの前にすわって仕事をしていると、それこそ頭がおかしくなるんじゃないかと思うときがあります。特に深夜にひとりで起きていると、精神的に追い込まれていく感じで、朝になって新聞配達のバイクの音がするとホッとするのです。

仕事でも2度大きなミスをおかして、お客様にご迷惑をおかけすることになりました。それでよけい自己嫌悪に陥っています。

ところで、今日、作家の立松和平氏が亡くなったというニュースがありました。田舎にいた若い頃、立松氏の小説に田舎に蟄居する自分を重ねてよく読んでいました。ある日、テレビを見ていたら、田んぼか何かの中に立っている彼が沈痛な表情で謝罪している姿がありました。なんだろうと思ったら、それが『光の雨』の盗作事件でした。私はリゴリストではありませんが、でもそのときなぜか「裏切られた」と思いました。それ以来、立松和平氏の書いたものを手にすることはありませんでした。

全共闘世代を代表する文芸評論家で、立松和平氏のよき理解者であった黒古一夫氏が、その後筑波大学大学院の教授になっていて、ブログを書いているのを最近知りました。しかし、黒古氏のブログを読むにつけ、正直「こんなもんか」という感想しか持てませんでした。後発の世代から見ると、全共闘体験を特権化した時点で、既に今日の”退行”がはじまっていたような気がします。今の若い人達は、団塊の世代=全共闘世代なんて単なる食い逃げ世代で、いい気なもんだくらいにしか思っていませんが、もう彼らにはそんな若者達の呪詛の声を受け止めるデリカシーさえ残ってないのかもしれません。「優しい」「誠実」「実直」「素朴」というのが作家としてどれだけの価値があるのかわかりませんが、たしかに62歳というのは早すぎる気がします。
2010.02.09 Tue l 訃報・死 l top ▲