2010年7月1日横浜1

サッカーW杯の日本対パラグアイ戦は、まさに「日本中がため息につつまれた」結末になってしまいました。ただ、あの前評判を考えれば、岡田ジャパンの健闘を称えない人は誰もいないでしょう。しかも、PKを外して泣き崩れる駒野をチームメイトがつぎつぎと慰める感動的な場面まで用意してくれたのですから。

私は、あの場面を見ながら、「もし、これが会社だったら?」と思いました。会社だったら、これほど同僚達が温かい態度で接してくれるでしょうか。少なくとも上司からは「どうしてこうなったんだ?」と詰問され、始末書を出せと言われるかもしれません。へたすれば、他の部署に移動なんてこともあるかもしれません。そういう理不尽なことがまかり通るのが会社なのです。だからこそ、逆にスポーツのすがすがしさが際立ち、率直に感動するのでしょう。

msnの記事では、94年アメリカ大会の決勝戦でやはりPKを外したイタリアのロベルト・バッジョの「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」という言葉を紹介していましたが、会社じゃないんだから、駒野は決して下を向く必要はないと思います。

今日は、横浜駅で用事をすませたあと、いつものように新港埠頭から赤レンガ倉庫、そして大桟橋まで歩きました。 横浜駅では、東口の地下街(ポルタ)の降り口で、なにやら人だかりがしているのです。見ると、何人かの女性が「福島みずほ」という看板を掲げており、その真ん中で帽子をかぶった背の低い女性がビラを配っていました。社民党党首の福島瑞穂氏でした。まわりは見事なくらい中高年の女性ばかりで、皆さん、携帯電話をかざして写真を撮っていました。

2010年7月1日横浜4

大桟橋ではいわゆる”くじらのせなか”でしばらく行き交う船を眺めたあと、冷房のきいた客船ターミナルの待合室のベンチで、いしかわじゅんの『ファイアーキング・カフェ』(光文社)を読みました。まだ途中までしか読んでいませんが、これは、帯に曰く「居場所をなくした男たちが、生きる意味を探す女たちが、自分の居場所を求めて沖縄にやってくる」、そんな那覇の裏通りにある「ファイアー・キング」というカフェで交差するさまざまな人間模様を描いた連作小説です。

私の田舎の同級生で、犯罪をおかして全国に指名手配された人間が二人いますが、二人とも沖縄に逃亡していました。そう言えば最近では、ライブドア事件の際、グループの証券会社の副社長で、事件の真相を知るひとりであると言われた野口某氏が、不可解な自殺を遂げたのも沖縄でした。私は一度も行ったことはありませんが、沖縄にはそういった”磁力”のようなものがあるのでしょうか。

普天間問題での鳩山政権の対応に対して、「沖縄に対する差別だ」という声がありましたが、私は、それを言うなら、基地問題だけでなく、沖縄にセカンドハウスを借りたり優雅な移住生活を送ったりしながら、一方で「沖縄のこころ」なるものや「癒しの島」幻想(花村萬月著『沖縄を撃つ』)をマスコミに売っている文化人なども同罪だと思います。作者のいしかわじゅん氏も”セカンドハウス組”のひとりですが、この小説が「沖縄のこころ」や「癒しの島」とは別の視点をもちながら、それでもなお「情緒」に流れるのはゆえなきことではないのです。

ついでに言えば、連立離脱の際、「沖縄を裏切ることはできません」と言った福島党首の「情緒」的なコメントも然りで、それまでさんざん民主党政権への幻想を煽ってきたことを考えれば、カマトトだと言われても仕方ないのではないでしょうか。

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