布袋様

今回のダイエットはライティングダイエットです。ライティングダイエット(レコーディングダイエット)と言えば、『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)の岡田斗司夫さんが有名ですが、このダイエット法はなんだかいつも自分を責めている感じで、精神的にはかなり疲れます。

食べすぎたときなどひどく自己嫌悪に陥り、気持が落ち込んでしまいます。だから効果があるんだと言えばそうかもしれませんが、しかし、なんだか食べることが苦行みたいな感じです。食欲は人間の三大欲望のひとつだと言われていますが、その本能的な欲望を苦行の場にしていいのか、いや、本能的な欲望だからこそ苦行の場になるのではないか、そんなさまざまな思いにおそわれながら、毎日せっせせっせと食べた物をノートに記録しています。そして、自己嫌悪に陥るのです。

舗道で若者とすれ違うたびに、うらやましいなと思います。私から見れば「驚異の体形」です。でも、考えてみれば、私だって若い頃は同じように「驚異の体形」でした。彼らもやがて布袋様のようなポッコリお腹になるに違いありません。

そう考えれば、いつまでも若い頃と同じように、スッキリお腹を求めるのは欲深いような気がしないでもありません。布袋様のように笑顔で、心やすらかに自然の摂理に従えばいいではないか、そんな声も聞こえてきます。でも、ダイエットではそれは「悪魔の声」なのです。

先日、菊名の駅からマックのフライポテトの袋を手にした中年の男性が乗ってきました。子どもじゃあるまいし、いい年して電車の中で人目もはばからずフライポテトをパクパク食べている姿に、「ちょっとおかしいんじゃないか」と思いましたが、同時にその体形に目がとまりました。私より痩せているではありませんか。私なんて、マックのフライポテトはもうかれこれ半年以上、いや1年近く食べていません。なんだか不条理を感じて、心が折れそうになりました。

また、病院に行った際、ロビーにいた入院患者の老女から突然、「あなた、背が高くてスマートねぇ」と言われました。「そんなことありませんよ。ほら、お腹が出ているでしょ。だから、今、ダイエットしている最中なんですよ」と私は半分謙遜して言いました。すると、老女はこう言ったのです。

「あらっ、そうね。お腹が出てるわね」

「このくそババア」とは思いませんでしたが、そのあと言葉がつづきませんでした。

ダイエットはいろんな意味で、精神修養の場ですね。つくづくそう思います。

2010.07.13 Tue l 健康・ダイエット l top ▲