
今日、日本のインターネット業界に衝撃的なニュースが流れました。Yahoo! JAPANが決算発表の席で、Googleの検索技術を採用すると発表したからです。
このブログでも何度もとり上げていますが、本家のアメリカのYahooとマイクロソフトの提携により、Yahooは自社のYSTを廃止してマイクロソフトの検索エンジンBingを搭載することが決定しており、既にアメリカでは移行実験もはじまっていました。
当然日本のYahooもアメリカに追随すると見られていました。ネットでもそれを前提にして、もっぱら移行時期がいつになるのかということに関心が移っていました。私の知る限り、今回の決定を予想した人は誰もいません。それどころか、前にも書いたとおり、ネットでは事大主義的にBingに尻尾を振るような論調が目立っていたくらいです。しかし、どうひいき目に見ても、Bingの検索技術がGoogleやYST(Yahoo)に比べて劣っているのは事実です。Bingのシェアは日本では1~2%くらいですが、シェアは正直と言うべきなのです。その意味では、日本のYahooはひとつの見識を示したと言えるのではないでしょうか。少なくともYahooにとってもユーザーにとっても、Bingを搭載するよりははるかにメリットがあるのは間違いありません。
2004年までYahooはGoogleのエンジンを搭載していましたので、今回の決定は、2004年以前に戻るということでもありますが、ただ、少なくとも日本のYahooが、本国のYahooと異なる選択をしたということの意味は大きいと思います。私は、GoogleのDNAとも言うべき「(マイクロソフトのように)邪悪な存在にならない」という”思想”を日本のYahooも選択したのだと思いたいですね。それが今回のYahoo! JAPANの決定をひとつの見識を示したと評価するゆえんです。
先日の記事で、Bingに対してやや辛辣なことを書いた数日後、シールマニアはBingで100位以下に大きく後退しました。Bingは先日ベータ版から正式版に変わったばかりで、細かなトラブルがつづいていますので、これも単なる偶然(ハグ?)だろうと思いますが、以前、検索エンジンに関して新聞の取材を受けた際、何気にそういう話をしたところ、記者の方が律儀にも検索エンジンの担当者に「人為的なペナルティはあるのか?」と質問したらしいのです。すると、ネットに存在する膨大なサイトの中から個人的な書込みを特定してペナルティを課すなど現実的にとても無理な話で、そんなことはあり得ないという回答だったそうです。
たしかにその通りなのでしょう。そもそも自分がペナルティを受けたのではないかという発想自体、ネット特有の”夜郎自大病”の(裏返しとしての)被害妄想なのかもしれません。ただ、検索エンジンに依存せざるを得ない私達は、ついそういった見方をしてしまいがちですし、そこには検索エンジンに対する不信感もあるように思います。そして、その不信感はどこから来ているのかと言えば、「糞エンジン」とヤユされるような技術的な未熟さ(検索精度のレベルの低さ)から来ているのです。
ただ、今回の決定で、日本の検索エンジンはGoogleが95%以上のシェアを占めることになり、それはそれで問題がないわけではありません。おそらく今後そういった声も大きくなるでしょう。しかし、Yahoo! Japanにとっては、実質的にBingかGoogleかという選択肢しかなかったわけで、その中で検索の精度が検索エンジンの生命線であることを考えれば、今回の選択は当然だと思います。寡占問題を云々するなら、むしろGoogleに対抗し得るような検索エンジンが(第二のGoogleが)未だ登場してないネットの現状こそ問題にすべきではないでしょうか。
今回の決定に対しては、台頭するフェイスブックなどSNSに対抗するために、”強者連合”さえいとわない検索サイト側の事情とかいったような”非日本的”な解釈もありますが、いづれにしても、日本のYahooの英断には、ネットユーザーのひとりとして敬意を表したいと思いますね。そして、ホッとしたというのが正直な気持です。