
新山下のみなと赤十字病院にお見舞いに行ったついでに、本牧埠頭まで歩きました。新山下は電車だと不便で、交通手段としてはバスしかないのですが、私はみなとみらい線の終点「元町・中華街」で降りて、そこから歩いて行きました。
新山下は本牧の東の海側のエリアに位置しており、新山下の突堤がいわゆる本牧埠頭になります。典型的な埋め立て地で、昔、高速に乗るために車で通ったことがありますが、その頃は倉庫や工場ばかりの殺伐としたイメージしかありませんでした。しかし、今は、道路沿いに大型店ができたりおしゃれなマンションが並んでいたりと、ずいぶん通りのイメージも変わっていました。ただ、舗道を歩きながら、ふと山手の方を見上げると、やっぱり丘の上からは豪奢な邸宅が下界を見下ろしているのでした。
病院を出たのは午後5時近くでしたが、そのまま先に進んで埠頭をめざしました。車やバスだとすぐなのでしょうが、歩くとなると結構な時間がかかります。私がめざしたのは、海釣り施設やシンボルタワーがあるD突堤です。新山下をすぎ、イトーヨーカドー本牧店の裏から海側に曲がると、四方は倉庫ばかりになり、道路のあちこちにコンテナが置かれていたりして、すれちがう人もほとんどいなくなりました。ところが、ときどきお母さんらしき女性が幼児用の補助椅子を取りつけた自転車で通りすぎていくのです。なんで?と思ったら、倉庫街の中に突然「本牧ポートハイツ」という団地が出現したのでした。帰って調べると、「横浜港湾福利厚生会」なる港湾関連企業の福利厚生団体が組合員のために建てた団地らしく、昔は「港湾住宅」と呼ばれていたそうです。5階~7階建ての集合住宅が17棟あるそうですから、かなり大きな団地です。「診療所」の看板も出ていましたので、診療所も併設されているのでしょう。ちなみに、敷地内には本牧貨物駅と本牧埠頭駅を結ぶ神奈川臨海鉄道の貨物線も走っているそうです。
「本牧ポートハウス」をすぎてさらに突堤に向かって歩くと、やがて堤防沿いの道路に突き当りました。「堤防から海に入るのは禁止します」「発見したらただちに警察に通報します」という看板がやたら出ているのでそんなに危ないのかと思ったら、なんのことはない既に堤防の下は横浜市が運営する本牧海釣り施設の管理エリアで、施設に入るには500円の入場券(見学は100円)が必要なのです。要するに、タダで魚釣りをする不心得者に対する警告なのでした。考えてみれば、本牧埠頭あたりでは一般の人間が海岸に近づくことはほとんど不可能で、唯一海釣り施設で入場券を買って入るしかないのでした。
それで仕方なく私も100円を払って海釣り施設の中に入りました。しかし、魚釣りの施設なので、見学だけの人間なんてほとんどいません。魚釣りをしている人達の中をひとりウロウロしても居心地が悪いだけなので、すぐ出てきました。
それからさらに殺風景な海沿いの道路を歩いてシンボルタワーに行きました。平日の夕方だからなのか、駐車場にも数えるほどしか車はとまってなくて、シンボルタワーの上も人はまばらでした。展望ラウンジでは、どう見ても夫婦には見えない中年のカップルが一組寄り添って海を眺めているだけでした。
シンボルタワーというのは、他にもいくつかありますが、灯台の機能を備えたいわゆる港湾版ハコモノ行政の代表的な施設で、本牧もそのひとつです。駐車場の横には売店などが入った休憩所なるものもありましたが、休日はともかく平日はどうやって営業しているんだろうと納税者のひとりとして心配になりました。
シンボルタワーの営業は、通常は午後7時までですが、8月中は午後8時までとなっていました。夏の夜はカップルのたまり場になって大変だろうと思ったら、その対策のためか、1キロ手前の海釣り施設の駐車場のゲートをくぐらなければ、シンボルタワーまでの道路も通れないようになっているのです。つまり、関門を設けて、時間外はそこから先は一切行けないようになっているのでした。
展望ラウンジでW不倫の(と勝手に決めつけている)中年カップルと一緒に海を眺めていたら、突然、「午後6時半にシンボルタワー発の最終バスが出ます。乗り遅れないようにご注意ください」というアナウンスが流れました。営業時間いっぱいまでバスもあるだろうとタカをくくっていたので、あわてて階段を降りて駐車場の横にあるバス停に向かいました。既にショルダーバックを下げた年配の男性が二人待っていました。二人はバスに乗る際定期券をかざしていましたので、定年退職後の第二の人生でシンボルタワーの警備員かなにかの仕事をしている人達なでしょう。
次の海釣り施設では、釣り道具を抱えた男性が2人乗ってきました。やはり大半の人は車でやってくるみたいです。しかし、さらに次の倉庫街の中のバス停に到着すると、仕事をを終えた人達が行列を作っていて、バスもいっぺんで満員になりました。中にはイスラム系(?)の外国人労働者の姿もありました。それで、なんだか途中で降りるのも面倒くさくなり、終点の横浜駅まで乗ることにしました。30分ちょっとで横浜駅に着きましたが、バスを降りて万歩計を見たら2万歩を越していました。



