名古屋に対しては格別な思いがあります。

ポスターやポストカードを輸入する会社に勤めていた頃、私は名古屋を担当しており、月に一度月曜から金曜まで名古屋に出張していました。当時、名古屋だけで50軒近くの取引先がありました。

名古屋を担当する際、名古屋は独特なところなので苦労するぞ、とまわりから言われました。たしかに、”名古屋モンロー主義”などと言われるくらい、排他的な面がなきにしもあらずでした。また、「大阪で集金できたら一人前、名古屋でものを売ったら一人前」という言葉もあると聞きました。

初めて名古屋駅に降りたとき、まだ今のような立派な駅ビルではなく昔ながらの古い建物でしたので、私は少なからず落胆したのを覚えています。よく東京・大阪・名古屋などという言い方をしますが、私も名古屋は東京と比肩するような大都市だと思っていたからです。しかし、どちらかといえば、「大きな地方都市」といった感じで、実際に名駅や栄の地下街などを歩いていると、顔見知りの人にばったり会ったりするのでした。

気質の違いなど、最初は戸惑うことも多かったのですが、慣れてくると、名古屋の人達は東京とは比べものにならないくらい暖かいものがありました。信用されるまでにやや時間がかかりますが、一旦信用されると、彼らの人の好さ、懐の深さをすごく感じました。

やがて、親しい友達も沢山できたし、名古屋の女の子と恋にも落ちました。一時は本気で名古屋に引っ越そうかと思ったほどです。

当時、名古屋を揶揄するタモリのギャクが流行っていましたが、まさにタモリから揶揄されていたようなどこかあか抜けないところが、逆に名古屋の良さのように思います。名古屋と言えば尾張商人ですが、たしかに昔ながらの”分限者”も多いので、絵画のコレクターなども多くて、文化的に豊穣な土地柄でもあるのです。
2006.05.17 Wed l 東京 l top ▲