Google1.jpg


今、話題の本、梅田望夫氏の『ウェブ進化論‐本当の大変化はこれから始まる』は、産業革命に匹敵するといわれる革命的なトレンドであるインターネットの未来(可能性)をやや楽天的な視点で活写していますが、その中で、著者の梅田氏は、Googleというのはインターネットの聖地であるシリコンバレーに落ちた巨大な隕石である、と述べていました。

梅田氏によれば、これからの10年、Googleがその圧倒的な技術力でインターネットを牽引していくのは間違いなく、もはや「グーグルその他」といってもいいくらい絶大な存在になりつつあるのだそうです。

たしかに、アメリカでも、現在、40%強のシェアが70%くらいになるのは時間の問題だといわれていますし、イギリスでは既に75%を占めるに至っているのだとか。一方、日本ではやはりYahoo!が圧倒的に強くて、Googleは20~30%くらいだといわれていますが、そのため、日本は再びインターネットの世界で遅れを取るのではないか、と懸念する声さえあるみたいです。

しかし、だからといって、Googleが目指す「よりよき世界」が本当にバラ色の未来であるかといえば、一概にそう言えない側面もあるのではないでしょうか。たとえば、Googleが中国で検索サービスをはじめるに当たって当局の検閲を受け入れることに合意し、多くの人々から批判されたのは周知の事実です。また、Googleのインターネットに対する絶大な支配力により、逆に「総表現社会」ならぬ「総監視社会」を招来するのではないかと懸念する声もあります。

とりわけ、ウェブショップにとって、検索エンジンは神の如き存在です。以前も書きましたが、ウェブショップの場合、扱う商品名、いわゆるビックキーワードで20位以内に入らなければ検索サイトからの集客はあまり期待できないといわれているのです。というのも、通常、検索結果は1ページに10件表示されますが、ユーザーは大体2~3ページくらいまでしかチェックしないといわれているからです。実際に20位前後で集客=売上げが大きく違うのは事実です。このようにウェブショップの生殺与奪の権利は検索エンジンに握られている、といっても過言ではありません。

アドセンスの報酬システムが富の再分配=経済民主主義の萌芽を含んでいる、という梅田さんの指摘は慧眼だと思いますが、ただ、現実はそう単純ではないこともまた、たしかなのではないでしょうか。とはいえ、既に賽は投げられたのです。我々は、21世紀の初頭にその巨大な姿を現しはじめたインターネットの神の動向を、もはや息をつめて見守るしかないのかもしれません。


※この記事がきっかけで朝日新聞の連載企画「ウェブが変える  2・検索エンジン」(2006年7月28日)の取材を受け、その内容が紙面に掲載されました。
2006.04.25 Tue l ネット l top ▲