子どもの頃、正月の前に必ず散髪に行かされたものです。また、親と一緒に近所の衣料品店に新しい洋服や下着を買いに行きました。そうやって新しい年を迎えたのです。田舎でしたので、どこかに遊びに行くというわけでもなかったのですが、なんだか新しい服を着て晴れがましい気持になったことを覚えています。ちなみに、私の田舎(大分)では、年神様を迎える風習のなごりなのか、「年取り」と言って、大晦日に家族そろって1日早くおせち料理を食べるのが習わしでした。だから、都会に出ている人も大晦日の「年取り」に間に合うように帰省してくるのです。
「もう『年取り』はしたんかえ?」
「××(都会に行ってる子ども)が帰っち来たらはじめようと思っちょるんじゃ」
近所のおばさん同士で、よくそんな会話が交わされていました。
それで、私も今日は散髪に行き、その帰りに駅前のスーパーで新しい下着を買ってきました(もっとも、私は”予備がないと不安シンドローム”なので、既に下着の予備は沢山あるですが)。ついでに夕飯の買物をしようと思ったら、売場は既に正月用に模様替えになっていて、刺身などもえらく高いのです。それを見たら、”正月料金”だとかいってコーヒー1杯が1500円とかに暴騰する新宿や渋谷の喫茶店を思い出しました。
最初知らないで入った田舎者の私は、ぼったくりに合ったのかと思ってまわりを見まわしました。しかし、まわりの人達は何事もなかったかのように談笑しているのです。翌年からは”正月料金”のないマックやドトールなどに入るようになりましたが、そういった店は同じように痛い目にあって学習した地方出身者でえらく混んでいるのでした。ただ最近はチェーンのカフェなどが多くなったので、そういった”正月料金”の店も少なくなったのかもしれませんが(最近はデートにも無縁になったので正月事情に疎いのです)。
偏屈爺さんへ確実に近づいている私は、売場にいた店員に「ねぇ、もっと安い刺身はないの?」と尋ねました。すると、若い店員は「うーん、安い刺身ですかぁ~」と言って、憐れむような目で私を見るのでした。なんだか正月を前にしたら途端に「貧乏人はご用がありません」と言われているようでいやな感じでした。年末になると、「刑務所に行きたかった」なんていう理由で、駅などで庖丁をふりまわす「住所不定・無職」の人間がいますが、そんな人間の気持が少しわかったような気がしました。
ところで、床屋のご主人と話をしていたら、今は昔のように年末だからといって忙しくなるなんてことはないそうで、「うちなんてね、毎月18万円で家族4人が生活しているんですよ。生活保護をもらった方がよほどいいですよ」と言ってました。そう言えば、先日乗ったタクシーの運転手も収入は15万ちょっとくらいしかなく、「子どものアルバイトと同じですよ」と言ってました。高齢の入居者の下の世話までして、重労働で腰を痛めたりする人も多い介護ヘルパーも、月に数日の夜勤をやってやっと手取り20万円に届くかどうかだそうです。テレビでは相変わらずお笑い芸人がくだらぬ身内芸でキャーキャー騒いでいますが、世相は決して明るくないのです。
「もう『年取り』はしたんかえ?」
「××(都会に行ってる子ども)が帰っち来たらはじめようと思っちょるんじゃ」
近所のおばさん同士で、よくそんな会話が交わされていました。
それで、私も今日は散髪に行き、その帰りに駅前のスーパーで新しい下着を買ってきました(もっとも、私は”予備がないと不安シンドローム”なので、既に下着の予備は沢山あるですが)。ついでに夕飯の買物をしようと思ったら、売場は既に正月用に模様替えになっていて、刺身などもえらく高いのです。それを見たら、”正月料金”だとかいってコーヒー1杯が1500円とかに暴騰する新宿や渋谷の喫茶店を思い出しました。
最初知らないで入った田舎者の私は、ぼったくりに合ったのかと思ってまわりを見まわしました。しかし、まわりの人達は何事もなかったかのように談笑しているのです。翌年からは”正月料金”のないマックやドトールなどに入るようになりましたが、そういった店は同じように痛い目にあって学習した地方出身者でえらく混んでいるのでした。ただ最近はチェーンのカフェなどが多くなったので、そういった”正月料金”の店も少なくなったのかもしれませんが(最近はデートにも無縁になったので正月事情に疎いのです)。
偏屈爺さんへ確実に近づいている私は、売場にいた店員に「ねぇ、もっと安い刺身はないの?」と尋ねました。すると、若い店員は「うーん、安い刺身ですかぁ~」と言って、憐れむような目で私を見るのでした。なんだか正月を前にしたら途端に「貧乏人はご用がありません」と言われているようでいやな感じでした。年末になると、「刑務所に行きたかった」なんていう理由で、駅などで庖丁をふりまわす「住所不定・無職」の人間がいますが、そんな人間の気持が少しわかったような気がしました。
ところで、床屋のご主人と話をしていたら、今は昔のように年末だからといって忙しくなるなんてことはないそうで、「うちなんてね、毎月18万円で家族4人が生活しているんですよ。生活保護をもらった方がよほどいいですよ」と言ってました。そう言えば、先日乗ったタクシーの運転手も収入は15万ちょっとくらいしかなく、「子どものアルバイトと同じですよ」と言ってました。高齢の入居者の下の世話までして、重労働で腰を痛めたりする人も多い介護ヘルパーも、月に数日の夜勤をやってやっと手取り20万円に届くかどうかだそうです。テレビでは相変わらずお笑い芸人がくだらぬ身内芸でキャーキャー騒いでいますが、世相は決して明るくないのです。