今日、東電が福島第一原発1号機がメルトダウンしていることを認めた、というニュースがいっせいに流れましたが、「なにをいまさら」と思いました。そんなことは当初から京大原子炉実験所の小出裕章助教授らが指摘していたことです。しかし、東電は、燃料棒の損傷は一部だけだとして、メルトダウンを一貫して否定していました。これで1号機に関しては、工程表で謳っていた格納容器を水で覆ういわゆる「水棺化」が完全に行き詰ったのは間違いありません。

東電は溶けた燃料は圧力容器の底にたまっていると言ってますが、専門家の間では、損傷した圧力容器の底から既に圧力容器を覆う格納容器の底まで落ちているという見方もあるようです。溶けた燃料は微粒子化して格納容器の底の水に冷やされている状態で、とりあえず最悪のシナリオは回避されているのだとか。でも、最後の砦である格納容器の底がぬけるということはないのでしょうか。素人考えではそんな心配もあります。

それにしても、なにより問題なのは、東電の情報操作がここに至ってもまだつづいているということです。今頃になってこっそりメルトダウンを発表するなんて信じられません。3月の時点で発表したら、それこそパニックになっていたでしょうし、それを恐れたのかもしれませんが、しかし、その間、ずっと途方もない量の放射性物質がタダ漏れしているわけで、それを考えれば情報の隠蔽は犯罪的ですらあります。もちろん、肝心なことを一切報じないマスコミも同罪なのは言うまでもありません。

また、昨日は、神奈川県が「南足柄市産の『足柄茶』の生葉から、暫定基準値を上回る放射性セシウムが検出されたと発表し、今年産の出荷自粛と自主回収を呼び掛けた」というニュースもありましたが、前も書いたようにセシウムはスギ花粉の10分の1しかないとても小さい粒子なので、風に乗ればいくらでも飛散するのです。じゃあ、放射性物質に汚染されているのは、お茶だけなのか、あるいは飛散した放射性物質はセシウムだけなのか、そんな疑問もつぎつぎ湧いてきます。もちろん、そんなバカな話はないわけで、放射能汚染は想像以上に深刻化していると考えるべきしょう。しかし、いつも断片的な情報だけで、肝心な情報は一切出てこないのです。

政府が発表した損害賠償のスキームについても、経産相は「東電救済の枠組みではない」ことを強調していますが、どう考えても賠償と救済がセットになったスキームであることは明白ですね。今の10社体制(地域独占)を維持する限り、東電は救済しなければならない(東電を潰すことはできない)のです。最終的には税金の投入と電気料金の値上げ、つまり国民負担で賠償と救済が行われるのは火を見るよりあきらかです。

しかも、このスキームに対してさえ民主党内では「東電の負担が重すぎる」として異論が続出したのだとか。民主党には、東電労組出身の地方議員も多くいますし、内閣特別顧問の笹森清前連合会長は東電労組出身なので、そういった党内事情と無関係ではないのでしょう。ゾンビはまだ生きているのです。
2011.05.12 Thu l 震災・原発事故 l top ▲