福島に帰ったら

私は、福島には2回しか行ったことがありません。一回は、夏に野地温泉に泊りがけで行ったことがあります。帰りに猪苗代湖に立ち寄り、さらに三春町を通って太平洋側に出たことを覚えています。もう一回は、郡山に帰った彼女に会いに行って、帰りの新幹線の中で、別れる決心をしたという苦い思い出があります。私にとって福島はそれくらいの思い出しかありません。

しかし、たまたまFMラジオから流れてきた「予定 ~福島に帰ったら~ 」という歌を聴いていたら、なぜか涙があふれそうになりました。福島のことはあまり知らないのに、悲しくて仕方ありませんでした。

故郷の風景はどうしてこんなに悲しいんだろうと思います。そして、年をとればとるほど悲しくなっていくのです。

先日もたまたま人を介して知った高校の先輩の方と会う機会がありました。その方は私より30才年長の大先輩なのですが、病気のため、長い間入院生活を送っており、近いうちに老人施設に入る予定だと言ってました。

高校の校舎がどうだったとか、駅前にはなにがあったとか、海岸通りにどんな建物があったとか、二人でそんな話をしました。その方は、窓際のベットに横になったまま、なつかしい風景を思い出すかのようにときどき目をつむって、一心に喋っていました。最後に、「ありがとう」と言って手をあげたとき、目に光るものがありました。私は笑いを返しただけですが、帰りの電車の中でそのときの顔を思い出したら、やはりこみ上げてくるものがありました。

老いていくのは、さみしくてつらいもんだなとしみじみ思います。故郷の風景も悲しいものでしかありません。しかし、それでも私たちにとって、故郷の思い出は、どこかで心のよすがになりなぐさめになっているのです。そして、故郷の風景は、いつまでも鮮明に私たちのなかに残っているのです。

この歌を聴く福島の人達の気持を思うと、同じ地方出身者として、やはりいたたまれないものがあります。
2011.06.02 Thu l 芸能・スポーツ l top ▲