商売人の禁を犯して、再びなまくさい話を。

仙台出身の俳優・菅原文太氏は、「脱原発の日独伊三国同盟」を”提唱”したそうですが、しかし、脱原発に大きく舵を切ったドイツやイタリアに比べて、肝心な我が国では、相変わらず既得権者の抵抗が大きいようです。

そんな中で唯一の「希望」は、菅総理の退陣が8月末まで延びそうなことです。なぜなら菅総理が8月末までの70日間の会期延長にこだわったのは、再生可能エネルギー特別措置法案、いわゆる「再生可能エネルギー促進法」の成立に意欲をみせているためだと言われているからです。特に「全量固定価格買取制度」は、発送電分離の前提になるものであり、強いては現在の地域独占(10社体制)に風穴を空ける画期的な法案であると言えます。

もちろん既得権益を守ろうとする電力会社や原発関連企業の反発はすさまじく、彼らの意向を受けた自民党や公明党などの野党は、再生可能エネルギー促進法案の成立は、「認められない」と反発しているようです。

そんな野党の姿勢をみるにつけ、やはり先日の内閣不信任案提出の背景には、この法案の存在があったのではないかと勘繰りたくなります。彼らは、「浜岡」を停止するなどエネルギー政策の転換にエスカレートする菅内閣の姿勢に危機感を抱いたのではないでしょうか。前の記事でも書きましたが、菅内閣は心ならずも虎の尾を踏んだと言えるのかもしれません。このように菅退陣をめぐる政治的なかけひきは、いつの間にかエネルギー政策の転換をめぐる”路線闘争”の色彩さえ帯びてきたのです。

「全量固定価格買取制度」が実現すれば、とりわけベンチャービジネスの活性化に大きく寄与するのは間違いないでしょう。化石燃料や原子力に比べて、自然エネルギーの発電は充分ベンチャーが参入する余地があるからです。異業種の中小企業にとっても、大きなビジネスチャンスになるでしょう。先日のエネシフ(エネルギーシフト勉強会)の会合で孫正義氏は、そういった具体的なイメージを提示したのでした。

もちろん、一方で菅内閣は原発再稼働に動いており、菅総理がこの法案の成立を「退陣三条件」のひとつにあげた裏に、バルカン政治家・菅直人のしたたかな政治的計算があるというのは、そのとおりかもしれません。しかし、いづれにしても(たとえ瓢箪から駒であっても)、法案成立のチャンスがめぐってきたことは間違いないのです。私たちは、木を見て森を見ない上杉隆的政局論などにまどわされることなく、いわば清濁併せ飲む気持で、この画期的な法案の成立を見守る必要があるのではないでしょうか。
2011.06.21 Tue l 震災・原発事故 l top ▲