夕方、芥川賞の受賞作が掲載された『文藝春秋』を買おうと駅前の本屋に行ったら、ちょうど店員の女性が『文藝春秋』の山を両手に抱えて品出ししているところでした。見ると、カウンターの端にはまだ『文藝春秋』の山が二つもありました。

「すごいですね」と言うと、「すごいですよ」「もう値段も暗記してしまいました」と笑いながらレジを打っていましたが、まったく田中慎弥様々です。私もあの発言がなかったら、今回の受賞作は読まなかったかもしれません。

そのあと、トマトジュースを買おうとスーパーに行ったら、棚の中でトマトジュースだけが品薄になっていました。トマトに中性脂肪を下げる物質が見つかったと京都大学が発表した影響でしょう。男性客のカゴの中にやたらトマトジュースのペットボトルが入っていたのには思わず笑ってしまいましたが、私もそのひとりなのです。

若い頃、私はトマトジュースばかり飲んでいた時期がありました。当時はまだペットボトルがありませんでしたので、家では缶ジュースを箱ごと買っていました。上京してからもトマトジュース好きはつづいていて、毎朝、最寄り駅の自動販売機で缶ジュースを1本飲んで、それから改札口に入るのが日課になっていました。ただ、こうして中性脂肪が気になる年齢になり、そのためにトマトジュースを飲まなければと思うと、若い頃のようにおいしく飲めないのです。なんだか鼻をつまんで無理して飲んでいるような感じです。

人間というのは、ミーハーなくせに、それでいてめんどくさい生き物だなとしみじみ思います。
2012.02.12 Sun l 日常・その他 l top ▲