ソーシャルもうええねん


ITmediaのオルタナティブブログでおなじみ村上福之氏の『ソーシャルもうええねん』(Nanaブックス)を読みました。

mixiを最初に作ったプログラマーの衛藤バタラ氏は、あるセミナーでこう言ったそうです。

いろいろ考えるより、海外で話題のサービスをパクれ! 僕もFriendsterというサイトを徹底的にパクって、mixiを立ち上げた!


私も10年近くネットショップを運営している経験から、ネットはモノマネとハッタリと自作自演の巣だみたいなことを常々言ってきましたが、ここまではっきり言われるとむしろ清々しささえ覚えます。そして、新しいサービスがはじまると、なんでも「すごい!」「すごい!」と言っているネットの事情通たちのいかがわしさを、あらためて想起しないわけにはいきませんでした。

Titterのフォロワーも、Facebookの「いいね!」も、YouTubeの「再生数」も、Google Plus( +)の「Plus(+)」も、もちろん、ウェブのアクセス数も、すべてお金で買うことができるのだそうです。ちなみに、Titterのフォロワーは5000人分が3800円、Facebookの「いいね!」は5000人分が15000円、YouTubeの「再生数」は5000回再生が2300円だそうです。そして、そのお金で買った数字が、「ひと晩で50万回視聴された話題のインディーズバンド!」とかなんとか、広告のキャッチフレーズに化けるというわけです。「食べログ」のヤラセなんてまだかわいいものです。

SNSのユーザー数も、外からはわからないので、いくらサバをよんでもバレないのです。著者によれば、アルゼンチンでは国民の半数がFacebookのユーザーということになっているそうです。「実名主義」に至っては、もう言うまでもないでしょう。

また、「楽天で1位」という広告も、楽天には「中カテゴリー」が300種類あって、そのカテゴリー別にデイリーランキングがあるので、「300種類×365日=10万9500で、1年でデイリーランキングで『楽天で1位!』を取った商品は最大で約11万個ある」ことになるそうです。

こういったネットに、いいようにカモにされているのはどういう人たちなのか。本書では「どういう人をターゲットにするとモバゲーのような利益600億円の商売ができるか」「オッサンがカネを払い若者が無料で遊ぶソーシャルゲーム」などという見出しで、その一端が明らかにされていました。

モバゲーのなかの掲示板を参考にした「職業分布」によれば、「圧倒的に、トラックやバスの運転手や介護関係」が多く、「ネクタイ着用率が非常に少ない」そうです。また、女性は、「夜の職業が多い」のだとか。この傾向について、著者はこう書いていました。

 ネット業界の非常に面白いところは、サービスを開発している人たちとまったく正反対のカテゴリーのユーザーに向けて作った方が、売上が上がるという点です。


 ケータイコンテンツの世界は、クーラーのきいた涼しいオフィスビルのパソコン上で作られた仮想アイテムに、汗水流して働くトラックの運転手さんなどのブルーワーカーがお金を払う不思議な世界です。


これに、マスコミを「マスゴミ」などと罵倒しながら、一方でマスコミにいいように扇動され操られている掲示板や動画共有サイトの時事ネタの住人たちを重ねて考えると、ネットのカラクリがなんとなくみえてくるような気がします。

こういったネットのカラクリがわかっている人と「ネットこそ真実」なんて思っている人とでは、その差はあまりにも大きいと言えます。それが自己を対象化できるかできないかの違いにもなっているのでしょう。あるいは”リア充”とニートの違いにもなっているのかもしれません。

2時間もあれば読めるくらいの軽い本ですが、ネットリテラシーを身につける上では参考になる本だと思いました。

>> Twitter賛美論
2012.11.08 Thu l 本・文芸 l top ▲